同じ病名でも人によって用いる薬は異なる!?

[漢方薬の使い方] 2021/01/21
監修:秋葉哲生先生(あきば伝統医学クリニック院長)

 同じ病名であっても、人によって適した治療薬が異なるのも漢方医学の特徴といえます。
 西洋医学では、症状が異なっても原因が同じであれば同じ治療方法を選択します。例えば胃酸の出過ぎで胃に炎症がおこり、痛みが生じている場合であれば、症状が空腹時の胸やけであっても食後の胃もたれであっても、胃液の分泌を抑える薬を処方し、症状の緩和を目指します。

 しかし漢方医学では同じ胃酸の出過ぎによる胃炎でも、症状によって処方する漢方薬が異なります。漢方医学における胃炎の代表的な治療薬としてあげられるのは、安中散(あんちゅうさん) 平胃酸(へいいさん) です。
 安中散の「中」は「おなか」のことで、おなかを安んじて、つらい症状を緩和させるという意味があります。やせ型で比較的体力が低下した、華奢なタイプの人の神経性胃炎、慢性胃炎の第一選択薬です。おもに冷えをともなう胃の痛みに処方されることが多いのが、安中散の特徴といえます。
 一方、平胃酸は胃もたれの基本薬として知られており、消化不良をともなう胃もたれ、吐き気、消化不良、食欲不振をはじめとする慢性・急性胃炎の治療に用いられるケースが多いです。また、食べ過ぎによる胃もたれ、胃の痛みにも有効です。こちらは体力が中程度以上で、冷えをともなわない人に処方されます。
 このように同じ胃炎であっても、症状やその人のタイプ=証(しょう)によって用いる治療薬が異なるのが漢方薬の特徴です。

 同じことが風邪や冷え性にもいえます。風邪の場合、どのような症状が出るかは人によってさまざまです。例えば代表的な風邪の漢方薬として思い浮かべる人の多い葛根湯(かっこんとう) は、比較的体力があり、筋肉質な人に向いている薬です。普段は元気だけれど、たまたま風邪を引いてしまったという人には葛根湯が有効といわれます。
 強い寒気や、のどの痛みや咳などの症状のある風邪には、麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう) が効果的です。麻黄附子細辛湯には気管を拡張させて咳をしずめるエフェドリンを含む麻黄、新陳代謝を回復させる効果のある附子、抗アレルギー作用がある細辛が配合され、乾燥した空気を吸うと喉に違和感が生じるような風邪に有効といわれています。
 そのほか初期の風邪、あるいは体力がなく、風邪をひくとだるさや疲労感が強くなる「虚証」の方の風邪には桂枝湯(けいしとう) が向いています。虚証は病気を体の外へ追い出す力が弱い、体温は上がらずに汗をかく、熱があっても顔色が悪い、などの特徴があります。

 女性に多い冷え性も漢方医学では病気とされ、治療の対象となります。しかし同じ冷え性でも、血の巡りが悪くておこる冷えには桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん) 、血の巡りの悪さに加え、水分バランスが崩れて起こる冷えには当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん) 、月経前のイライラや落ち込みなど精神的なものからくる冷えには加味逍遙散(かみしょうようさん) と、処方される漢方薬が異なります。

 このように漢方薬は本来、患者さんの体質や症状を詳しく診断してから処方されるものであり、同時にとってはいけない成分や、飲み方のルールもあります。必ず医師、薬剤師に相談した上で服用しましょう。

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