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国民の健康と医療を担う漢方の将来ビジョン研究会2021 新型コロナウイルス感染症と漢方薬

公開日:2022.03.29
カテゴリー:漢方ニュース

一般社団法人日本東洋医学会、日本漢方生薬製剤協会が共催する「国民の健康と医療を担う漢方の将来ビジョン研究会(以下=ビジョン研)」2021が3月9日(水)に開催されました。ビジョン研は2016年に発足し、超高齢社会の日本において、漢方が国民の健康と医療に貢献し続けるために、漢方製剤の有効性や安全性、品質にかかわるエビデンスの集積、原料生薬の安定確保などの課題解決に向けた検討を進めています。これまで、がん領域や高齢者医療、漢方薬の品質確保や安定供給などのテーマで、研究会やフォーラムが開催されてきましたが、今回のテーマは「新型コロナウイルス感染症」です。
基調講演では、大阪大学大学院医学系研究科感染制御医学講座教授の忽那賢志(くつな さとし)先生より、新型コロナウイルス感染症の現状についての報告がありました。

第7波に向け漢方薬を含めた治療選択肢の拡充を

2022年3月現在、感染者数はピークを超えましたが、死亡者はまだ多い状態が続いています。第5波の際はワクチン接種が進んだこともあり、感染者の減少スピードも早かったのですが、現在の第6波、オミクロン株に対してはワクチン接種を行った人の感染も多く確認されており、感染者の早期減少はあまり期待できない状況となっています。しかしながら重症化している人の多くはワクチンを接種していない人であることも分かっているため、特に高齢者などリスクの高い人にはブースター接種を広げていくことが重要になると忽那先生は話しました。また、オミクロン株の特徴や、第7波への懸念についての解説もあり、漢方薬も含めて治療薬の選択肢が増えていくことが大事だと締められました。

また、4名の先生による新型コロナウイルス感染症と漢方薬をテーマにした講演も行われました。

重症例、予防への効果…研究で漢方薬の可能性が明確に

大阪市立総合医療センター消化器外科医長の青松直撥(あおまつ なおき)先生は、ICU応援医として、重症の新型コロナウイルス感染症患者を担当した際に漢方薬を使用した研究1)について紹介しました。青松先生が用いたのは、補剤のひとつである人参養栄湯(にんじんようえいとう)です。通常の治療と合わせて、鼻からチューブを使って人参養栄湯を投与注入したところ、気管切開の割合が低く、人工呼吸管理の期間が短くなり、退院までの期間も短縮したということでした。補剤の中でも人参養栄湯を用いたのは、体を温める作用や、咳を鎮める効果があることが理由です。今回は症例数が少なかったために、今後の症例集積が必要としたうえで、安価な漢方薬が新型コロナウイルス感染症の治療に役立てば、ICUの利用期間や入院期間も短くなり、入院費の抑制や多くの患者さんを救命できるなどのメリットが大きいのではと提案しました。

広島大学病院総合内科・総合診療科漢方診療センターセンター長の小川恵子(おがわ けいこ)先生は「漢方医学によるCOVID-19戦略」というテーマで、新型コロナウイルス感染症治療に携わる医療従事者へ補中益気湯(ほちゅうえっきとう)と葛根湯(かっこんとう)を投与した2つの後ろ向き研究を紹介しました。27例を対象に免疫機能改善と予防効果を検討した観察研究では、28日間の試験終了まで1例も新型コロナウイルスへの感染は認められず、また、複数の項目のリンパ球マーカーより、これらの漢方薬が免疫系を直接または間接的に調節することが示唆されました2)。一方、クラスターが発生した病院で実施した175例を対象とした疫学調査において、新型コロナウイルス感染症の発症や悪化を予防した可能性が示されたことを紹介しました。今後は感染者を対象とした前向きな研究を行って、補中益気湯と葛根湯の予防効果を明らかにしていきたいとのことです。

福岡大学医学部総合診療部教授の鍋島茂樹(なべしま しげき)先生は、麻黄湯の抗ウイルス作用について報告しました。麻黄湯は新型コロナウイルス暴露後の予防に効果的であること、複数の抗ウイルス分子をもつことから、ウイルスの変異にも対応できる可能性があるとしました。さらに、抗ウイルス薬として漢方薬を世界に広めるために、さまざまな研究でその効果を確かなものにしていくことが重要だと話しました。

北里大学東洋医学総合研究所所長の小田口浩(おだぐち ひろし)先生は、同大のCOVID-19対策漢方プロジェクトのひとつである、エフェドリンアルカロイド除去麻黄エキス(EFE)の治験状況を解説されました。こちらは「<治験情報>軽症COVID-19治療に向けた「エフェドリンアルカロイド除去麻黄エキス(EFE)」医師主導治験Phase2を開始−北里大ほか」にて詳しく紹介していますので、ぜひご覧ください。

剤型変更申請や新効能漢方製剤承認に向けた動きが本格的に

また、研究会では、2021年2月にまとめられた「国民の健康と医療を担う漢方の将来ビジョン研究会」提言書についての進捗報告があり、漢方薬などの多成分系医薬品の剤形変更(エキス剤→錠剤など)申請に関するガイドラインを厚生労働省が示したこと、新効能漢方製剤(リポジショニング)の承認申請ガイドライン作りが始まることなども報告されました。

ビジョン研では、これ以外にも、原料生薬の安定確保のために国内栽培の取り組みを推進したり、さまざまな漢方薬に対する課題を解決しています。
漢方薬の課題を解決することは私たちの健康にも役立つことです。今後もこの活動を見守っていきたいと思います。(大場真代)

国民の健康と医療を担う漢方の将来ビジョン研究会
https://www.nikkankyo.org/action/action4.htm

参考
  1. Aomatsu N, et al. Neuropeptides 2021; 90: 102201
  2. Ogawa-Ochiai K, et al. Front Pharmacol 2021; 12: 766402

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