【大建中湯】慢性便秘症に伴う腹部膨満感、腹痛の軽減/論文の概要
論文の概要
- <論文タイトル>
慢性便秘症患者における漢方薬・大建中湯の効果 - Effect of traditional Japanese medicine, Daikenchuto (TJ-100) in patients with chronic constipation
Akira Horiuchi, et al. Gastroenterology Research. 2010; 3: 151-155.
- 目的
- 慢性便秘症の患者での、排便回数の改善と腹部膨満感と腹痛の軽減に対する、大腸刺激性下剤単独と漢方薬・大建中湯(TJ-100)併用の効果を比較する
- 試験デザイン
- 単施設ランダム化比較試験
- セッティング
- 長野の1医療機関
- 対象
- 慢性便秘症で以下の基準を満たす患者22名
- 1)大腸刺激性下剤・センノシド24~60mg/日を3ヵ月以上使用中
- 2)膨満感や腹痛などの腹部症状を有する
- 3)下剤なしでは排便回数が週3回未満
- 4)大腸内視鏡検査上は正常
- 5)腹部外科手術の既往がない
- 介入
- 観察期間は12週間。最初の4週間はそれまでのセンノシド単独投与を継続し(前治療期)、その後、センノシドを継続したままで、対象者をランダムに2群にわけ、大建中湯(TJ-100)7.5g/日(14名)または15g/日(8名)を6週間投与した(治療期)。次に、大建中湯のみを中止し2週間観察した(薬剤の残存効果を観察するため)。
- 主な評価項目
- 大建中湯投与0週*1、4週後、6週後、8週後*2 の排便回数、膨満感、腹痛、腹部症状、0週と6週の腸管内ガス量
*1センノシドを単独で投与している状態
*2大建中湯を中止し、センノシド単独に戻った状態 - 結果
-
大建中湯投与の2群では、性別、年齢、診断に至るまでに腹部症状があった平均期間に、差はなかった。
大建中湯併用によるセンノシド単独に対する排便回数の改善については、いずれの用量でも有意差が認められなかった。
VASスケール*3を用いて評価した腹部膨満感は、いずれの群も併用によりVASスコア中央値の有意な低下が認められ、大建中湯による改善効果が示された。
7.5g/日投与群:55→20*4(4週)→17*4(6週)→19*4(8週)
15g/日投与群:69→35*4(4週)→21*4(6週)→15*4(8週)*4P<0.01
腹痛も併用によりVASスコアが低下し、0週に対して15mg/日では4週・6週・8週で、7.5mg/日では4週で、有意に改善が認められた。
7.5g/日投与群:20→16*5(4週)→13(6週)→19(8週)
15g/日投与群:32→9*5(4週)→7*5(6週)→7*5(8週)*5P<0.05
この結果から、用量依存性の改善作用(用量が高い方が効果が高いこと)があることも示された。
腹部症状については、いずれの群も、消化器症状を評価するGSRSのスコアが、0週に対して4・6・8週のすべてで有意に低下しており、明らかな改善作用が示された。
腸管内ガス量は、ガス量を示すスコアGVSが0週に対し6週で有意に低下し、7.5mg/日群では0.049から0.042(p=0.02)、15mg/日群では0.040から0.036(p=0.016)となった。
治療期間中に、脱水、嘔吐、腸管出血、体重減少、頭痛などの明らかな臨床的副作用は認められなかった。*3VASスケール:自覚症状などを評価するスケールで、症状の程度を点数で表す。その点数をVASスコアと呼ぶ。通常はVASスコアが高い方が、症状が強い(悪化している)ことを示す。
- 結論
- 大建中湯と大腸刺激性下剤との併用は、慢性便秘症患者の膨満感と腹痛を軽減する。その作用の一部は、腸管内ガス量の減少によるものと考えられる。