漢方について相談できる病院検索 漢方について相談できる病院検索

いまづ先生の漢方講座 <ビジネスパーソン編> Vol.6 医療機関で漢方薬を処方してもらうメリットとは?

公開日:2023.02.28
カテゴリー:病気と漢方

新型コロナウイルス感染症の流行で、私たちの生活スタイルは大きく変わりました。そして、コロナ禍での生活も4年目に突入し、生活様式も心構えも完全自粛からウィズコロナへと変化しつつあります。Vol.4Vol.5では、このような環境の変化に対応しきれず、体調を崩す人が増えている実態についてご紹介しました。今回は、このようなコロナ禍で不調を訴える患者さんの共通点を解説します。生活スタイルが刻々と変わる中で、かかりつけ医を持ち、自分に合った漢方薬を処方してもらうことのメリットとは、どのようなことなのでしょうか。引き続き、芝大門いまづクリニックの今津嘉宏先生にお話を伺います。

「今まで比較的健康だった人」、「かかりつけ医がない人」が、いま困っている

今津先生のクリニックで、いま増えている患者さんたちには共通点があるそうです。それは「いつもなら風邪ぐらいどうってことないタイプの、わりと健康だった人」だといいます。

「コロナが流行る前までは、『具合が悪くなることはあまりない』『病院なんてめったに行かない』という感じだった人が、コロナ禍で体調を崩してお見えになるパターンが多いですね。ストレスによる心身の不調や、筋力の衰えによる痛みや倦怠感は、今まで経験したことのないものなのでしょう。『何か悪い病気なんじゃないか』と心配し、症状について必要以上にネットで調べたり、怪しげなサイトの情報を鵜呑みにしたりして、不確かな情報に振り回されたりすることも。今まで自分の健康に関心がなかった人ほど、一度調べ始めると沼にはまりやすい傾向がありますね」(今津先生)

その一方、具合が悪いと感じたらすぐ診てもらっている、月に一度は薬をもらいに受診している、病後で検診を受けているなど、「定期的に通院している人」は、コロナ禍でも大きく体調を崩す人が少ない印象だと今津先生は話します。

「そういう人は、主治医の先生が細かな変化を見てくれたり、不安な気持ちや疑問に思ったことも話してその場で解決できたりします。体調管理を一緒にしてもらっているという安心感もあるでしょう。ですから、コロナ禍で生活が変わった、環境が変わった、という人でも心がざわつかず、バタバタせずに過ごせているのだと思います」(今津先生)

自分の体を総合的に診てくれる「かかりつけ医」を持とう

感染が拡大している時は、医療機関に行くことを躊躇してしまう人も多かったと思いますが、やはり、いつでも自分の体のことを相談できる「かかりつけ医」を見つけておくことはとても大切だと今津先生はおっしゃいます。

「できれば、体を総合的に診てくれる、東洋医学に精通した医師がおすすめです。専門科の先生ももちろん良いのですが、そこで検査をして異常がなければ何も対処されない…となると、つらい症状を抱えたまま、いくつもの病院に行くことになってしまいますから。

東洋医学では、「心身一如」といって心と体はひとつに繋がっているので、その両方を同時に診るのを特長としています。そのため、患者さんが訴えるひとつの症状だけを診ることはしません。西洋医学では病気と診断されないような痛みや漠然とした不安感、なんとなく調子が悪い、という声にも、漢方医はきちんと対応する術を持っています。そんなかかりつけ医を持っておくと安心ですね」(今津先生)

市販薬もいいけれど、処方薬はさらにおすすめ

また、漢方の知識を持つかかりつけ医なら、体調や生活スタイルの変化なども含めて、「そのときの自分にいちばん合う薬を選んでくれる」というのもメリットだと今津先生は続けます。

