漢方を活かす食養生 No.2 胃腸の働きを助ける

[漢方ニュース] 2020/04/02
 食養生とは、健康を保ち長寿を全うするために、日常よく使う食材の性質や働きを知り、健康のために効果的な食生活を送ることです。食養生では、食物を体を冷やす順に寒、涼、平、温、熱で表す「五性」という考え方と、酸味、苦味、甘味、辛味、塩味に分ける「五味」という考え方に基づいて食材をとらえます。
 ここでは、食養生を実践するためのレシピや、食養生と漢方の関係について、水嶋クリニック院長で東洋医学研究所所長の水嶋丈雄先生が解説します。

 今回は胃腸疾患です。健康を維持・回復するためには、胃腸がうまく機能していないとエネルギーの補給不足になり、気力も沸きません。胃腸の働きを助け、高めるための工夫を紹介します。

 30代の女性が、食後の腹部膨満を主訴として来院されました。上部消化管検査では異常なく、血液検査でも異常を認めず、機能性胃腸炎と診断しました。便通は順調でした。

 漢方薬は六君子湯(りっくんしとう) を考えましたが、腹部の冷えが著明なため人参湯(にんじんとう) を処方しました。

 人参湯の構成生薬のうち人参は甘味・温性で、蒼朮は苦味・温性、また乾姜は辛味・温性で胃腸を温める成分が特徴的です。食事も甘味を中心に身体を温める作用の温性・熱性の作用のものを指導いたします。例えば、うどん・うなぎ・まぐろ・あじ・エビ・羊肉・なつめ・栗・キャベツ・かぼちゃ・やまいも・鶏肉・かまぼこ・にんにく・はちみつ・桃などです。

 甘味で平性のものは、ごま・小麦・小豆・大豆・砂糖・米・牛肉・鯛・白菜・とうもろこし・ブドウなどです。

 また、あまり温めすぎないように、甘味で涼性を少し加えるのもよいといわれます。例えば、牡蠣・はとむぎ・牛乳・なす・きゅうり・トマト・レタス・わらび・柿・みかん・すいか・梨・とうふ・こんにゃくなどですね。

 もともと、甘味のものは人間が食するようにできているので、穀類・野菜類・肉類・イモ類など、ふだん食するものが多く含まれます。体を温めるものは消化管の蠕動運動を活発にするのですが、便秘傾向のある人はやや冷やすものを加えると快便になります。食物繊維の観点からいうと水溶性よりも非水溶性の食物繊維を多くとることが肝要です。甘味で涼性の食品は非水溶性食物繊維が多いのです。胃腸を強くする最強食品はとろろです。長芋、自然薯、菊芋などを用います。その中でも今回は、長芋のレシピを紹介いたします。

とろろの野菜サラダ

材料
長芋 500g
にんじん 25g
だいこん 100g
細ねぎ 100g
にら 100g
もやし 200g
白身魚の刺し身 250g
だしつゆ 適量
作り方
  1. にんじん、だいこんは細い千切りにする
  2. 細ねぎ、にら、もやしはそれぞれゆでて、ねぎ、にらは5cmに切る
  3. 長芋をすりおろし、12に薄くスライスした刺し身を加え、混ぜる
  4. だしつゆをお好みでかける
  5. ※詳しい作り方は文献1)に記載されています。

 長芋・にんじん・にら、と体を温める成分が豊富な食材で胃腸の冷えをとり、まただいこんや長芋のジアスターゼの働きで消化吸収を助けてくれます。今回の症例は冷えが著明ですので、冷えをとり胃腸を強くする食品として最適です。だいこんやもやしは胃腸を冷やしますので、冷え対策には温野菜にする工夫も大切です。長芋はだいこんの4倍のジアスターゼを含むといわれます。もうひとつ長芋の料理を紹介します。

 白米は性質が平性で主食にしやすく、加えたものの性質がよく表れます。それゆえ薬膳はおかゆ料理が多いのです。長芋は胃腸を温め、麦はやや冷やす方向ですが、全体には温める力をもっています。また麦を加えることで便通がよくなります。

さつまいものゆず煮

材料
さつまいも 400g
ゆず 1個
砂糖 大さじ2
小さじ1/3
クコの実 大さじ1
作り方
  1. さつまいもは皮をよく洗い、1cmの輪切りにして水に放ち10分置く
  2. 鍋に1のさつまいもを入れひたひたに水を加え、さらに塩を入れて煮る
  3. さつまいもの色が変わってきたら、ゆずの薄切を加える
  4. 柔らかくなったら砂糖を加える。ほっくり煮上がるころ水分がなくなるのがよい。水分がなくなってもまださつまいもが煮えない場合には、少し水分を加える。最後にあらったクコの実を加えて味を含ませる。
  5. ※詳しい作り方は文献1)に記載されています。

 さつまいもは甘味で温性の性質があります。あまり温めたくない場合にはじゃがいもを用います。クコは酸味の食品でさつまいもの甘味が強くなりすぎないように加えます。これを相克関係といいます(図1)。もちろん省略しても構いません。

図1 五味の相生関係と相克関係
図1 五味の相生関係と相克関係

 これらを主食に長芋を加えるように指導して食事を3か月とってもらったところ、胃腸の冷えが取れ、便通もより快適になりました。「いままで便通はよいと思っていたのが、こんなに快便になるんだと感じた」といいます。それに伴い食後の腹部膨満感も解消いたしました。

文献

  • 1)水嶋丈雄ほか. 食べて元気になる 漢方ごはん. 信濃毎日新聞社, 2008, p.21-23.
漢方を活かす食養生
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(本記事は医療関係者向けサイト漢方スクエアに掲載された記事を元に、一般読者向けに再編集しております)

水嶋丈雄(みずしま たけお)先生
医療法人 水嶋クリニック 院長/NPO法人 東洋医学研究所

医療法人水嶋クリニック院長、NPO法人東洋医学研究所所長。
1981年大阪医大卒。1978年より麻酔科兵頭教授に師事、鍼灸治療を学ぶ。1998年長野県佐久市内に水嶋クリニック・東洋医学研究所開業。2010年WHO伝統医学部門委員、日本東洋医学会評議員、2012年日本プライマリケア学会認定医、2014年厚労省保険部会外部諮問委員。著書に『花粉症・アレルギーを自分で治す70の知恵』(主婦の友社)、『鍼灸医療への科学的アプローチ』(三和書籍)など多数。

水嶋クリニック

食べて元気になる 漢方ごはん
解説:水嶋丈雄
料理:横山タカ子
撮影:山浦剛典
発行社:信濃毎日新聞社(https://shop.shinmai.co.jp/books/)
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