<子どもの成長と漢方薬 編集後記>子どもの訴えを受け止めるだけで症状が落ち着くことも

[病気と漢方] 2022/03/29

注目される「大人の発達障害」

ここ数年で「大人の発達障害」という言葉が知られるようになってきました。
発達障害とは、生まれつきの脳の働き方の特性によって特徴的な行動や情緒の動きが見られることで、多くの場合は幼少期に診断されます。しかし、社会に出てから人間関係がうまくいかなかったり、仕事でミスをして退職や休職せざるを得なくなったりと、大人になってから生きづらさを感じ、そこで初めて「発達障害」だと診断されるケースが少なくないことから注目されています。

子どもの成長と漢方薬(1)(2)」では、発達障害のお子さんを多く診察されているたんぽぽこどもクリニックの石川功治先生に、漢方薬が発達障害にどのように役立つのか教えていただきました。

石川先生は記事の中で「コミュニケーション障害は、年齢が上がるほど日常生活に支障をきたす」とおっしゃっています。以前、私が取材をした、大人になってから発達障害が分かった人の場合、子どものときはなんとかうまくやってこられていたのに、社会人になってから自分のがんばりに反して、ミスが多く怒られてばかりいるといったケース、悪気はないのに相手に失礼なことを言ってしまい、人間関係でトラブルを抱えているといった話が多く聞かれました。また、睡眠障害やうつなどといった別の精神疾患で悩んでいた人が、なかなかよくならないので病院を回るうちに発達障害だと気がついたというケースもあります。就職しても勤務を続けられなかったり、人間関係のトラブルから引きこもってしまったりと、結果として人生の大きな悩みを抱えることになってしまっています。

寄り添いつつ、将来困らないための準備を

石川先生への取材の中で印象的だったのは「子どもたちの訴えを否定せず、受け止めるだけでも症状が落ち着く場合がある」という言葉です。

漢方医学では「母子同服」という言葉があります。「抑肝散」という、子どもの夜泣きや疳(かん)の虫(情緒不安定)を改善するための漢方薬でよく使われる服薬方法ですが、母親と子どもが同じ薬を同時に服薬し、「母子で治療をしていく」というものです。
しかし石川先生は「母子同服できる親子は少ない」と話しておられました。
「母子同服の前提は、性質やキャラクターが一緒であるということ。私が診ている限りでは逆のほうが多いと感じます。付き添いの親御さんに漢方薬を処方することもありますが、それぞれの症状によって使い分けています」といいます。「母子同服」といっても必ずしも同じ漢方薬である必要はなく、それぞれに合った漢方薬でそれぞれが治療に臨むという姿勢が大切だと感じました。

子どもは親の思うようには動いてくれません。イライラが募ると、つい叱ってしまいがちです。しかし、「朝なかなかベッドから起きられない」「身だしなみを整えるのに時間がかかる」など、一見「だらしない」と思われる行動の中にも発達障害ゆえの行動が隠されていることもあります。
石川先生は、子育て中の方たちへこんなメッセージを寄せてくださいました。
「親御さんは、お子さんの特性を認め、受け止めることが何よりも大切。親がお子さんに寄り添う気持ちを持つことで、お子さんの気持ちは安定します。すると環境に適応できるようになり、ストレスによって出ていた症状が落ち着きます」
ただし、特性だからといって治療を受けさせないのではなく、「将来お子さんが社会人になったときに困らないための準備」のためにも、必要な治療は検討してほしいと思います。

発達障害に限った話ではありません。ストレスフルな現代社会、子どもたちはさまざまな刺激を受けた結果、心が疲れ、それが体の不調となって現れることがあります。漢方薬は「心身一如」といって、心と体の両面から治療を行うことのできる薬です。子どもの健やかな成長のためにも、うまく漢方薬を使っていきたいですね。(大場真代)

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