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1剤で複数の病気を改善できる漢方薬

公開日:2021.01.25
カテゴリー:漢方薬とは 監修:秋葉哲生先生(あきば伝統医学クリニック院長)

 西洋医学の薬剤は、基本的に精製された合成品による単一成分で、「血圧を下げる」「細菌を殺す」「熱や痛みを取る」など、1つの症状や病気に対して、強い効果を発揮します。一方で漢方薬は、組み合わせた天然の生薬が複合的に作用して、病気やケガを治す力(自然治癒力)を高め、体を整えていきます。

 「複数の生薬が配合されている」ということはすなわち、「1つの漢方薬でさまざまな症状を治す効果がある」と言い換えることもできます。

 例えば、食欲不振など胃の不調時に用いられる六君子湯(りっくんしとう)は、人参(にんじん)、白朮(びゃくじゅつ)、茯苓(ぶくりょう)、半夏(はんげ)、陳皮(ちんぴ)、大棗(たいそう)、甘草(かんぞう)、生姜(しょうきょう)という8つの生薬で構成されています(図)。
 胃腸の働きをよくする「四君子湯(しくんしとう)」に、吐き気やむかつき、嘔吐などに効果のある「二陳湯(にちんとう)」を加えたもので、消化器系の機能を高める作用を持つ漢方薬です。

 この場合、胃腸の働きがよくない人に対しては人参、白朮、茯苓、甘草の組み合わせが作用し、胃腸の働きを改善する効果が得られます。これは四君子湯の効能と同じです。しかし吐き気や胃のむかつきといった症状がある人に対しては、陳皮、半夏、茯苓、生姜、甘草の組み合わせが作用し、胃の不快感を抑える効果が得られます。これは二陳湯の効能です。また、茯苓、半夏、生姜という組み合わせが働けば、つわりの名薬として知られる小半夏加茯苓湯(しょうはんげかぶくりょうとう)の効能を得ることもできます。六君子湯という1つの漢方薬で、いくつもの異なる症状を改善することができるのです。

図 六君子湯の生薬構成
図 六君子湯の生薬構成

 西洋医学の薬剤は、症状のある人にもない人に対しても、服用すれば同じ作用が現れますが、漢方薬の作用はそれとは異なり、患者さんの症状と呼応した時だけ、薬剤の作用をするという働きを示します。このように、1剤で多様な効果をもたらすという点も、漢方薬の大きな特徴のひとつです。

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