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かしわでクリニック 柏手由里乃院長

[外来訪問] 2016/06/15

~漢方薬の新時代診療風景~
 漢方薬は、一般に知られる処方薬(西洋医学)では対処が難しい症状や疾患に対して、西洋医学を補完する使われ方も多く、今後の医療でもますます重要な役割を果たすと考えられます。
 近年、漢方薬の特性については科学的な解明が進んだこともあって、エビデンス重視の治療方針を取る医師の間でも漢方薬が使用されることが増えています。
 漢方薬を正しく理解して正しく使うことで、治療に、患者さんに役立てたい。日々勉強を重ねる、身近な病院の身近なドクターに、漢方活用の様子を直接伺いました。ドクターの人となりも見えてきます。

風邪から交通外傷まで診ていた大学病院時代

 もともとの専門は消化器外科で、北海道の大学病院で外科医をしていました。手術で直接体を診て原因を探り、自分の手で治すという外科の仕事が自分には向いていると思いましたし、好きでした。また当時は関連病院の救急外来などで当直をする機会が多く、北海道で、半径40km圏内に医師が自分ひとりという、いわゆる「へき地医療」に約10年携わりました。当時は、風邪、腸閉そく、交通外傷、湿疹、目が痛い、耳に虫が入ったなど、あらゆるケガや病気を診ました。「いつ、どんな患者さんが来るかわからない」という環境での仕事にやりがいを感じていました。
 さまざまな患者さんを診たことや、出産を機に麻酔科に転科し、患者さんの痛みに向き合う治療に携わった経験から、2013年に内科・外科・麻酔科などのクリニックを開業しました。
 来院する患者さんは地域の高齢者が多いですが、漢方治療をしているためか、20~40代の女性やお子さんもいらっしゃいます。また、病気の進行や高齢のため、通院できない患者さんの在宅診療もおこなっています。
 基本的には、患者さんのぜんぶを診たいと思っています。もちろん専門外の疾患や、さらに詳しい検査や治療が必要と判断した場合には適切な医療機関に紹介します。でも何か心配なことがあったとき、「まずは先生に相談してみよう」と思っていただける存在でありたい。そして通院がかなわなくなった後も、ご家族や地域と連携しながら最後までずっと見守ることができるクリニックでいたいと考えています。

漢方の魅力を伝えつつ、まずは「お試し」を提案

 漢方内科では、生理痛や便秘、女性特有の不定愁訴などで受診された患者さんに漢方を用いることが多いですね。当院の問診表には「漢方による治療を希望する」、「希望しない」というチェック欄があり、漢方薬を希望される方にはできるだけ漢方処方を考えます。しかし「絶対に漢方だけ」とこだわるのではなく、西洋薬が適している場合はそちらを提案することもあります。いくつもの症状がある場合、漢方を何種類も使うと効果が弱まることがあるため、「便秘には漢方薬を使うけど、花粉症は一時期のものなので西洋薬を使いましょう」など、「東西の良いとこ取り」の治療を提案することもあります。
 ときには、最初は漢方薬に否定的な方もいます。その場合、無理強いはせず、「使えばよくなるだろう」と思う場合には、「この薬を使うとこういった効果が得られることがありますよ」と提案します。「じゃあ、使ってみようかな」とおっしゃった方には、飲めるかどうか、まずは2週間ぐらい試してみていただきます。
 お子さんの場合は、まず、お母さんに漢方薬について説明し、「使ってみようかな」と思っていただくことがスタート。漢方薬のメリットや、「抗生物質も本当に必要なときには使うべきですが、漢方薬を使うことで、病気になりにくい体を作っていく方法もありますよ」と提案して、実際に飲めるかどうか試してもらいます。漢方薬は苦くて飲めないと思っている方も多いですが、飲みやすくする方法などもお伝えしています。

勉強会に参加し自分の体で実感

 私自身が漢方薬に関心を持ったのは大学病院にいた頃でした。外科医としての仕事は大好きでしたが、手術をして悪いところを取っても、それですべて解決することばかりではありませんでした。手術はしたけどその後の回復がよくない、がんが再発してしまったなどさまざまなケースを体験して、一般的な医療や西洋薬でできることに限界を感じたことがありました。
 西洋薬ではこれ以上どうにもできない、でも患者さんに「もう何もできることがありません」とは医師として言いたくない。そうしたときに、漢方薬を使うことでできることがありました。漢方薬の選択肢は非常に多く、「これがダメでも、まだあの手段がある。あれも試せる」と考えることができます。最後まで患者さんに希望を持ってもらうことができる手段として、漢方薬に惹かれたのだと思います。
 とにかく必死に勉強し、漢方の勉強会にも積極的に参加しました。そして、自分でも使ってみました。当時はとても多忙で不調を感じるヒマもないほどでしたが、何をしても解消されない便秘に悩んでいました。そんなとき、勉強会で先生にお腹をさわってもらい、「証」をみて処方された薬を飲んだら、とても調子がよくなったのです。しかも、処方されたのは一見、便秘とはまったく関係ないと思われる薬で、当時はどうしてそれが効くのか分かりませんでした。でも飲むと確かに調子がよくなるのです。つまりそれは、症状だけでなく、その人の証を診て、体のコンディションを元々の「正しい状態」に整えることで治す、漢方特有の考えかたによる処方だったのです。
 それが分かってから、私も患者さん一人ひとりのお腹をさわって、脈にふれて、舌を診て処方するようにしています。しかし、それでもうまくいかないこともあります。そんなときは勉強会に参加して、大先輩である先生方が話す症例を参考にしたり、質問したりしてまた考えます。そうしてようやく患者さんにぴたりと合う処方ができたときには、患者さんが診察室を出て行かれた後に、「よっしゃ!」とひとりでガッツポーズをするほど嬉しいのです。

漢方の活用でがん治療の副作用のつらさを抑えられることも

 放射線や抗がん剤の治療では、口内炎ができ、食事がしにくくなったり、吐き気で食欲が落ちて体重が激減してしまったりと、副作用でつらい思いをされる方も多くいます。そこで、あらかじめ漢方薬を使って体力を上げ、治療に耐えうる体を作るなど準備をしておくことで、副作用の出現を抑えられることがあるのです。一部の大学病院などで、漢方専門外来と連携ができているところなどで、そうした治療を取りいれているところもあります。
 がんと診断された直後、治療法を決める時点から漢方薬を併用することで、体調を整え、本来のスケジュール通りに治療を継続できることもあるのです。当クリニックでは、こういった目的の漢方治療も積極的におこなっています。今後は、漢方薬にこうしたメリットもあることを、もっと多くの方に知っていただきたいです。そのためにも漢方について学び続け、治療に取りいれていきたいと考えています。

かしわでクリニック

医院ホームページ:http://kashiwade-cl.jp/index.php

JR中央線、西武多摩川線「武蔵境」駅北口から徒歩3分。大きな窓からたっぷり陽射しが降り注ぐ明るい待合室と、スタッフの温かく親身な対応が魅力的なクリニックです。
詳しい道案内は医院ホームページから。

診療科目

内科、外科、漢方内科、麻酔科(ペインクリニック)

柏手由里乃(かしわで・ゆりの)院長略歴
2000年 旭川医科大学医学部医学科卒業、同大学病院第二外科
2007年 同大学病院麻酔科
2010年 杏林大学病院麻酔科
2011年 てらもとクリニック副院長
2013年 かしわでクリニック開設


■所属・資格他

日本麻酔学会、日本ペインクリニック学会、日本消化器病学会、等

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