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【牛車腎気丸】大腸がんの抗がん剤治療による、しびれや冷感の軽減効果/論文の意義

[河野透先生]

西洋医学では対処法に乏しく困っている領域

抗がん剤オキサリプラチンの末梢神経障害を軽減し、大腸癌の抗がん剤治療をより効果的に進めることができる−牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)

 生活習慣の欧米化に伴い、現在、日本で大腸癌が急増しています。一方で大腸癌の治療法も進歩しており、効果の高い抗がん剤が次々と登場してきました。いずれも作用の強い薬剤であるため、副作用がつきものですが、時にはがんの進行よりも、その薬剤の副作用によって治療を中断しなくてはならない場合もあり、がん治療の大きな問題となっています。今回、紹介する河野透先生らの研究は、『牛車腎気丸』が、西洋医学では十分に対応できていないこのような抗がん剤の毒性による症状を軽減できるという注目すべき結果でした。英国オックスフォード大学が発行する著名な学術誌『Evidence-based Complementary and Alternative Medicine』の2009年12月にオンライン版として掲載されました。

背景: 大腸癌標準療法FOLFOXでは、オキサリプラチン特有の副作用である末梢神経障害が、治療中断や高用量での治療ができない大きな原因となっている

大腸癌治療によるおける抗がん剤の重大な毒性 末梢神経障害 進行・再発大腸癌の標準療法であるFOLFOXは、「進行・再発大腸癌の治療をすっかり変えた」と言われるほど有効な化学療法ですが、その中心となる抗がん剤オキサリプラチンには、特有の「末梢神経障害」という副作用があります。治療を進めて、使用されたオキサリプラチンの総量がある程度増えると、ほとんどの患者さんに手足のしびれや冷感などが出現し、軽症であれば治療を継続できますが、重症の場合には「耐え難い感覚」となって、本来のがん治療をそれ以上は続けられなくなります。

 そのため、せっかくFOLFOXでがんの進行を抑えることができていても、治療を中断したり延期したりしなくてはならないことも少なくありません。逆に、もしこの副作用を避けることができれば、結果的により多くの量のオキサリプラチンを用いて、高い抗がん効果を得ることも期待できます。

 末梢神経障害を軽減するために、これまでにさまざまな補助療法が検討されてきました。その中で、比較的有望と言われているのが「Ca/Mg製剤」ですが、臨床現場では必ずしも十分な効果が得られるとは限らず、がん治療に携わる医師たちは、より確実に末梢神経障害を抑えることのできる治療法を今も模索しています。

 『牛車腎気丸』は、「地黄(じおう)」、「山茱萸(さんしゅゆ)」、「山薬(さんやく)」、「沢瀉(たくしゃ)」、「茯苓(ぶくりょう)」、「牡丹皮(ぼたんぴ)」、「桂皮(けいひ)」、「附子(ぶし)」、「牛膝(ごしつ)」「車前子(しゃぜんし)」を構成生薬とし、足の痛みや腰痛、しびれ、排尿困難、頻尿などの治療に用いられてきました。近年、婦人科領域(乳癌や卵巣癌・子宮体癌など)において、タキサン系抗がん剤(抗がん剤のタイプの1つ)の副作用である末梢神経障害に対して牛車腎気丸が有効であったという研究結果が複数報告されました。その作用のしくみには、NO(一酸化窒素)産生増加を介した末梢血流量の改善や末梢性の鎮痛作用、脳のホルモン系を介した鎮痛作用などがかかわると考えられています。

 この婦人科領域での成績から、大腸癌領域でも一部の患者さんですでに、オキサリプラチンの末梢神経障害を軽減する目的で牛車腎気丸が使われてはじめていました。そこで河野先生は、過去にすでにFOLFOXを受けた患者さんのデータをあらためて検討することで、 牛車腎気丸の有効性を科学的に分析したのです。

 このように過去の記録に基づいて検討する手法をレトロスペクティブ(後ろ向き)試験/研究と呼びますが、今回の河野先生らの研究成果をもとに、現在は、プロスペクティブ(前向き)の多施設共同プラセボ対照二重盲検比較試験(GONE study)が進められています。この試験のデザインや実施手順などを記載した「プロトコール論文」は、日本の臨床腫瘍学領域における英文雑誌として40年の歴史を誇る『JJCO(Japanese Journal of Clinical Oncology)』に掲載され、世界的にも注目されています。

2010/08/06

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