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ひしかわ内科クリニック 菱川法之先生

公開日:2014.11.12
カテゴリー:外来訪問

~漢方薬の新時代診療風景~
 漢方薬は、一般に知られる処方薬(西洋医学)では対処が難しい症状や疾患に対して、西洋医学を補完する使われ方も多く、今後の医療でもますます重要な役割を果たすと考えられます。
 近年、漢方薬の特性については科学的な解明が進んだこともあって、エビデンス重視の治療方針を取る医師の間でも漢方薬が使用されることが増えています。
 漢方薬を正しく理解して正しく使うことで、治療に、患者さんに役立てたい。日々勉強を重ねる、身近な病院の身近なドクターに、漢方活用の様子を直接伺いました。ドクターの人となりも見えてきます。

理学部から僧侶の学校、そして医学部へ

 私はよく異色の経歴と言われます。東京出身で北海道大学の理学部を卒業後、帰郷して僧侶の資格を取り、さらに札幌医科大学へ進んで医師の道に入りました。僧侶資格を取ったのは、在家でしたがやはり僧侶の資格を持って活動していた祖父との約束によるものです。北海道の大学へ行くことを親族中が反対した時、発言力のある祖父が「若いうちは何をやってもいいだろう、その代わり卒業したら坊主の資格ぐらいは取っておけ」と。その約束を守り、さらに勉強を続けたいという思いから札幌医大に進みました。今は医師をしていますが、命と向き合うという意味では僧侶と似ているというか、不思議な運命を感じています。

心療内科で漢方薬の効果を実感

 札幌医科大学では消化器内科に進み、血液検査でがんの早期発見をする「腫瘍マーカーの遺伝子配列」を研究していました。私は患者さんに検査を行うことは非常に重要だと考えています。本人がただの風邪だと思っても、血液検査などの生化学検査で隠れた病気が見つかることがよくあるからです。
 大学を卒業後は道内でいくつかの病院に勤務しました。その中でも、北海道初の心療内科である札幌明和病院には5~6年ほど所属していました。私が専門にしている消化器は、ストレスに対してとても敏感な臓器です。当時は漢方薬を使うことはあまりなかったのですが、便秘に悩んでいた患者さんに桂枝加芍薬大黄湯を処方してみたところ、ぐっと良くなったことがありました。

ストレスが原因の症状には柴胡が効く


菱川先生とスタッフの皆さん

 当院には心身症と思われる患者さんも来られます。例えば、不眠や胃痛嘔気を訴えて来院された年配の女性の場合、世間話をしてみれば仕事を退職した夫が一日中家にいることが苦痛の真因だったことが分かる。お腹が痛いという男の子に「学校は楽しいかい?」と聞いてみると、実ははいじめにあっていたということもあります。
 ストレスに起因する疾病は、柴胡成分を含んだ漢方薬が良い効果を挙げています。例えば、柴胡桂枝湯や柴胡加竜骨牡蛎湯、加味逍遥散、抑肝散などですね。加えて自律神経系や抗うつの薬を併用することもありますし、食事、運動などの生活習慣についてもアドバイスします。運動についても、動くのが苦手という方には「外を10分歩くだけでもいいですよ」と話します。無理のない範囲であれば続けられますよね。
 さらに、漢方薬の効果を最大限に引き出すためには、胃の中の物がこなれたタイミングで服用することが重要です。服用時は「食間」とされることが多いのですが、この意味が分からない方も多いのです。ですから、私は「食事の2時間後に、多めの白湯で飲んでください」と伝えています。
 また、最初から「この漢方薬をください」と言ってくる患者さんに、そのままの処方をすることはありません。同じ症状でも効く漢方薬は患者さんによって違いますから「これから、あなたに合った薬を選んでいきますよ」と伝えた上で診察を行い、合いそうなものを処方します。そして、1~2週間服用してみて効果がなければ、別の漢方薬に替えていく。このようにして、その患者さんにとって本当に効果のある漢方薬を見つけ出していきます。

休日には大好きな蝶を追いかける

 私は普段から、心身の健康のために趣味の時間を積極的に持つようにしています。医師である私がストレスをためたり体調を崩すことで、誤診をしかねない状況になるのは何よりも嫌ですから。休みをきっちり取ることによって、診療時に自分の能力を最大限に発揮できるよう心がけています。
 午後の休診時や休日には、よく近くの山を歩いています。カメラを持って大好きな蝶を撮るためです。幼少時に蝶の美しさにひとめぼれしてから、いろいろな蝶を追い続けてきました。モンゴルやヒマラヤなど海外へも調査に出かけています。蝶に関する種々の学会にも所属していますし、北海道昆虫同好会の会長も務めているので多彩な異業種の方々との交流も多く、蝶の写真の個展を開いたり、写真集を出版したりもしています。
 クリニックの待合室には、事務長の妻が活けた花や、絵本作家の娘が描いた絵、そして私の好きな蝶を額装して飾っています。サロンのようにくつろげる場として好評のようです。僧侶にこそなりませんでしたが、クリニックに来られる患者さんもご縁があって巡り合ったと思っています。患者さんのつらさの本当の原因を突き止め、それを治療救済すること、それが私の使命と思いながら日々診療に当たっています。

医療法人社団 法真会 ひしかわ内科クリニック


植物や絵に囲まれた待合室はサロンのような雰囲気でくつろげる。
地下鉄東西線琴似駅、発寒南駅、宮の沢駅からJR北海道バス中州橋行き「西野8条8丁目」バス停すぐ。駐車場10台完備。

診療科目

内科、小児科、リハビリテーション科

菱川法之(ひしかわ・のりゆき)院長略歴
1971年 北海道大学理学部卒業(理学士)
1975年 東京大谷専修学院卒業(浄土真宗東本願寺派教師)
1982年 札幌医科大学医学部卒業
1982年 札幌医科大学第一内科入局
1989年 医学博士号(内科学)取得
釧路市立病院、札幌明和病院、赤平市立内科医長を経て
1992年 ひしかわ内科クリニック開設
■資格・役職

日本癌学会、日本内科学会、日本消化器病学会、ISOBM学会等
北海道保険医会常任理事、日本ユーラシア協会理事、日本蝶類学会理事、日本鱗翅学会評議員、北海道昆虫同好会会長

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