<嗅覚障害と漢方薬 編集後記>嗅覚障害は心理的な影響も

[病気と漢方] 2022/04/08

新型コロナ後遺症に悩む25.6%の人に嗅覚障害が

味覚は、甘味、酸味、塩味、苦味、旨味の5つの味を感じることで成り立っています。
味覚を感じるのは舌で、舌の表面にある味蕾が神経につながっていることで、味を感じることができます。甘味は舌先、塩味は舌の手前側、酸味はその少し奥、苦味はさらに奥のほうと、味を感じる部位は異なります。
食べ物をおいしいと感じられることはとても幸せなことです。
コロナ禍の自粛生活の中、旅行気分を味わおうと全国各地からさまざまなグルメを取り寄せて楽しんでいる人もいるのではないかと思います。
食べることはストレス発散にもなりますよね。

しかしながら、新型コロナウイルス感染症の後遺症(以下、新型コロナ後遺症)によって、味覚障害や嗅覚障害に悩む人が増えています。
埼玉県と県の医師会が、新型コロナウイルスに感染した422人の後遺症について分析したところ1)、症状でもっとも多かったのが嗅覚障害で108例(25.6%)に達したといいます。
新型コロナと嗅覚障害」では、新型コロナ後遺症による嗅覚障害について、金沢医科大学の三輪高喜先生に解説いただきました。

「何もにおいのないところで焦げたようなにおいがする」「普段おいしいと感じていたスイーツがリンスのような味がする」「味噌汁がどろどろの靴下の汁のような味がする」といった、鼻や舌の感覚に変化が起きている状態が、長い人だと1年以上続くといいます。

嗅覚障害で孤独感が強まる

三輪先生が取材の中で「嗅覚障害が長く続くと、食事が楽しめなくなるだけでなく、孤独感も強くなることが分かっています2)。嗅覚障害による心理的な影響は大きいものです」とおっしゃっていたのが強く印象に残っています。

新型コロナウイルス感染症の後遺症は、嗅覚障害のほか倦怠感や気分の落ち込みなど、いくつもの症状を抱える場合が少なくありませんが、嗅覚障害が治らないことによる気分の落ち込みもあるといいます。

そのほかにも「料理を作るのに、味付けができなくなった」「腐っているかどうかが分からなくなった」「以前より食べる量が減った」「怒りっぽくなった」など、嗅覚障害が患者さんにもたらす影響はさまざまです。

記事の中では、先生が携わられた、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん) の治療効果についての研究も紹介しています。
それまでにも、当帰芍薬散に含まれる当帰(とうき)と蒼朮(そうじゅつ)が、神経成長因子に対する増強作用を持つことは報告されていました3)。漢方薬の中には、当帰と蒼朮が入ったものが当帰芍薬散以外にも女神散(にょしんさん) 加味逍遥散(かみしょうようさん) などいくつかあります。今後研究が進めば、さらに嗅覚障害に対する漢方薬の選択肢も増え、それぞれの患者さんに合った治療法が見つかっていく可能性があります。

ただし、残念ながら現段階では短期間で嗅覚障害を改善する方法は見つかっておらず、根気強い治療が必要です。治療中の食事は、先生もおっしゃっていたように、見た目や温度に変化をつける、またにおいを薄くして味を濃くするなどの工夫でおいしく食べられることもあります。新型コロナ後遺症による嗅覚障害の治療ができる医療機関は増えています。まずは専門家に相談し、適切な治療を受けることから始めてみてほしいと思います。(大場真代)

参考

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