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抗がん剤による口内炎、重症化を軽減する漢方薬とは?

公開日:2019.04.25
カテゴリー:がん治療と漢方

口内炎、重症化すると治療の中断につながることも

 恵佑会札幌病院薬剤科の出町拓也先生は、第28回日本医療薬学会で頭頸部がんでのTPF療法と呼ばれる抗がん剤の併用療法時に、漢方薬の半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)を服用することで、抗がん剤の副作用である口腔粘膜炎(口内炎)の重症化を軽減できると発表しました。

 口腔粘膜炎は抗がん剤の代表的な副作用で、食事が摂りにくくなることで患者さんの生活の質が大きく下がるだけでなく、時には治療の中断にもつながります。抗がん剤治療中に口腔粘膜炎が起きる理由としては、抗がん剤が口腔粘膜細胞のような細胞分裂の盛んな細胞を障害する作用があるためと考えられています。

 半夏瀉心湯は半夏(はんげ)、黄ごん(おうごん)、乾姜(かんきょう)、人参(にんじん)、甘草(かんぞう)、大棗(たいそう)、黄連(おうれん)という7種類の生薬で構成され、みぞおちがつかえ、ときに悪心、嘔吐があり、食欲不振で腹が鳴って軟便または下痢の傾向のある人において、急・慢性胃腸カタル、醗酵性下痢、消化不良、胃下垂、神経性胃炎、胃弱、二日酔い、げっぷ、胸やけ、口内炎、神経症などの症状に用いられる漢方薬です。

 これまでの基礎的な研究では、半夏瀉心湯に含まれる黄ごん、乾姜、甘草には傷ついた口腔粘膜の炎症を抑える作用1)、半夏、黄連、乾姜には抗菌作用2)、半夏以外の6種類には炎症を悪化させる活性酸素の消去作用3)があることが知られ、抗がん剤治療中の口腔粘膜炎に対する有効性が数多く報告されています。

半夏瀉心湯、口腔粘膜炎の重症化を軽減

 出町先生らは、ドセタキセル、シスプラチン、フルオロウラシルという3種類の抗がん剤を併用するTPF療法を入院で行った頭頸部がん患者さんを対象に、口腔粘膜炎に対する半夏瀉心湯の効果を検討しました。

 検討ではTPF療法の1コース目で口腔粘膜炎が起きた患者さんを対象に、半夏瀉心湯を服用し始めた患者さん21人(半夏群)と半夏瀉心湯を服用しなかった患者さん21人(対照群)の2群に分けて比較を行いました。半夏瀉心湯を服用した患者さんは、TPF療法の2コース目開始時から、1日3回食前に半夏瀉心湯2.5gを約50mLのぬるま湯に溶かし、口に含んでうがいをした後に飲み込む形で服用してもらいました。

 口腔粘膜炎の重症度については、アメリカ国立がん研究所が作成したCommon Terminology Criteria for Adverse Events(CTCAE)v4.0で評価しています。これは重症度を示す5段階のグレード(Grade)で評価するものです。グレード1は「症状がない、または軽度の症状がある:治療を要さない」、グレード2は「中等度の疼痛;経口摂取に支障がない;食事の変更を要する」、グレード3は「高度の疼痛;経口摂取に支障がある」、グレード4は「生命を脅かす;緊急処置を要する」、グレード5は「死亡」となっています。

 検討の結果、TPF療法2コース目で口腔粘膜炎が起きたのは半夏群15人、対照群16人でした。半夏群では1コース目にはグレード1の口腔粘膜炎が18人、グレード2が2人、グレード3が1人でしたが、2コース目にはグレード1が15人のみと、1コース目と比べて重症度が軽減していました。対照群では1コース目でグレード1が14人、グレード2が7人でしたが、2コース目ではグレード1が11人、グレード2が3人、グレード3が2人となっていました。以上の結果から、半夏瀉心湯を併用することで口腔粘膜炎の重症化が軽減されることが示されました。

 口腔粘膜炎の平均発現期間について、対照群では1コース目で7.5±3.1日、2コース目で6.9±4.9日となり、半夏群では1コース目で6.9±2.7日、2コース目で4.3±3.1日と統計学的にも明らかな短縮が得られました(p=0.02)。また、退院までの平均日数について、対照群では1コース目で16.5±2.7日、2コース目で15.1±1.9日(p=0.004)、半夏群では1コース目で13.2±1.7日、2コース目で11.9±2.6日(P=0.04)となり、半夏群が対照群と比べて統計学的な検討で明らかな短縮を認めています。

 出町先生はこの結果について「半夏群では、口腔粘膜炎の症状が軽減し、治療中でも生活の質を維持することができ、入院期間の短縮に寄与したものと考えられます」と述べました。(村上和巳)

参考
  1. Kono T et al.:Integr Cancer Ther. 2014;13(5):435-445
  2. Fukamachi H et al.:Evid Based Complement Alternat Med. 2015;2015:512947.
  3. Matsumoto C et al.:J Radiat Res. 2015;56(4):669-677

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