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大建中湯(だいけんちゅうとう)

公開日:2021.03.30
カテゴリー:外来でよく使われる漢方薬 監修:井齋偉矢先生(日高徳洲会病院院長/サイエンス漢方処方研究会理事長)

構成生薬

作用の特徴

腸閉塞やイレウスに対する術後早期の予防的投与や治療には有用だが、長期服用による予防効果は認められない

対象となる症状

解説

 大建中湯(だいけんちゅうとう) は日本で最も多く使われている漢方薬ですが、一般的にはあまりなじみがないかもしれません。それは大建中湯が、特定の病気の治療にのみ用いられることが関係しているでしょう。

 大建中湯は、中国後漢末期の官僚であり医師である張仲景(ちょうちゅうけい)によって、その原型が成立したとされる中国の古典医学書『金匱要略(きんきようりゃく)』を出典としています。腸管運動亢進作用や腸管血流増加作用、抗炎症作用などの薬理作用があり、主に腹痛や腹部膨満感などの下部消化管症状に用いられます。具体的には、何らかの原因によって、腸の内容物の流れが止まってしまっている状態である「イレウス」や「腸閉塞」に伴う消化器症状などです。大建中湯は、特に腸の手術をした後24~72時間以内に発生することが多い、腸管の麻痺(まひ)により収縮運動が妨げられる「麻痺性イレウス」、腸管が癒着するなどして腸の内容物の通過障害が起こる「癒着性腸閉塞」などに対し外科手術後に多く使われています。ただし、術後早期の予防や治療には有用ですが、退院後の長期服用による予防効果は認められていません。また、腸管のぜん動運動促進薬や下剤の一種のような使い方は避けるべきです。処方された薬が余っていても、自己判断で服用しないようにしましょう。

エビデンス情報

術後癒着性イレウス(腸閉塞)に対する有効性

 術後に癒着性イレウス(腸閉塞)を発現し、担当医がロングチューブを必要とすると判断した患者30例(一部除外あり)を対象に、ランダム化比較試験(封筒法)を行い、大建中湯2.5gを1日3回5日以上服用した大建中湯投与群と非投与群において、自覚症状 (腹痛、悪心・嘔吐、下痢、全身倦怠感、食欲不振、腹部膨満感)、X 線像、排便・排ガスまでの時間、イレウス管抜去や経口摂取開始までの日数、手術への移行率、主治医判定によるイレウス改善度、腹部所見・自覚症状改善度、全般改善度、有用度を評価しました。その結果、非投与群に比べ、投与群で腹部膨満感、悪心・嘔吐の改善度、自覚症状について、有意に高い改善度が示されました。また、主治医判定によるイレウス改善度は投与群で94.4%、非投与群で66.7%であり、こちらも投与群で高い結果となりました。なお、副作用は認められませんでした1)

術後イレウスに対する治療効果と術後状態の改善に対する有効性の評価

 腹部手術後患者154例のうち、術後イレウスを発症した患者24例を対象に、ランダム化比較試験を行い、大建中湯を1日15g14日間服用した大建中湯投与群とプラセボ群においてイレウスに対する手術の有無、イレウス再発率を評価したところ、プラセボ群に比べ投与群で術後イレウスの手術の頻度が有意に低下したという報告があります。さらに、統計学的には有意ではないものの、投与群ではイレウス再発率を低下させる傾向がみられました2)

参考

  • 1) 久保宣博ほか. Progress in Medicine 1995; 15: 1962-1967
  • 2) Itoh T, et al. J Int Med Res 2002; 30: 428-432

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