「漢方薬は、薬効のある生薬を2つ以上組み合わせて作られているのが特徴です。それぞれの生薬が有効成分を含んでいるので、いろいろな生薬を配合した漢方薬は、ひとつの薬でもさまざまな作用を持ち、複数の症状に効果を発揮します。市販の一般用漢方薬でもそれは同じ。まずは試しにご自分の判断で買って飲んでみるものよいでしょう。

それでも、『どうも調子がよくならないな…』というときは、その薬が今のあなたに合っていない可能性があります。西洋医学では『高血圧にはこの薬』と、病名が決まれば薬の処方も決まりますが、漢方の場合は、同じ症状でも人によって使う薬が異なるオーダーメイド処方。その人の体質や、その時の状態に合ってはじめて効果を発揮するので、医師に選んでもらった処方薬のほうが、より高い効果が期待できると思います」(今津先生)

さらに、「漢方薬は安全で副作用がない」と思っている人も多いかもしれませんが、漢方薬にも、少なからず副作用はあります。そのような面からも、専門の知識を持った医師に処方してもらうのがおすすめだといいます。

「西洋薬の感覚で、症状ごとに漢方薬を何種類も同時に飲んでしまうと、成分が重なって危険な場合もあります。前述の通り、漢方薬はひとつの処方でもその中にはいくつもの生薬が入っているので、複数の漢方薬を同時に飲むときは、中身の重複に気をつけなくてはならないのです」(今津先生)

その人に最適な処方を見つけ、効果を高めるアドバイスもできる

そして、医療機関で自分の体質・状態に合った漢方薬を選んでもらうのと同じくらい大切なのが「養生」。つまり、生活習慣の見直しです。漢方薬を服用しながら、不調の原因となる行為や習慣を改めることで「薬の効きもよくなる」と今津先生は話します。

「たとえば、体を温める漢方薬を処方されたのに、薄着だったり、冷たいものばかりを飲んでいたりしたら、薬の効果は半減してしまいます。処方だけでなく、そのような生活指導やアドバイスが一緒にできるのも、かかりつけ医の大きな役目だと思います」(今津先生)

東洋医学では、「四診(ししん)」という診断方法と手順があります。望診(患者さんの様子や顔色、皮膚の状態や動作などを目で診る)、聞診(患者さんの声や咳、においなどで状態を診る)、問診(患者さんとの対話で症状を把握する)、切診(患者さんの体に直接触れて、脈を取り、お腹の状態を診る)。この四診によって、患者さんの症状や体質などを判断していきます。今津先生も、患者さんの診察室に入るまでの歩き方、姿勢、表情などから患者さんの体調を判断することが多く、声の調子やしゃべり方など、直接患者さんと向き合うことでわかる情報がたくさんあると言います。

「普段から診察していれば、少しの変化でもすぐに気づくことができますし、ご自身でもちょっとでもおかしいなと思うところがあれば、遠慮せずに医療者へ相談してほしいです。特にコロナ禍の不調は、西洋医学では対応しにくい、ストレスによる体調不良や、検査値に現れない倦怠感など、病名がつかないものが大半で、困っている方も多いはず。このような『未病』に対応できるのが漢方なので、ぜひ頼ってほしいと思います」(今津先生)

今津嘉宏(いまづ よしひろ)先生
芝大門いまづクリニック院長

藤田保健衛生大学医学部卒業後に慶應義塾大学医学部外科学教室に入局。国立霞ヶ浦病院外科、東京都済生会中央病院外科、慶應義塾大学医学部漢方医学センター等を経て現職。日本がん治療認定医機構認定医・暫定教育医、日本外科学会専門医、日本東洋医学会専門医・指導医、日本消化器内視鏡学会専門医・指導医。

記事の見出し、記事内容、およびリンク先の記事内容は株式会社QLifeとしての意見・見解を示すものではありません。
記事内容・画像・リンク先に含まれる情報は、記事公開/更新時点のものです。掲載されている記事や画像等の無断転載を禁じます。

外部サイトへ移動します

リンク先のウェブサイトは株式会社QLifeが運営するものではないこと、医療関係者専用であることをご了承ください。