<漢方にまつわる気になる本を紹介>『漢方で感染症からカラダを守る!』ブックマン社[著]渡辺賢治

[漢方ニュース] 2022/03/23

2019年12月に中国・武漢市で新型コロナウイルスが確認されてから、2年が経過しました。令和4年3月11日現在、日本国内では約560万人が感染し、約2万5,000人が命を落としています。
全人口の約8割がワクチンの2回接種を完了し、65歳以上の6割以上が3回接種を完了しているものの、新規感染者数が5万人を超える日々は続いており、まだまだ収束の気配が見えない状況です。
流行が始まった以前の社会にはいつ戻ることができるのでしょうか。現段階では予測できませんが、2021年8月に発売された『漢方で感染症からカラダを守る!』(修琴堂大塚医院院長 渡辺賢治著)では、新型コロナウイルスをはじめとする感染症治療における漢方の役割を解説しています。
渡辺先生は本著で「コロナ禍では『正しく恐れる』ことの必要性が繰り返し言われるが、『正しく恐れる』とはじっと家にこもっていることではなく、積極的に免疫を上げる生活習慣を身につけることである」と、漢方の柱のひとつである「養生(ようじょう)」の必要性を訴えています。

新型コロナで重症化させないための漢方治療

中国では、今回の新型コロナウイルス感染症に対応して、「清肺排毒湯(せいはいはいどくとう)」が新たに開発されました。
感染第1波の2020年4月中旬から新型コロナ感染者を治療している渡辺先生ですが、本著では「清肺排毒湯」を処方して奏功したケースと、劇的な効果は見られなかったケースなどを紹介しています。また、高齢でがんを抱えるハイリスク患者さんでありながら症状が極めて軽く済んだケースや、自宅待機から症状の悪化で入院となったものの、解熱剤を使用せずに治癒に至ったケースなども取り上げています。
治療にあたって、「とにかく重症化させないことを第一の目標に置いた」という渡辺先生。感染爆発した中国・武漢市で実際に診療に携わった医師たちが「予防に優る治療はない」と繰り返し口にしていたことが印象に残っているとのことです。

感染症に罹りにくい体を作る7つのポイント

通常、漢方というと「漢方薬」をイメージする人が多いかと思います。しかし、これはあくまで手段のひとつで、漢方医学には「薬」「鍼灸(しんきゅう)」「養生」という3つの柱があります。なかでも重視されているのが「養生」、すなわち「健康のために食生活や生活習慣を整えること」です。
本著によると、養生のポイントの第一は、「未病のうちに対処する」こと。そして、感染症に罹りにくい体を作るための具体的な行動指針として、先生が2020年に書かれた『病院にも薬にも頼らないカラダをつくる「未病」図鑑』(ディスカヴァー・トゥエンティワン刊)より、以下の7つのポイントを挙げています。

  • ① 自分の「体の声」を聞く
  • ② 質のよい睡眠をとる
  • ③ 食事に気を配る
  • ④ 積極的に体を動かす
  • ⑤ 入浴で体を温める
  • ⑥ 呼吸と姿勢を意識する
  • ⑦ 姿勢を整える

このうち「積極的に体を動かす」について、渡辺先生は本著で「自宅から外出する機会を失い、引きこもりがちの日々が長期化するのは非常にまずい。(中略)積極的に歩いて筋力をつけてほしい」と注意喚起。そのうえで、インナーマッスルを鍛える意味で、足の付け根を意識して歩く「大腰筋(だいようきん)ウォーキング」を勧めています。

「補中益気湯」「十全大補湯」がウイルス増殖を抑制

本著では、漢方薬による予防の研究も紹介しています。インフルエンザでの研究ですが、「補中益気湯(ほちゅうえっきとう) 」を予防投与としてマウスに与え、インフルエンザに感染させた後の経過を調べたところ、「補中益気湯」を飲まない群ではウイルスの量が増え続けるのに対し、飲んだ群では感染制御が起きてウイルス量が下がっていました1)。同薬を飲んでいると、早い段階で一気にインターフェロンが出るため、ウイルスが増殖して勢力を増す前に撃退できるのだといいます。「十全大補湯(じゅうぜんたいほとう) 」を用いた実験でも同じような傾向が見られた2)とのことです。
その機序について、渡辺先生は「あらかじめ『補中益気湯』や『十全大補湯』を飲んでおくと、細胞内にインターフェロンの前段階であるIRF7という物質を作っておける。それゆえに、ウイルスに感染するとすぐにインターフェロンを作り出すことができる。つまり感染に対する準備状態を作り出すのだ」と本著で述べています。

多岐にわたる後遺症にも漢方治療でアプローチ

新型コロナウイルス感染症の新規感染者数を抑えるのが喫緊の課題といえますが、一方で、後遺症も徐々に問題になってきています。
本著によると、新型コロナ感染症の主な病変部位は肺のため、呼吸器に関する後遺症である咳、痰、呼吸困難、運動時の疲労などは十分に予想できます。しかし、重症でない患者さんでも「ブレインフォグ(脳の霧)」と呼ばれる集中力の低下や認知機能障害などの脳の症状が残ったり、味覚障害、嗅覚障害、脱毛といった症状が長く現れたりしています。
「不気味なのは、後遺症が残るかどうかは感染の重症度とは関係がないことだ」と渡辺先生。
後遺症は多岐にわたっているが、「呼吸困難、疲労、咳、痰、嗅覚障害、味覚障害などの主な後遺症に関しては、日ごろから漢方外来でよく診療する訴えでもある。それが新型コロナ感染症の後遺症であろうとなかろうと、漢方治療は患者さんの体質や症状に対してアプローチするものだから成立する」と述べています。

新型コロナ感染症との戦いはまだまだ続きそうです。感染症にかかりにくい体を作るためにも、ぜひ本著を役立ててください。

漢方で感染症からカラダを守る!
著者:渡辺賢治
出版社:ブックマン社
https://bookman.co.jp/book/b589188.html

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