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西新宿コンシェリアクリニック 金子宏明院長

公開日:2013.12.04
カテゴリー:外来訪問

~漢方薬の新時代診療風景~
 漢方薬は、一般に知られる処方薬(西洋医学)では対処が難しい症状や疾患に対して、西洋医学を補完する使われ方も多く、今後の医療でもますます重要な役割を果たすと考えられます。
 近年、漢方薬の特性については科学的な解明が進んだこともあって、エビデンス重視の治療方針を取る医師の間でも漢方薬が使用されることが増えています。
 漢方薬を正しく理解して正しく使うことで、治療に、患者さんに役立てたい。日々勉強を重ねる、身近な病院の身近なドクターに、漢方活用の様子を直接伺いました。ドクターの人となりも見えてきます。

「人間全体を診る科」として精神科を選ぶ

 私が入学したのは当時まだ新設の単科の医科大学で、いろいろと新しいカリキュラムを導入し始めているところでした。総合大学の医学部では最初の2年は基礎的な教養課程で、3年目以降に医学の専門課程になりますが、その大学は1年のときから医学も含めたカリキュラムで、消化器系、呼吸器系、循環器系など器官別に分かれた講義でした。そこで学びながら、器官別の考え方にちょっと違和感を持ったのです。病気になるのは人間で、体のすべての器官はつながっているし、体と心もつながっている。それなのに、自分の専門の臓器だけしか診ないと話す先生もいて、それでいいのだろうかと疑問に思いました。
 若かったのでいろいろと悩みましたが、精神医に興味を持ち始めたのは、精神科は「人間全体を診る」というイメージがあり、それが精神科を選んだひとつの理由でした。また、当時、ヴィクトール・E・フランクルというオーストリアの精神科医が書いた「夜と霧」という、第二次世界大戦中のアウシュビッツの強制収容所での体験を記録した書物を読み、深い感銘を受けました。彼は、「実存分析」という精神療法を考え出した人。日本では「ロゴセラピー」とも言われ、「人間はどう生きるか、生きることにどういう意味があるのか」と考えることで心を癒す方法なのですが、現在のターミナルケア、緩和ケアの領域で行われているようなアプローチを当時、すでに考えていたのがすごいな、と。そのころの私はまだ若くて経験もなかったので、もっと精神科医としての経験や人生経験を積んだら、いつかそういう治療法も実践してみたいと思いました。
 大学卒業後は、いくつかの民間の精神科病院で臨床医としての経験を積み、2008年、来院されることで患者さんの心が癒されるような「こころとからだのかかりつけ医」を目指して、西新宿コンシェリアクリニックを開設しました。

自然に東洋医学の考えにつながる

 漢方に最初に興味を持ったのは、大学卒業後の勤務医時代でした。大学時代は、主に老年精神医学を研究するグループにいたのですが、勤務医した病院では統合失調症が7割ぐらいを占めていたので、主にそういう患者さんの治療とケアに携わってきました。当時、精神科医療は大きく変わりつつあり、新しい薬が次々と出ていました。しかし薬を使うと、副作用が出る。副作用を止めるための薬を使うと、またその薬の副作用が出る、という状況の中で、とくに口が渇くという副作用が多くあり、患者さんにとってはつらいものでした。それを何とかしたいと、風邪薬で気道の分泌をよくする作用のある薬を使ったりもしていたのですが、なかなか効果が出ない。そんなとき、漢方で口の渇きを癒すものがあるという論文を読み、使ってみたのが始まりでした。それから少しずつ漢方に関する講演会や研究会に参加し、勉強してきました。
 もともと精神科は、心と体をひとつのものとして診ていく考え方なので、東洋医学の考え方と通じる部分があります。私のなかでは、精神科の治療を進めていったら、自然と東洋医学、漢方薬につながっていったという感じですね。
 今は精神科の薬もずいぶん変わり、口が渇くなどの副作用は少なくなったので、当時のような使い方をすることはありませんが、クリニックでは積極的に漢方を取り入れた治療をおこなっています。現在では、主に軽度のうつ病の患者さんで、抗うつ薬に抵抗をお持ちの患者さんに漢方を処方することが多いですね。また、認知症そのものを治療できる漢方薬はありませんが、認知症によるさまざまな周辺症状に効果があるとされる漢方を処方したり、高齢で元気が出ない、食欲がないという患者さんに気力を上げる漢方を処方することもあります。

