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漢方を活かす食養生 No.8 家庭でできる血糖コントロール

公開日:2020.04.06
カテゴリー:漢方ニュース
 食養生とは、健康を保ち長寿を全うするために、日常よく使う食材の性質や働きを知り、健康のために効果的な食生活を送ることです。食養生では、食物を体を冷やす順に寒、涼、平、温、熱で表す「五性」という考え方と、酸味、苦味、甘味、辛味、塩味に分ける「五味」という考え方に基づいて食材をとらえます。
 ここでは、食養生を実践するためのレシピや、食養生と漢方の関係について、水嶋クリニック院長で東洋医学研究所所長の水嶋丈雄先生が解説します。

 高血糖の改善には、生活習慣の見直しや適度な運動などによる血糖のコントロールが大切です。高血糖の原因となる食事にも十分気を付ける必要があります。食品がもっているGI値(グリセミック・インデックス)という「摂取した食品が体内で糖に変わり血糖値が上昇するスピードを測った値」に気を配り、血糖値をコントロールするための食事療法の例を紹介します。

 34歳の男性が、人間ドックで高血糖を指摘されたため来院されました。受診時、身長170cm、体重82kg、糖尿病の診断基準となるHbA1cは7.0%でした。漢方薬と食事療法で治したいとのこと。便通はやや軟かく、下肢の冷えはないといいます。

 まず体重減を図るために大柴胡湯(だいさいことう) を飲んでいただくこととしました。

 漢方では苦味の食品と塩味の食品が体内の余分なものを排泄するといわれており、現代医学的ではマグネシウムや亜鉛などの微量元素が膵臓のインスリン細胞のオートファジーを助けるとされています。例えば、タラの芽やよもぎ、うど等の山菜や、わかめやひじきなどの海藻類です。

 さらに甘味成分では、GI値を指標にして食事を作るといいとされています。GI値とは食品が体内で糖に変わり血糖値が上昇するスピードを示したもので、ブドウ糖を摂取したときを100として表し、低ければ低いほど血糖値の上昇が遅くなり、インスリン分泌も抑えられるという指標です。

 特に野菜は、低GI値の食品ですが、野菜の中でも「じゃがいも90」「人参80」「山芋75」は高い方に含まれるため避けたい食品です。それ以外の野菜は60以下で、ぜひ食べたいものになりますが、特に「えのき29」「しめじ27」「なめこ26」など、きのこ類は積極的に食したいものになります。

 さらに、「キャベツ26」「ピーマン26」「だいこん25」「アスパラガス25」「ブロッコリー25」「なす25」「きゅうり23」「レタス23」「もやし22」「ほうれん草15」などの野菜はGI値の低いものになります。

 穀類はGI値が高いものが多く「食パン91」「うどん85」「白米81」「ラーメン73」「パスタ65」で控えたいものになります。代わりに食べるとよい穀類とGI値は「おかゆ57」「玄米55」「そば55」などになります。

 果物はGI値の低いものが多いですが「パイナップル65」「黄桃63」「スイカ60」はやや高いほうになります。その他「バナナ55」「巨峰50」「メロン41」「桃41」「柿37」「リンゴ36」「梨32」「オレンジ31」「いちご29」など相対的にGI値は低くなります。

 肉類や魚介類はGI値が高いものは特になく「牛肉(もも)46」「豚肉(もも)45」「鶏肉(もも)45」「しじみ44」「はまぐり43」「アジ40」「甘海老40」「イカ40」「マグロ赤身40」などです。

 GI値が高く、気をつけたいのは甘い食べものです。

 「チョコレート91」「大福餅88」「ドーナツ86」「ショートケーキ82」「こしあん80」「クッキー70」「カステラ69」「アイスクリーム65」などは注意が必要です。

 また、調味料でも「砂糖(上白糖)100前後」「はちみつ88」「メープルシロップ73」「こしょう73」は控えたほうがいい食品です。

 以上を踏まえて、高血糖の改善を目指し、以下のような食事指導を行いました。

アスパラご飯

材料
五分づき米 2合
昆布 10g
小さじ1/2
薄口しょうゆ 大さじ1
大さじ3
アスパラガス 200g
作り方
  1. 昆布を細くハサミで切り30分水に浸す。
  2. 米を洗い、塩・薄口しょうゆ・酒・昆布の浸し汁を加え、水加減をし、そこに昆布を加え、30分おいてから炊く。
  3. アスパラは2cmに切ってゆで、炊き上がったご飯に混ぜる。
  4. ※詳しい作り方は文献1)に記載されています。

 そして、もう一品。

白滝の大玉煮

材料
白滝 400g
鶏ももひき肉 100g
パン粉 大さじ2
200ml
煮干し 3g
◇A
 しょうゆ 大さじ2
 みりん 大さじ2
 酒 大さじ2
竹の皮 適量
作り方
  1. 白滝は洗い、新しい水からゆっくりゆでて、沸騰してから7分くらいたったら、ざるにあける。
  2. ひき肉にパン粉を加えて練り、4個にまるめておく。
  3. ひき肉を芯に、4等分した白滝をぐるぐる丸く巻き、竹の皮を細く切ったひもで十文字にしばる。
  4. 鍋に水・煮干しを入れて3を煮る、調味料Aを加えて味がしみるまで煮ふくめる。
  5. ※詳しい作り方は文献1)に記載されています。

 このような食事を3か月続けていただいたところ、体重は4kg減少し、HbA1cは6.2%になりました。男性はその後も、漢方薬と食事療法を続けています。

文献
  1. 水嶋丈雄ほか. 食べて元気になる 漢方ごはん. 信濃毎日新聞社, 2008, p.89-90.

(本記事は医療関係者向けサイト漢方スクエアに掲載された記事を元に、一般読者向けに再編集しております)

水嶋丈雄(みずしま たけお)先生
医療法人 水嶋クリニック 院長/NPO法人 東洋医学研究所
医療法人水嶋クリニック院長、NPO法人東洋医学研究所所長。
1981年大阪医大卒。1978年より麻酔科兵頭教授に師事、鍼灸治療を学ぶ。1998年長野県佐久市内に水嶋クリニック・東洋医学研究所開業。2010年WHO伝統医学部門委員、日本東洋医学会評議員、2012年日本プライマリケア学会認定医、2014年厚労省保険部会外部諮問委員。著書に『花粉症・アレルギーを自分で治す70の知恵』(主婦の友社)、『鍼灸医療への科学的アプローチ』(三和書籍)など多数。

食べて元気になる 漢方ごはん
解説:水嶋丈雄
料理:横山タカ子
撮影:山浦剛典
発行社:信濃毎日新聞社(https://shinmai-books.com/)

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