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漢方を活かす食養生 No.9 アレルギー性鼻炎の食事指導

公開日:2020.04.24
カテゴリー:漢方ニュース
 食養生とは、健康を保ち長寿を全うするために、日常よく使う食材の性質や働きを知り、健康のために効果的な食生活を送ることです。食養生では、食物を体を冷やす順に寒、涼、平、温、熱で表す「五性」という考え方と、酸味、苦味、甘味、辛味、塩味に分ける「五味」という考え方に基づいて食材をとらえます。
 ここでは、食養生を実践するためのレシピや、食養生と漢方の関係について、水嶋クリニック院長で東洋医学研究所所長の水嶋丈雄先生が解説します。

 アレルギー性鼻炎の改善には、小児の場合は小腸免疫が、成人の場合はアレルギーに関わるIgE抗体とTh2リンパ球の値を低下させ、全体のバランスを整えることが重要です。これらを考慮した食材と実際の食事指導を紹介します。

 30代女性が、鼻がクシャクシャする、目がかゆい、などを訴え来院されました。身長は155cm、体重38kgとやせ型。漢方的診断を行ったところ、寒くなると症状がひどくなる「寒熱夾雑(かんねつきょうざつひ)型アレルギー性鼻炎」と考え、苓甘姜味辛夏仁湯(りょうかんきょうみしんげにんとう) を処方しました。さらに食養生を教えてほしいと希望されました。

 アレルギーの原因となる物質をアレルゲンといいますが、身の回りには花粉やダニ、食べものなど、多くのアレルゲンが存在しいています。このアレルゲンが体内に入ると、異物とみなして排除しようとする免疫機能が働き、IgE抗体が作られます。この状態を感作といいます。いったん感作が成立した後に、再びアレルゲンが体内に入ると、アレルゲンとIgE抗体がくっつき、アレルギー症状が引き起こされます。最近では、皮膚の表面の細菌がアレルゲンになるケースや、皮膚のセラミドが不足して発症するケースがあることもわかってきています。また、小児では小腸の免疫が重要だとも言われています。

 小腸の免疫には、オリゴ糖などの食品や、オメガ3脂肪酸を含む食品が重要で、小腸フローラを整えることで、食物アレルギーが改善される場合があります。オリゴ糖は、味噌やしょうゆ、はちみつ、玉ねぎ、ごぼう、バナナ、リンゴ、サトウキビ、薬用人参、アロエなどに含まれています。また、オメガ3脂肪酸が多い食品は、DHAを含む魚介類、ナッツ類や緑黄色野菜、えごま油、オリーブオイルなどに豊富に含まれています。

 そして、アレルギーの本体であるTh2リンパ球を低下させるものは発酵食品やネバネバ食品です。Th2リンパ球などの好酸球を低下させる食品はスカベンジャー料理とも呼ばれ、活性酸素を低下させるものです。甜茶が一時ブームになりましたが、これは直接的にヒスタミンを抑制するものです。これらを漢方医学的に考えると、酸味は発酵食品、苦味はきのこ類、甘味は抗活性酸素のスカベンジャー、辛味はスカベンジャーを補佐するビタミン類、塩味はミネラルと考えられるので、五味をバランスよく食することがよいといわれます。つまり、アレルギーの改善には、オメガ3脂肪酸を含む食品と発酵食品やネバネバ食品を食事に取り入れることがよいと考えられます。そこで、以下のような食事指導を行いました。

夏野菜の揚げびたし

材料
ピーマン 4個
なす 4個
かぼちゃ小 1/4個
パプリカ 2個
ゴーヤー 1本
(エゴマ) 適量
玉ねぎ 1個
みりん 100ml
しょうゆ 100ml
作り方
  1. ピーマンは半分に切って種を取る。なすは2つに切って皮目に3本切り込みを入れ、さっと洗う。かぼちゃは種をとり薄切りにする。ゴーヤーは縦半分に割って種を取り、一口大に切る。パプリカも同様に切る。
  2. 油を熱し、素揚げにする。横に熱湯を沸かし、揚げたはしから熱湯の鍋にいれ油を抜く。
  3. 玉ねぎはフードプロセッサーで細かく砕き、煮切ったみりんとしょうゆを混ぜる。
  4. 油抜きした野菜をタレに漬け込む。
  5. ※詳しい作り方は文献1)に記載されています。

 さらに大葉を加えると、TNF(腫瘍壊死因子)の産生を少なくしながら、フラボノイドの一種であるルテオリンの抗酸化作用や、オメガ3脂肪酸の増加作用により、腸管免疫にも効果が期待できます。レンコンを加えるとIgE抗体の抑制と、レンコンのでんぷんにはアレルギーの反応を抑える効果があります。玉ねぎはオリゴ糖を含み、メラノイジンが腸管免疫を強くさせ、抗好酸球効果もあります。

さらに、もう一品。

アマランサスの炊き込みご飯

材料
五分づき米 2合
アマランサス 大さじ3
作り方
  1. アマランサスは洗って、一晩水につけておく。細かいので、流れないように気をつける。
  2. 五分づき米と一緒に炊く。水加減は2合の水分でよい。
  3. ※詳しい作り方は文献1)に記載されています。

 アマランサスとはペルー原産の植物で、近年、鉄分やカルシウムなどの豊富な栄養価を含む食物として注目を浴びている雑穀のことです。アマランサスにはTh2を抑制する力があり、アレルギーには適した食品です。アマランサスの葉もお浸しで食べることができます。

 以上のようなアマランサスや緑黄色野菜に、大葉・玉ねぎ・レンコンを用いた食事を続けていただきました。さらに、発酵食品のヨーグルトやネバネバ食品のおくらや長芋を積極的に食べていただいたところ、1か月後には鼻水は消失しました。苓甘姜味辛夏仁湯は廃薬としましたが、驚くことに翌年はアレルギー症状が出現しませんでした。

文献
  1. 水嶋丈雄ほか. 食べて元気になる 漢方ごはん. 信濃毎日新聞社, 2008, p.71.

(本記事は医療関係者向けサイト漢方スクエアに掲載された記事を元に、一般読者向けに再編集しております)

水嶋丈雄(みずしま たけお)先生
医療法人 水嶋クリニック 院長/NPO法人 東洋医学研究所
医療法人水嶋クリニック院長、NPO法人東洋医学研究所所長。
1981年大阪医大卒。1978年より麻酔科兵頭教授に師事、鍼灸治療を学ぶ。1998年長野県佐久市内に水嶋クリニック・東洋医学研究所開業。2010年WHO伝統医学部門委員、日本東洋医学会評議員、2012年日本プライマリケア学会認定医、2014年厚労省保険部会外部諮問委員。著書に『花粉症・アレルギーを自分で治す70の知恵』(主婦の友社)、『鍼灸医療への科学的アプローチ』(三和書籍)など多数。

食べて元気になる 漢方ごはん
解説:水嶋丈雄
料理:横山タカ子
撮影:山浦剛典
発行社:信濃毎日新聞社(https://shinmai-books.com/)

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