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漢方を活かす食養生 No.1 病気と食物の相性を知っておこう

公開日:2020.04.02
カテゴリー:漢方ニュース

 江戸時代の儒学者、本草学者である貝原益軒(1630-1714)により著された養生(健康、健康法)についての指南書『養生訓』(1712)には、食養生のことが述べられています。食養生とは、健康を保ち長寿を全うするために、日常よく使う食材の性質や働きを知り、健康のために効果的な食生活を送ることです。

 また中医学では食事は病気治療の基本となっています。ここでは食養生と漢方の関係をご紹介します。

 『養生訓』には、食物には体を冷やす順に寒、涼、平、温、熱で表す「五性」という考え方があります(図1)。たとえば地中に育つ植物は温、地上に育つ食物は涼という具合です。これは現代医学にはない考え方です。

食物の五性
図1 食物の五性

 また、もうひとつ「五味」という考え方があります。すべての食物を酸味、苦味、甘味、辛味、塩味に分けて考えます。正確にはさらに淡味と渋味があります。酸味は「肝」を強くし、苦味は「心」を強くし、甘味は「脾」つまり胃腸を強くし、辛味は「肺」を強くし、塩味は「腎」を強くするという古典に由来する考え方です。

 もちろん漢方薬もほとんどが食物由来ですから、これらの考え方が原則になってその処方を構成しているのです。それらをひとつずつ解説して漢方薬と食物の関係を述べてみたいと思います。

 これらをふまえて、まず今回は「肝」の食養生をご紹介します。肝機能障害にはよく小柴胡湯(しょうさいことう) などの柴胡剤という漢方薬が用いられます。これはミシマサイコという材料を用いますが、柴胡は苦味で涼です。さらにコガネバナである黄芩は苦味で寒です。また、薬用人参である人参は甘味で温です。カラスビシャクである半夏は辛味で温ですね。さらに生姜は辛味で温、甘草は甘味で平、芍薬は苦味で涼になります。

 つまり主薬である柴胡の作用を強くするには酸味の食品をとるとよいのですが、逆に柴胡の働きすぎを軽減するためには塩味のものをとるとよいということになります。

 酸味の食品は米酢、梅肉、酢、リンゴ、すもも、あんず、かりん、ヨーグルト、ゆず、だいだい、すだち、レモンなどです。肉類では豚肉がそこに分類されます。

 肝の食養生におすすめのレシピを紹介します。

五味子のはちみつドリンク

材料
ぬるま湯 400ml
五味子 大匙3杯
はちみつ 好みで
作り方
  • 五味子をさっと洗い、ぬるま湯に半日ほど浸す。コップに注ぎ、好みではちみつを加える。

 五味子は漢方薬の材料にもなる果実で、漢方薬店で買えます。もちろん長野県では自生していますので採取される方もいます。成分のゴミシンAが肝細胞の保護に働くことが知られています。

梅の白板昆布包み

材料
梅の甘酢漬け 10個
白板昆布 30cm
さしす酢 100cc
赤しそのさしす酢漬け 5枚
作り方
  • ※詳しい作り方は文献1)に記載されています。

 なお、さしす酢は酢・大さじ4、砂糖小さじ4、塩小さじ1で作り置きができます。酸味で温性の酢をうまくつかった料理で肝機能保護に有用です。ただしウイルス性肝炎の場合には鉄分の多い食品は控えるようにしましょう。

 もうひとつ、モロコシおこわを紹介します。

モロコシおこわ

材料
もち米 2合
150ml
モロコシの実 1カップ
モロコシの皮 2本分
モロコシのひげ 2本分
作り方
  • ※詳しい作り方は文献1)に記載されています。

 モロコシは甘味で平ですが、ひげを加えることで天然のインターフェロン(IFN)が賦活できます。肝臓の保護作用に働きます。

文献
  1. 水嶋丈雄ほか. 食べて元気になる 漢方ごはん. 信濃毎日新聞社, 2008, p.94-95.

(本記事は医療関係者向けサイト漢方スクエアに掲載された記事を元に、一般読者向けに再編集しております)

水嶋丈雄(みずしま たけお)先生
医療法人 水嶋クリニック 院長/NPO法人 東洋医学研究所
医療法人水嶋クリニック院長、NPO法人東洋医学研究所所長。
1981年大阪医大卒。1978年より麻酔科兵頭教授に師事、鍼灸治療を学ぶ。1998年長野県佐久市内に水嶋クリニック・東洋医学研究所開業。2010年WHO伝統医学部門委員、日本東洋医学会評議員、2012年日本プライマリケア学会認定医、2014年厚労省保険部会外部諮問委員。著書に『花粉症・アレルギーを自分で治す70の知恵』(主婦の友社)、『鍼灸医療への科学的アプローチ』(三和書籍)など多数。

食べて元気になる 漢方ごはん
解説:水嶋丈雄
料理:横山タカ子
撮影:山浦剛典
発行社:信濃毎日新聞社(https://shinmai-books.com/

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