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ニキビ治療にやってきた生理痛と便通に悩む10代の女性

公開日:2011.09.13

ニキビ治療にやってきた生理痛と便通に悩む10代の女性

二井原さん(仮名)、10代女性。
ラクロス部で活躍する都内の大学生。日に焼けた浅黒い肌が健康的で、元気よく診察室へ入ってくる。はつらつとした性格で夏休みに行った海外旅行の話から始まった。
やせ型、154cm 48kg、BMI 20.2(BMI=体重kg/(身長m)2: 20<BMI<24)

外来診察室で・・・

二井原さん
「・・・それで小籠包が美味しかったの!友達と3人であっという間に30個を食べちゃって。あまりにも美味しいので、もう30個追加注文しちゃったんです!」
わたし
「それはそれは。楽しい台湾旅行だったようですね」
二井原さん
「うぅん、でもそのおかげで、できちゃいました」
と、片手で前髪をかき上げると額にはいくつもの紅いブツブツ。
わたし
「それが台湾土産ですね」

 ニキビの原因は様々で、特に額にできる場合は思春期や食生活の変化によることが多い。二井原さんに日頃の食事メニューを聞いてみると、朝はシリアル、昼は自分でお弁当を作って行くので野菜中心。夕食は家で家族と一緒に摂ることが多いという。

わたし
「体調についても伺いたいのですけれど。生理は順調ですか?」
二井原さん
「えぇ順調なんですけれど、生理痛がひどいんですよ」
わたし
「生理前の痛みですか?頭痛や足のむくみなどもありませんか?」
二井原さん
「はい、生理前になると頭痛と腹痛でいつも痛み止めを使っています」
わたし
「便通についても、少し悩んでいるんじゃないですか?」
二井原さん
「えっ?そうなんです。ヨーグルトを毎朝欠かさず食べるようにしているのに、便秘になってしまうんです」
わたし
「やはりそうでしたか」
二井原さん
「どうしてわかったんですか?」

 皮膚症状を診察する場合は、洗顔方法や化粧品、毛染め薬などによる直接的原因の確認が欠かせないが、月経との関係を考慮する必要もある。特に女性の体調は、月経周期に大きく関連する。月経前症候群(Premenstrual syndrome; PMS)は、月経前に認められる精神的・身体的症状をいう。イライラや頭痛、下腹部痛に肩こりなど、その症状※1は様々である。

※1日本産婦人科学会

処方

 わたしは、二井原さんに古典『金匱要略』※2にある桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん) に消炎排膿の効果があるヨクイニン※3を加えた「桂枝茯苓丸加ヨクイニン」を処方することにした。最初の2週間で便通が良くなり、次の2週間で徐々にニキビも消え、月経痛が軽くなり、足のむくみがなくなった。外来にやってくる二井原さんの笑顔が、以前よりも輝きを増したように感じた。

※2きんきようりゃく:3世紀初めに張仲景が記したとされている『傷寒雑病論(しょうかんざつびょうろん)』は、急性熱性病については『傷寒論(しょうかんろん)』、慢性病については『金匱要略(きんきようりゃく)』となって伝わった。
※3ヨクイニン:鳩麦の種子。「はと麦茶」として用いられている。薬徴(やくちょう;吉益東洞)には、浮腫を治すとある。

まとめ

  1. 皮膚疾患を診察するときは、食事の内容をよく聞く。
  2. 女性の健康を診察するときは、月経についてよく聞く。
  3. 桂枝茯苓丸加ヨクイニンは、「月経不順、血の道症、にきび、しみ、手足の荒れ」に適応。
今津嘉宏(いまづ・よしひろ)先生
芝大門 いまづクリニック 院長
1988年藤田保健衛生大学医学部 卒業、1991年慶應義塾大学医学部外科 助手、2005年恩賜財団東京都済生会中央病院外科 副医長、2009年慶應義塾大学医学部漢方医学センター 助教、2011年北里大学薬学部 非常勤講師、薬学教育センター社会薬学部門 講座研究員、2011年麻布ミューズクリニック 院長、2013年芝大門 いまづクリニック 院長

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