黄連解毒湯(おうれんげどくとう)

[外来でよく使われる漢方薬] 2022/03/10
監修:井齋偉矢先生(日高徳洲会病院院長/サイエンス漢方処方研究会理事長)

構成生薬

  • 黄芩(おうごん)
  • 黄連(おうれん)
  • 山梔子(さんしし)
  • 黄柏(おうばく)

作用の特徴

高血圧に伴うのぼせ、顔面の紅潮、イライラなど、いわゆる頭に血が上ったときに有用

対象となる症状

  • 胃の激しい炎症(胃炎、消化性潰瘍)
  • 口腔粘膜炎
  • 喀血(かっけつ)、吐血(とけつ)などの出血
  • 皮膚のかゆみ

解説

 黄連解毒湯(おうれんげどくとう) は熱による毒症状の解毒が期待できる漢方薬で、炎症など熱の発生を伴う諸症状や出血、皮膚のかゆみを抑えるのに使われています。

 特に、胃潰瘍のような胃粘膜に生じる急性の病変や、胃粘膜が赤くなったり、ただれたりするような場合には、胃酸の分泌を抑える西洋薬と併用すると、粘膜部分の改善を促進する効果が期待できます。
 逆流性食道炎などによって起こる「バレット食道」(食道の粘膜の一部が、胃の粘膜に置き換わってしまう状態)の改善にも、黄連解毒湯が効果を発揮することがあります。

 また黄連解毒湯には、体の止血機能を働かせる作用があり、せきとともに血を吐き出す「喀血」の治療に役立ちます。
 そのほか高血圧に伴う赤ら顔、のぼせの改善にも効果的です。

 長期間にわたって服用を続ける場合は、肝機能への影響や、大腸壁内から腸間膜の静脈に石灰が沈着することで起こる静脈硬化、黄疸による皮膚の色素沈着などに注意しておいたほうがよいでしょう。

エビデンス情報

胃粘膜抵抗作用増強による胃粘膜保護作用

 飲酒や痛み止めなどで引き起こされる胃粘膜損傷への漢方薬(黄連解毒湯、三黄瀉心湯、安中散、大柴胡湯)の効果を、動物モデルを用いて西洋薬のスクラルファート、シメチジン、プロスタグランジンと比較しました1)。いずれの漢方薬でもエタノールおよびアスピリンによる胃粘膜損傷を有意に抑制しました。また、黄連解毒湯は胃酸の分泌を抑えるのではなく、胃粘膜抵抗作用を増強することにより効果を発揮することが分かりました。

止血困難例、出血病態への効果

 出血性胃炎、大腸憩室出血、鼻出血などの出血性病変があり、西洋医学的アプローチでの止血が困難であった患者に対し、黄連解毒湯の投与を行ったところ、投与開始から数分~数日以内に出血症状が消失するなどの効果を示した複数の例が報告されています2)。止血のメカニズムなど詳細は不明であるものの、黄連解毒湯が止血困難例に対して有効な選択肢になる可能性を示しています。

高血圧にともなう症状に対する有効性

 興奮(イライラ感)、精神不安、睡眠障害、のぼせ、顔面紅潮の少なくとも1つの随伴症状があること、やせ型ではないことなど、選択および除外の基準に合致した高血圧症患者265例を対象に二重盲検ランダム化比較試験を行い、黄連解毒湯入りのカプセルを投与した黄連解毒湯投与群とプラセボ群において、高血圧随伴症状に対する有効性を7段階の点数で評価しました3)。8週間後の試験終了後、血圧降下度と降圧有効率には両群の間に有意差がありませんでしたが、黄連解毒湯投与群において、のぼせ、顔面紅潮への有意な改善が見られたほか、興奮、精神不安、睡眠障害などの症状についても、プラセボ群を上回る改善効果が認められました。

参考

  • 1) 高瀬英樹ほか. 日薬理誌 1988; 91(5): 319-324
  • 2) 坂田雅浩ほか. 日東医誌 2017; 68(1): 47-55
  • 3) 荒川規矩男ほか. 臨と研 2003; 80(2): 354-372
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