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「患者さんの生活の質の向上」も求められるこれからのがん治療

[がん治療と漢方] 2013/11/01

日本のがん治療の転換点となった「がん対策基本法」

上園保仁先生
国立がん研究センター研究所
がん患者病態生理研究分野
上園保仁先生

 2006年に成立した「がん対策基本法」と、それに基づき、がん対策を総合的かつ計画的に推進するために策定された「がん対策推進基本計画」。この2つが日本のがん治療を大きく変えるターニングポイントになりました。「がん対策推進基本計画」は基本方針の1つに「がん患者を含めた国民の視点に立ったがん対策の実施」を掲げており、また、重点的に取り組むべき課題の1つとして、がん患者とその家族が可能な限り質の高い生活を送るために「がんと診断された時からの緩和ケアの推進」が挙げられています。これらを背景に、2009年に、これまでの「がん予防」「早期診断」「治療法の開発」に加わる形で、「患者さんの生活の質の向上」を目的に設立されたのが、私が分野長をつとめる「がん患者病態生理研究分野」です。

副作用の辛さから、服薬を自己判断で中止する患者さんも

 がん患者病態生理研究分野では、がんの痛みと悪液質(がんになった時に食欲が衰え痩せていった状態)をいかに抑えるかを目的に研究を続けています。また、並行して、私が研究代表者となり、厚生労働科学研究費補助金(第3次対がん総合戦略研究事業)「がん治療の副作用軽減ならびにがん患者のQOL向上のための漢方薬の臨床応用とその作用機構の解明」の研究も行っています。がんそれ自体の痛みや悪液質と同様に患者さんのQOLを著しく低下させるのが、抗がん剤治療に伴う副作用です。患者さんの中には副作用の辛さから、抗がん剤の服薬を自己判断で中止してしまうほど、抗がん剤の副作用は辛いものなのです。そこで私はそれらの症状を緩和する決め手として漢方薬に着目しました。15年ほど前までは、漢方薬の効果についての信頼できるエビデンスは無かったのですが、ここ数年、漢方薬の信頼できる医学的・科学的検証が数多く発表され、注目度が高まっています。

年々強くなる医療者のがん患者さんに対する「想い」

 2012年から、がん治療に携わる医師を対象に、漢方薬が副作用の緩和にどれだけ効果があるかなどのエビデンスを伝える「漢方キャラバンセミナー」を全国で開催。今年も全国6か所で計7回行う予定です。初回の2012年と比較すると、「患者さんの生活の質を高めたい!」とする医療者1人ひとりの「想い」が強くなってきていて、聴く姿勢やセミナー終了後の質問内容の具体性に現れてきています。また、がんの治療はチーム医療で行うことがほとんどということもあり、2013年に薬剤師・看護師向けのセミナーを開催しましたが、それぞれほぼ満員になるくらいの皆さんにご参加いただき、がん治療における漢方医療の重要性の広まりを強く実感しています。今後もより一層の情報提供を行い、日本全国に「がん治療と漢方について相談できる病院」を増やしていきたいと思います。

上園保仁(うえぞの・やすひと)先生 国立がん研究センター研究所 がん患者病態生理研究分野 分野長

上園保仁先生

1989年産業医科大学大学院 修了、医学博士 取得、1991年米国カリフォルニア工科大学生物学部門 ポスドクとして留学、1992年産業医科大学薬理学講座 助手、2004年長崎大学大学院医歯薬学総合研究科・内臓薬理学講座 助教授、2010年独立行政法人国立がん研究センター研究所がん患者病態生理研究分野 分野長。
日本薬理学会編集委員会委員、北米神経科学会 会員、日本緩和医療薬学会 監事、
日本緩和医療学会 がん性疼痛ガイドライン作業部会委員、補完代替医療ガイドライン改定WPG員、日本癌学会 会員。

参考リンク:国立がん研究センター研究所 がん患者病態生理研究分野
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