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ポレポレクリニック 辻内優子院長

[外来訪問] 2016/05/25

~漢方薬の新時代診療風景~
 漢方薬は、一般に知られる処方薬(西洋医学)では対処が難しい症状や疾患に対して、西洋医学を補完する使われ方も多く、今後の医療でもますます重要な役割を果たすと考えられます。
 近年、漢方薬の特性については科学的な解明が進んだこともあって、エビデンス重視の治療方針を取る医師の間でも漢方薬が使用されることが増えています。
 漢方薬を正しく理解して正しく使うことで、治療に、患者さんに役立てたい。日々勉強を重ねる、身近な病院の身近なドクターに、漢方活用の様子を直接伺いました。ドクターの人となりも見えてきます。

幼少期の入院の記憶から医師に

 幼いときはとても病弱で、しょっちゅう熱を出していました。原因不明の高熱が続いて大学病院に入院したこともあります。つらかった入院時に女性の医師にやさしくしてもらったこと、自分と同じぐらいの年齢の重い病気の子が病院にたくさんいたことは、大人になった今でも鮮明に残る記憶です。
 その時の体験から、小学生のころからの夢は「医師になること、病気の子どもを救うこと」でした。その夢をかなえるため、医学部に入り小児科医を目指しました。
 小児科で学ぶうちに子どもの心のケアに関わりたいと考えるようになり、小児心療内科の先生に師事しました。そこで、母親に虐待された子を診る機会がありました。当時はどうしても子どもの目線で見てしまい、虐待する親を非難する気持ちを持ってしまったこともありました。しかし悩み考えるうち、一番つらいのはわが子を虐待せざるを得ない状況に陥ってしまった親なのだと気づきました。そして「親を救えなければ子どもを助けることはできない、小児科だけで学んでいるのではダメだ」と考えたのです。
 その後、心療内科で大人の心の病気についても学びました。しかし、どうしても小児科医は子ども中心に、心療内科医や精神科医は大人中心に診療をしがちです。親子の関係は切って離せるものではないと考えた私は、親子を一緒に診られるクリニックを作りたいと思い、2009年にポレポレクリニックを開業しました。

「体と心」「親と子」をまるごとすべて診たい

 当クリニックでは、心療内科と漢方内科、小児心療内科と小児漢方内科として、心と体に起こるトラブルに幅広く対応しています。患者さんは、心身症やうつ病、パニック障害、親子関係の悩み、女性特有の体や心の悩み、子どもの心身症や虚弱体質、不登校、摂食障害、発達障害など、さまざまな悩みを抱えて来院されます。
 母親と子どもを一緒に診ることもあれば、最初に子どもの話を聞き、別日に母親を診ることや、母親だけのカウンセリングをおこなうこともあります。また、両親だけでなく祖父母まで、一家総出でいらっしゃることもあります。診察の方法は患者さんによってさまざまです。体や心のこと、社会的・家庭的な背景、これまで過ごしてきた人生、環境などをよく知る必要があるため、とにかく一人ひとりの患者さんにじっくり時間をかけて向き合います。
 薬物療法が必要な場合は積極的に西洋薬も使いますが、基本的には漢方薬を処方することが多いですね。漢方薬は、風邪や頭痛、めまいといった体の症状にはもちろん、冷えや生理不順、更年期障害など、女性特有のトラブルにも有用です。また、うつ病などで抗うつ薬が必要な場合でも、気鬱や気虚がみられる患者さんに漢方薬を併用することで、より治療効果が高まることがあります。子どもに対しては、アレルギーや喘息など慢性的な病気や風邪など急性疾患のときにも、免疫力を高めたり、虚弱を改善したりするために漢方薬を処方します。また、発達障害がベースにあり、体の使い方がうまくいかず、気の巡りが滞っている子に対して積極的に漢方薬を用いることも。気の巡りをよくすることで、イライラや落ち着きのなさが軽減して精神的に安定し、体調が良くなるケースが多々あります。

