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お酒を飲んだ後に漢方薬を飲んでもいい?二日酔いに効く漢方薬も紹介

公開日:2022.03.24 更新日:2025.1.10
カテゴリー:病気と漢方 監修:今津嘉宏先生(芝大門いまづクリニック院長)

二日酔いになって、体調不良で翌日のパフォーマンスが低下したり、あんなに飲まなければ良かったのに…と後悔したりすることはありませんか? わかっていても、ついつい飲みすぎてしまうという人は、漢方薬も味方につけてみてはいかがでしょうか。適正な飲酒量や酔いにくい飲み方についても解説します。

お酒を飲んだ後に漢方薬を服用してもいい?

二日酔い対策として漢方薬を活用する際には、お酒を飲んだ後ではなく、飲む前に服用することをおすすめします。

一般的に、漢方薬は胃の中にものがない時間帯に飲むことが望ましいとされており、漢方薬を飲むタイミングは食前もしくは食間と指示されることが多いです。食後に服用することで、胃の中で溶けやすい性質をもつエキス剤が胃の中のものと混ざってしまうことを避けるためです。食前は食事の30分~1時間前が目安です。食間とは「食事と食事の間」のことで、食事の2時間後が目安です。

お酒を飲む前に、黄連解毒湯(おうれんげどくとう)

お酒を飲む前には黄連解毒湯を服用するとよいでしょう。江戸時代中期の後世派医師・香月牛山は『牛山方考』のなかで、黄連解毒湯のことを「実熱実火を治す通用の剤(=熱を持って赤くなったものを速やかに冷やす漢方薬)」と記載しています。胃腸の調子を整える作用もあります。

黄連解毒湯に含まれる生薬のうち、黄芩(おうごん)にはバイカリンとオウゴニンという成分が含まれ、抗炎症作用と胆汁分泌促進作用があることがわかっています。また、抗炎症作用を持つ黄連(おうれん)、末梢血管収縮作用を持つ黄柏(おうばく)、鎮痛や胆汁分泌促進作用を持つ山梔子(さんしし)も含んでいます。

二日酔いの症状別 おすすめ漢方薬紹介

お酒を飲んだ翌朝、二日酔いになってしまったときも漢方薬を活用することができます。

嘔気や胸焼けには、半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)

二日酔いで吐き気がしたり、胸がムカムカするようなら半夏瀉心湯を飲むとよいでしょう。半夏瀉心湯は黄連解毒湯に胃腸薬が加わった漢方薬であり、アルコールの代謝を助け、胃腸の状態を整えてくれます。

半夏瀉心湯に含まれる半夏(はんげ)と乾姜(かんきょう)には吐き気を鎮める作用があり、この2つが組み合わさることでその効果は増強されます。また、消化管の運動をよくする働きや抗疲労作用がある人参(サポニンを多く含むオタネニンジン)も含まれています。さらに、大棗(たいそう)には、乾姜と組み合わせると、消化管を調整する作用が、甘草(かんぞう)には抗炎症作用がそれぞれあります。

ちなみに「瀉心」とはみぞおちのことで、ストレスなどでみぞおちに違和感があるときなどにも半夏瀉心湯が用いられています。

むくみが気になったら、五苓散(ごれいさん)

お酒を飲んだ翌朝に、むくみが気になったら五苓散を飲むとよいでしょう。体内の水を排出して、むくみを改善します。特に「口が渇いて、なかなか小水が出ない」方におすすめです。

五苓散には、水分バランスを整える猪苓(ちょれい)、茯苓(ぶくりょう)、蒼朮(そうじゅつ)または白朮(びゃくじゅつ)、沢瀉(たくしゃ)の4つの生薬が含まれています。猪苓と袂苓はサルコノシカケ科のキノコ、蒼朮と白朮はキク科のオケラの根で、いずれも利尿作用があります。沢瀉は「沢の水をそそぐ」という意味の名前で、その名の通り水の排出作用があると言われています。

二日酔いにならないためには

飲酒の前に漢方薬を服用して対策していても、飲み過ぎてしまえばやはり二日酔いになることはあります。二日酔いにならないために注意したいポイントを解説します。

自分の適量を知る

1日当たりの純アルコール摂取量が男性40g以上、女性20g以上になると、生活習慣病(脳卒中やがんなど)のリスクが高まります。お酒に含まれる純アルコール量(g)は、下記のように計算できます1)

純アルコール量(g) =摂取量(ml)×アルコール濃度(度数/100)×0.8(アルコールの比重)

例えば、ビール(アルコール度数5%)のロング缶1本(500ml)の場合は、摂取量 500(ml) × アルコール濃度0.05(=5/100)× 0.8(アルコールの比重)= 20(g) になります。また、ワインならグラス2杯弱程度(200mL)、日本酒は1合(180mL)で純アルコール量20gほどになります。

適正な飲酒量を守るための工夫

適量を守るための工夫として、あらかじめ飲む量を決める、飲酒の合間に水(ソフトドリンク)を飲む、水などで割ってアルコール度数を低くする、少しずつ飲酒するなどがあります1)。また、飲酒前や飲酒中に食事をとると、血中のアルコール濃度が上がりにくくなるため酔いにくくなります1)。ただし、これはかえって飲みすぎることにもつながる可能性があるため、注意が必要です。

そのほか、冷たいお酒は低温の場合、吸収されるスピードが遅くなり、酔うまでに時間がかかります。そのため飲みすぎて二日酔いの原因になりやすいと言われます。また、アルコール以外のものが含まれている醸造酒は、分解に時間がかかるため二日酔いになりやすいと考えられています。もちろん、その日の自分の体調にも左右されます。

これらを念頭に置きながら、上手にお酒と付き合っていきましょう。

参考文献
  1. 厚生労働省:健康に配慮した飲酒に関するガイドライン(令和6年2月19日)[2024年11月29日閲覧]
今津嘉宏(いまづ よしひろ)先生
芝大門いまづクリニック院長

藤田保健衛生大学医学部卒業後に慶應義塾大学医学部外科学教室に入局。国立霞ヶ浦病院外科、東京都済生会中央病院外科、慶應義塾大学医学部漢方医学センター等を経て現職。日本がん治療認定医機構認定医、日本外科学会専門医、日本東洋医学会専門医・指導医、日本消化器内視鏡学会専門医・指導医。

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