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抑肝散(よくかんさん)

公開日:2021.03.30
カテゴリー:外来でよく使われる漢方薬 監修:井齋偉矢先生(日高徳洲会病院院長/サイエンス漢方処方研究会理事長)

構成生薬

作用の特徴

顕在化した怒りだけでなく、抑圧された怒りや精神神経症状にも有用

対象となる症状

解説

 抑肝散(よくかんさん) は、漢方で心や精神を示す「肝(かん)」の高ぶりを抑え、興奮やイライラ、筋肉の緊張などを鎮める働きを持つとされる漢方薬です。もともとは子どもの夜泣きやかんしゃくなど、いわゆる「疳の虫」が起こった際に用いられてきました。現在では、BPSDの改善をはじめ多くの精神系の病態への応用が広がっています。

 交感神経は、怒りなどの感情の高ぶりによって緊張状態になります。認知症における問題行動や手術をきっかけに起こる術後せん妄といった神経症状は、その交感神経の緊張が原因となって引き起こされると考えられています。抑肝散には、もともと身体に備わった「高ぶった感情を鎮める反応」を引き出す作用があり、それにより前述の神経症状を改善するとされています。

 ただし、抑肝散は非常に苦味が強いため、味に苦手意識を持つ人も少なくないようです。苦味があって服薬しづらいという場合は、漢方服薬ゼリーを用いたり、コーヒーや抹茶など苦味のある飲み物に混ぜたりすると、飲みやすくなることがあります。

エビデンス情報

アルツハイマー型認知症のBPSDに対する治療効果

 アルツハイマー型認知症患者20例を対象に、抑肝散と主に統合失調症の治療に用いられる非定型抗精神病薬リスペリドンでランダム化比較試験を行いました。BPSDの症状をスコア化し評価したところ、抑肝散はリスペリドンと同等の効果を示すことが認められました。なお、リスペリドン群では鎮静、疲労倦怠感、傾眠、便秘の有害事象を認めたが、抑肝散群では有害事象は認められませんでした1)

術後せん妄の抑制

 心臓大血管手術を施行した患者30例に対しランダム化比較試験(封筒法)を行い、術前5~7日から手術日を除き退院まで抑肝散を服用した抑肝散投与群と非投与群において、せん妄の状態についてスケールを用いて評価しました。その結果、投与群において医師評価では現実感覚、妄想、興奮、気分の変動の4項目で、看護師評価では幻覚、興奮、気分の変動の3項目で有意差を認めたほか、総合評価でも医師評価、看護師評価ともに改善する傾向が見られました2)

参考

  • 1) 古橋裕子. 漢方医学 2010; 34: 120-121
  • 2) 高瀬信弥. 漢方医学 2010; 34: 132-134

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