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漢方医は患者をこう診ている(2)問診

公開日:2017.08.21
カテゴリー:漢方ニュース

 漢方での診察方法「四診」の1つである、「問診」(現病歴や既往歴のほかに、患者の体質傾向を聞き出す)について、第一線の漢方医が何を聞いて、何を診ているのかをご紹介します。

暑がり・寒がりには3つのタイプがある

 問診のポイントは5つあります。

 第1のポイントは「寒熱」です。暑がり・寒がりか、冷えるならばどの部位か、温めると症状が改善するかを尋ねます。寒熱には大きくわけて3つのタイプがあります。1つ目が全身が冷える内臓型の冷え、冷房が苦手で冷たいものを飲むと下痢をするなどの症状があります。内臓型の冷えには、乾姜(かんきょう)を含む人参湯(にんじんとう) や、附子(ぶし)を含む方剤で温めていきます。2つ目は手足の末梢が冷えるタイプ。これは循環障害、つまりお血で冷えている場合と、触っても冷えていないものの、交感神経の過緊張で手汗や足汗をかいている場合があります。前者は若い女性、後者はストレスを抱えた男性に多い傾向があります。方剤では前者が当帰(とうき)、川きゅう(せんきゅう)を含む当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん) あるいは当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう) など、後者では四逆散(しぎゃくさん) を使います。3つ目が下半身型の冷えです。下半身の冷えも2つ分かれており、冷えのぼせという上熱下寒の場合と、高齢の男性に多い腎虚という加齢に伴う冷えがあります。

 第2のポイントは身体にとっての「IN」「OUT」を尋ねることです。「IN」は食欲、喉や口の渇きを指します。一方、「OUT」は排便、排尿、発汗、月経を指します。便通に関しては、毎日なければ、異常と捉えた方がよいでしょうし、逆に下痢しやすいのも重要な情報です。排尿は、中高年男性では昼間4~5回、夜1~2回ならば問題ないと考えますが、年齢・性別によって異なります。若い女性が夜中に2~3回トイレに行く場合は、水はけが悪くて冷えがあることを疑います。月経は、周期が順調か、痛みの度合や月経前のイライラ感、月経前のむくみの有無なども聴き取ります。漢方薬の治療では、食欲、睡眠、便通などが快適になることを重視します。例えば患者さんが耳鳴りで困っていると訴えた場合、食欲、睡眠、便通などを改善させると、患者さんが徐々に耳鳴りを訴えなくなることがあります。

寝ても取れない疲れは「気滞」の可能性が

 第3のポイントは愁訴から気血水の異常をさぐることです。疲れを訴えた患者さんの場合、機能低下、気虚と診断し、補中益気湯を出すケースが多いですが、疲れの中には気滞、要するに機能不全で起こる疲れもあります。気虚の疲れは、休むとよくなりますが、気滞の疲れは寝ても取れない疲れです。それによって、方剤も使い分けていきます。

 第4のポイントは、天候、気温、職場、家庭などによって、症状が良くなる条件・悪くなる条件を聴き取ることです。例えば、降雨前の痛みなどには五苓散(ごれいさん) が有効ということが知られています。日内変動も重要で、例えば朝に症状が悪化するならば冷え、夜に痛みが起きるならば、お血が増悪して痛みが起こることを疑うなどです。女性の場合は生理周期も大きな要素になりえます。月経前あるいは月経後の症状悪化はお血を考えます。

 第5のポイントは食物の嗜好を聴き取ることです。やはり甘いもの、とくに白砂糖と果物、生野菜のような陰性食品を多く摂取している人は体を冷やしています。夜になるとこむら返りが起こる中高年女性は少なくありません。冷えて水はけが悪いために症状が起こるのですが、そのような人に問診すると、朝にバナナやヨーグルト、昼にケーキを食べていると答える方がいました。こうした食生活を止め、利水剤を処方すると、こむら返りの症状が消失しました。食事指導は根治療法につながるもので、漢方薬は一次的なつらさをとる杖のようなものと考えましょう。

(2017年6月開催 第68回日本東洋医学会学術総会「漢方入門講座 知っておきたい 望診・聞診・問診のポイント(桜十字福岡病院 木村豪雄先生)」をもとにQLife漢方編集部が執筆)

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