がん治療に漢方薬を導入する医師は確実に増えている
対極的な考えだからこそ興味をもった「漢方」との出会い
芝大門 いまづクリニック
院長 今津嘉宏先生
私は外科医として、キャリアをスタートしたのですが、そこで治療していたがん患者さんの多くが副作用に悩んでいました。患者さんの抗がん剤や放射線治療の副作用に対して、外科学的な視点からさまざまなケースを考えていたのですが、なかなか解決策が見いだせない。そんな時に、多角的な視点から考えてみようと思い、自分がこれまで考えの中心にあった外科学と対極にあるものから学んでみようと思いました。そして、その対極にあったのが「漢方」でした。ところが、その当時の漢方医学の専門書は難しいことばかり書いてあって、全く理解できませんでした。でもそこであきらめず、漢方医学を実践している産婦人科の先生のところに教えを乞いにいったんです。その先生から「とにかく患者を見なさい」とアドバイスをいただき、その通り患者さんを数多く見ていると、どんな症状にどんな漢方薬が効くのか、がどんどん自分の中に知識として溜まっていくことが実感できたのです。そこで漢方医学の奥深さに興味をもって、今に至っています。本だけで学ぼうとしていたらあきらめていたかもしれません(笑)
科学的解明が進むことで改めて分かった先人の偉大さ
「証」や「気血水」などのさまざまな要因を総合的に判断することで体の状況を見極める漢方医学はどちらかといえば属人的な印象をお持ちの方も多いかもしれません。そして、漢方薬を科学的に解明しよう、とするのはそういった過去の先生方の努力を否定するのでは、と思う方もいらっしゃると思います。しかし、事実は全くの逆でした。漢方薬の科学的な解明がすすめばすすむほど、先人の先生方が「経験則」として患者さんに対して行っていたことの正しさ、確かさが次々と証明されたのです。先人の先生方の漢方薬に対する考え方を科学的に証明されることが続けば、漢方薬はもっともっと身近なものになると考えています。
がん治療に漢方薬を導入する医師は確実に増えている
上園先生による「漢方キャラバンセミナー」は2012年の1回目から参加していますが、会場にあつまった医師からの質問内容などを聞いていると、確実にがん治療に漢方薬を導入する医師は増えてくると確信しています。2012年はどちらかといえば初歩的な質問が多かったのに対し、2013年は、臨床現場のリアルな質問が飛び交い一つ先のレベルになったなと感じています。この動きがさらに加速し、全国に「がん治療と漢方が相談できる病院」が広がればいいなと感じています。
芝大門 いまづクリニック 院長