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喉の異物感が気になり来院した50代女性

公開日:2013.11.13

喉の異物感が気になり来院した50代女性

 50代の女性が喉のつまりを訴えて来院した。来院する3か月ほど前に非常にハードな生活をおくったらしく、その1か月後から咽頭(喉のあたり)に、異物感(何か物がつまっているような感じ)を覚えるようになったとのこと。仕事中など何かに集中しているときは咽頭の異物感は気にならなくなるのだが、休んでいるとやはり気になると言う。耳鼻科を受診し検査を受けたが、何も問題はないと言われ、胃薬や睡眠導入剤、半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)、六君子湯(りっくんしとう)などの処方を受けたが、いま一つといった感じであった。
 咽頭の異物感は漢方用語で咽中炙臠(いんちゅうしゃれん)と言われる。これは“喉の辺りに炙った肉がつまったような感じ”ということである。咽中炙臠があるときによく処方される漢方薬は半夏厚朴湯で、この患者さんも耳鼻科の先生から半夏厚朴湯を処方されていたが、同時に六君子湯も処方されていた。そこで処方をシンプルにするために六君子湯を中止してもらい、エキス剤の半夏厚朴湯1回2.5グラム1日3回のみを毎食前内服するように処方した。すると2週間後の再診の際には「喉の感じが半分くらい楽になってます」と言ってくれた。しかし「仕事が忙しくてイライラする事が多いし、便通も良くない。この薬はそういった症状には効かないですかね…」とのこと。そこで半夏厚朴湯はそのまま続けてもらい、便通に有効でありかつ心も穏やかにしてくれて、半夏厚朴湯との相性も良い大柴胡湯(だいさいことう)のエキス剤を追加することにした。半夏厚朴湯には気持ちを落ち着かせる成分は入っているが下剤の成分は入っていないからである。また半夏厚朴湯と、気持ちを落ち着かせる作用のある小柴胡湯(しょうさいことう)を足し合わせた柴朴湯(さいぼくとう)というエキス剤も存在するが、柴朴湯や小柴胡湯にも下剤である大黄という生薬が含まれない。今回は、本人が「便通も良くしたい」という希望があるため大黄が含まれている大柴胡湯を選択した。
 余談であるが実はこの大黄は非常に優秀な生薬である。下剤としての作用は勿論のこと、気持ちを落ち着かせる作用や炎症を沈める作用、抗菌作用など色々な作用をもっている。漢方用語でいう“血”の異常の治療薬である駆瘀血薬(くおけつやく)には大黄が含まれることがしばしばあり、気を晴らしたりもする。また抗生物質が存在しなかった時代の虫垂炎(盲腸)の治療には大黄牡丹皮湯(だいおうぼたんぴとう)が用いられたようだが、これは大黄の抗菌作用、抗炎症作用に期待していたものと思われる。「漢方薬の有効性を増すためには便秘が大敵」と師に教わったが、これは「大黄を上手に使いなさい」という意味なのであろうと思っている。
 患者さんの話に戻るが、大柴胡湯を1回2.5グラム1日3回毎食前に処方し半夏厚朴湯と一緒に飲んでもらった。すると2週間後、「喉のつまった感じがほとんどなくなりました。半夏厚朴湯だけのときよりも2つを合わせたときの方が調子良いみたいです。イライラも便通も大丈夫です」と喜んでくれた。その後症状が治まり内服は終了した。
 この患者さんが耳鼻科で半夏厚朴湯の処方を受けたときに効果を感じられなかった理由は、はっきりとは分からない。ただ単に半夏厚朴湯が効き始めるのに時間がかかったのかもしれない。しかし六君子湯を中止した後から内服の効果を感じるようになっているので、この患者さんにとっては六君子湯と半夏厚朴湯の組み合わせが合っていなかったのかも知れない。内服中の漢方薬に別の漢方薬を追加する場合、昔から相性が良いとされる組み合わせが幾つかある。相性が良い組み合わせならば有効性が増すことを良く経験する。しかし漢方薬同士を組み合わせることで両方の効果が弱くなってしまう可能性もあるため、注意が必要である。外来に来る患者さんの中には市販の便秘用薬剤を飲んでいる方もいらっしゃるが、市販の便秘用薬剤の中に生薬が入っていて漢方薬に近い物であった場合には、その薬をしばらく中止してもらうこともしばしばある。

堀口定昭(ほりぐち・さだあき)先生
愛世会愛誠病院・下肢静脈瘤センター
2002年帝京大学医学部卒業、2008年より愛誠病院にて血管外科医として勤務しながら整形外科と漢方を学ぶ。
血管外科の外来で漢方薬を使うようになってから、本格的に漢方を学ぶようになり、2010年より血管外科と漢方内科を兼務。
日本外科学会専門医、日本脈管学会専門医。

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