「症状」ではなく「人」を診て処方する

 私が漢方と出会ったのは、小児科を離れてからでした。当時、小児科では発熱や風邪で来た子どもには、抗生物質と解熱剤、咳止めや鼻水止めなどを処方するのが一般的でした。もう少し違った視点の処方や考え方はないだろうかと悩んでいた時、心療内科に来て漢方の先生の勉強会に参加する機会がありました。そこで「漢方薬は人の持つ免疫力に働きかけることができる薬」と学び、「これだ!」と思ったのです。漢方は「症状」を診るのではなく、「人」を診て処方する薬だと聞いて、腑に落ちました。
 また、心療内科の基本理念は「心身一如」。漢方医学の理念そのものです。心と体をわけ隔てなくその人をまるごと診るという考えが自分にピタッとはまり、心療内科の領域でこそ漢方薬を活用できると確信したのです。それから漢方薬について勉強し、患者さんの治療にも積極的に使い始めました。
 ただし、漢方薬だけにこだわっているわけではありません。漢方薬を希望しない患者さんには漢方薬を勧めませんし、漢方薬を希望する患者さんでも西洋医学の薬が最も良いと思えば西洋薬を患者さんに勧めます。漢方薬と西洋薬を併用することもあります。

患者さんと一緒に治療法を見つけていきたい

 漢方を学んでから、私自身も漢方薬を飲むようになりました。そのおかげで体調がよく風邪をひきにくくなった実感があります。また、私が健康のため大切にしていることが「冷やさない」こと。とくに女性は、足首の三陰交というツボを温めることがとても大切です。実は、私は以前、生理不順や肩こり、頭痛などの不調を感じることが多く、自身の妊娠・出産時にもさまざまなトラブルに見舞われました。けれど、漢方薬と三陰交を温めることで、自分でも驚くほど不調が解消されました。ですから、患者さんにも「冷やさないほうがいいですよ、とくに足首は夏でも出さずに靴下をはいてあたためて」とおすすめしていて、クリニックの待合室では靴下も売っているほどです(笑)。
 自分の考えた治療法が絶対正しいという思いはありません。患者さんは一人ひとり考え方や性格、生活も環境も千差万別です。例えば、調子が悪くなったとき、「厄年のせいだ」と言う人もいれば、「ストレスのせい」と考える人、「寝不足だから」と思う人もいます。それはどれもその人にとっては真実で、それを私が「いや、それは違う」と判断するのは間違っているように思うのです。
 治療法についても、「この漢方薬がいいから使いなさい」と押し付けるのではなく、「この不調はどこから来ているんだろう?」「どうしてこうなるのだろう?」と患者さんとたくさん話して、考えて、その患者さんに最善と思われる治療法を一緒に見つけていきたい。私がこれまで積み重ねてきた経験や知識、漢方薬を始めとする治療手段を総動員して、私が病気を「治す」のではなく、患者さんが自分で「治せる」よう、患者さんが持っている自然治癒力を引き出せるお手伝いができればと考えています。

ポレポレクリニック

医院ホームページ:http://www.poreporeclinic.jp/index.shtml

JR中央線、西武多摩川線「武蔵境」駅南口から徒歩1分。自然素材を多く用い、電磁波を地中に逃がすオールアース施工をしています。待合室では友達の家に遊びに来たような気持ちで過ごすことのでき、診察が終わってもなかなか帰りたがらないお子さんも多いとか。詳しい道案内は医院ホームページから。

診療科目

心療内科、漢方内科、小児心療内科、小児漢方内科

辻内優子(つじうち・ゆうこ)院長略歴
1993年 大阪市立大学医学部卒業
1993~1996年 同大学医学部附属病院小児科
1996~1998年 東京大学医学部附属病院心療内科
2002年 東京大学大学院医学系研究科修了 医学博士取得
2000~2009年 東京都中央区セントラルクリニック心療内科
2007~2010年 都立墨東病院女性専用外来非常勤医
2009年 ポレポレクリニック開設


■所属・資格他

日本心身医学会専門医、日本医師会認定産業医
日本心身医学会、日本精神神経学会、日本小児科学会、日本東洋医学会、日本小児心身医学会、日本女性心身医学会、日本周産期メンタルヘルス研究会

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