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高齢者の帯状疱疹に越婢加朮湯

公開日:2019.04.26
カテゴリー:漢方ニュース

帯状疱疹には抗ウイルス薬が有効だが、高齢者には慎重投与

 帯状疱疹は、水ぼうそう(水痘)にかかったことのある人ならば誰でもかかる可能性のある皮膚疾患です。神経の中に潜伏している水痘・帯状疱疹ウイルスが、ストレスや疲労などで免疫力が低下すると、再び起き出して、皮膚表面に少し盛り上がったような赤い湿疹をつくります。この湿疹はやがて水疱となって破れ、皮膚にただれやかさぶたができます。湿疹ができている時はピリピリした痛み(神経痛)があることが多く、帯状疱疹が治った後もこの痛みが長く続くこともあります。

 現在、帯状疱疹の治療には、原因となるウイルスに作用する注射や、内服の抗ウイルス薬があります。しかし、これらの治療薬は、高齢者では幻聴、幻視などの精神症状を伴う副作用が現れやすく、添付文書上も高齢者には「慎重投与」となっています。

 こうした事情をふまえ、白十字会燿光リハビリテーション病院薬剤部の嶋田聖子先生は、過去の症例を分析し、抗ウイルス薬に漢方薬の越婢加朮湯(えっぴかじゅつとう) を併用することで、帯状疱疹の湿疹の治りが早まり、薬の投与日数も短くなることを、第28回日本医療薬学会年会で発表しました。

高齢者における帯状疱疹治療薬の選択肢に

 越婢加朮湯は石膏(せっこう)、麻黄(まおう)、蒼朮(そうじゅつ)、大棗(たいそう)、甘草(かんぞう)、生姜(しょうきょう)の6種類の生薬で構成される漢方薬で、腎臓の機能低下、関節の腫れや痛み、夜尿症、湿疹の治療に用いられます。

 嶋田先生は、2017年1月1日から2018年3月31日までの期間に白十字会燿光リハビリテーション病院に入院し、帯状疱疹と診断され抗ウイルス薬のアシクロビル注射液とバラシクロビル錠、越婢加朮湯を投与された患者さんの状況と治療日数などを調査しました。

 この期間に帯状疱疹で越婢加朮湯を投与された患者さんは8人で、そのうち越婢加朮湯のみの使用は1人、越婢加朮湯とアシクロビル注射液の併用は2人、越婢加朮湯とバラシクロビル錠の併用は2人、越婢加朮湯とアシクロビル注射液、バラシクロビル錠の3種類を併用していたのは3人でした。またアシクロビル注射液のみが3人、バラシクロビル錠のみが14人いました。

 調査の結果、アシクロビル注射液のみで治療をしていた患者さんの薬剤投与日数は8~10日間、バラシクロビル錠のみで治療していた患者さんの薬剤投与日数は最長22日間でしたが、越婢加朮湯と抗ウイルス薬を併用していた患者さんでは、多くが7日間以下で治療を終了していました。

 また、越婢加朮湯を併用しても、漢方薬の薬価が安いことや治療期間が短縮したことで、患者さんの経済負担が著しく増加することはありませんでした。

 このことから嶋田先生は「越婢加朮湯は副作用も比較的少なく、抗ウイルス薬と併用することで、高齢者へ抗ウイルス薬を投与する際に懸念される副作用のリスクを回避するために検討が可能な選択肢のひとつ。皮膚症状や腫れへも併用により効果が早く得られやすいことからも、帯状疱疹の補助的な治療薬として有用である」と結論づけました。(村上和巳)

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