時間をかけてじっくり治療に取り組む気持ちも必要

 患者さんにとって、まだ精神科という場所は敷居も高く緊張するところだと思うので、診察のときにはとにかくリラックスしてもらえる雰囲気を作りたい。最初は何でもいいので好きなことから話してもらって、1回目の診察は世間話だけで終わることもあります。聞き役に徹しながら、時々はこちらからも質問する。質問されることで、「ちゃんとわかってもらえている」と安心してくださる患者さんもいると感じるからです。
 また、体が原因で心に影響が出ることもあるので、身体的な病気との鑑別も必ずおこないます。意外に気づかれないのが甲状腺の病気で、不安やパニックなどの精神的な症状は、甲状腺ホルモンの異常で起こることもあるのです。現にこれまでも、そういう症状で来院された患者さんで、甲状腺機能亢進症という病気が見つかったこともあります。体の病気なのに、それを見つけられずに「パニック障害でしょう」と薬を出してもよくなりません。まずは体のチェックをして、体の病気がないことを確認した上で心の治療を考えます。
 漢方のいちばんのメリットは、治療の選択肢が増やせること。例えば、抗うつ薬の副作用のために治療が続けられない人や、どうしても抗うつ薬は飲みたくないという人に、漢方でも治療が可能です、と選択肢を提示できます。また、副作用も西洋薬と比較すれば少ない傾向にありますし、できるだけ患者さんの自然治癒力を損なわないよう、そっと手助けができるといいと考えています。
 一方で、漢方だから絶対安全とは言えないので、誤解がないようきちんと説明し、薬の効き方と副作用についての経過をしっかりみていくことは必要です。また、病気が重くなると、なかなか漢方だけではよくならないこともあります。患者さんは早くよくなりたいという気持ちが強いですし、病院に行けばすぐよくなると思っている方も多い。これは漢方に限りませんが、精神科の治療では薬が効くまでに数週間かかることがふつうですし、一度よくなっても、また少し戻るということもあります。そういうことも理解していただき、じっくり時間をかけてよくしていこうという気持ちを患者さんと共有できるといいと思っています。

医師が元気でいなければ患者さんに安心してもらえない

 患者さんに安心して治療を受けていただくためには、医師が元気でいることが必要です。私がストレスを抱えていたり、リラックスできていなかったら、患者さんに何をお伝えしても説得力がありませんよね。ですから、自分のリラックスタイムも大切にしています。私のささやかな楽しみは、帰宅したら少な目の缶ビールで晩酌しながら食事を美味しくいただくこと。といっても私は本来お酒が弱いので、ビールを飲むとしばらくボーッとしてしまいます。そのボーッとした時間に、録画しておいたサスペンスやアクションといった海外ドラマを1本見る。それがリフレッシュになっています。その後、酔いが覚めたら少し勉強や仕事をして、12時過ぎには寝る、というのが毎日の生活パターンですね。
 あと、体を動かすことも好き。もともと学生時代から野球をしていて、勤務医時代も病院の野球チームに入っていました。精神科は野球チームを持っているところが多くて、病院対抗試合とか、製薬会社さんとの試合もよくありました。
 開業してからは野球ができなくなり、時間的にも余裕がなくてスポーツもしていなかったのですが、体力の衰えを感じて、数カ月前から週1回テニススクールに通っています。やっぱり体を動かすのは大事ですね。スポーツをずっとしていたからこそわかるのですが、体を動かさないといかに体力が落ちるかを実感しました。週1回でも動かしていると違うので、これからも運動は続けていくつもりです。
 クリニックとしては今後さらに積極的に、認知症ケアに取り組んでいきたいと考えています。新宿区では大学病院などを除いて、精神科で認知症のケアに取り組んでいるところが少ないといわれています。今後はますます認知症の患者さんは増えていくと考えられますし、これからはケア施設との連携なども検討し、認知症患者さんやそのご家族をサポートしていけたらいいと考えています。もちろん、これまで通りの診療も続け、患者さんに安心して来ていただけるクリニックであり続けたいと思います。

西新宿コンシェリアクリニック

医院ホームページ:http://www.concieria-clinic.com/index.html

都営地下鉄大江戸線「西新宿5丁目」駅より徒歩6分。マンション・オフィスビルの2階にあり、待合室はやわらかな照明で温かい雰囲気。リラックスして診察を待つことができます。
詳しい道案内は、医院ホームページから。

診療科目

心療内科、漢方精神科

金子宏明(かねこ・ひろあき)院長略歴
1982年 浜松医科大学卒業 同大附属病院精神科で研修
その後民間の精神科病院で臨床医として研鑚を積む
2008年 西新宿コンシェリアクリニック開設
■資格・所属学会他

精神保健指定医、日本精神神経学会認定専門医、日本精神神経学会、日本東洋医学会、日本老年精神医学会、日本禁煙学会、日本禁煙医師連盟

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