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慢性便秘に大建中湯は有効か? 複数の医療機関で試験を実施中

[漢方ニュース] 2018/02/27

 一般に便秘の症状に苦しむ人は少なくありません。平成28年の国民生活基礎調査によると、便秘の症状を訴える人は人口千人当たり男性が24.5人、女性が45.7人ですが、実態はもっと多いと考えられています。こうしたなか、漢方薬の大建中湯(だいけんちゅうとう) が慢性便秘に有効であるとの報告が、2月10日に東京都内で開催された第14回日本消化管学会で行われました。これは、川崎医科大学検査診断学(内視鏡・超音波)准教授の眞部紀明医師によるもので、現在、大建中湯の慢性便秘に対する効果をより明らかにするため、眞部医師らを中心に複数の医療機関で偽薬(プラセボ)を比較対照とした試験も実施中です。

 眞部医師は慢性便秘について「機能性消化管疾患の病態上、作用点が1点に集中する西洋医学だけでは対応できない症例が目立ち、作用点が多岐に及ぶ漢方治療が見直されてきている」と、見解を示しています。

 そこで眞部医師が注目したのは、外科手術後の腸閉塞の予防や改善によく使用されている大建中湯でした。大建中湯は生薬のサンショウ(山椒)、カンキョウ(乾姜)、ニンジン(人参)、コウイ(膠飴)から構成される漢方薬で、消化管の運動を促進する作用、消化管の粘膜血流を増加させる作用、炎症を鎮める抗炎症作用などが知られています。「慢性便秘では特にこの中でも消化管運動促進作用がメインで働いているのだろう」(眞部医師)。ちなみに、これまでの動物実験により、大建中湯はミクロな3つの機序によって消化管の筋肉を収縮させ、その結果、消化管そのものの運動を促していると考えられています。

日米で異なった「大腸通過時間」の差

 眞部医師は、米国のメイヨークリニックに所属中、大建中湯を経口投与した際に、同剤が消化管内容物の通過時間にどのような影響を与えるか検討するため、健康な白人男女60人を対象に試験を実施しています。試験では、対象を3群に分け、大建中湯1日7.5g、大建中湯1日15g、偽薬(プラセボ)のいずれかをそれぞれ5日間投与しました。その結果、大建中湯を投与した群ではプラセボと比較して大腸の通過時間が有意に早くなっていました。小腸の通過時間は、「プラセボと統計学的有意差はなかったが、早める傾向があった」(眞部医師)。ただ、同じメイヨークリニックで行った、白人女性の慢性便秘患者を対象にした大建中湯とプラセボの比較試験では、両者の間で大腸通過時間(CTT)に有意差は認められませんでした。

 その後、川崎医科大学の消化器内科外来に便秘を訴えて来院した患者のうち、体内の組織や内臓そのものが著しい変化を示す器質的疾患の患者を除いた50例に、大建中湯を2週間投与し、効果を検討しました。効果は排便の回数、CTT、ブリストル便性状スケールを指標にしました。ブリストル便性状スケールとは、便の性状を固い兎糞状を1、普通便を4、水様便を7とする7段階の評価方法です。数字が低いほど消化管の通過時間が遅いことを意味します。その結果、投与前の平均排便回数1.1±0.9回、平均ブリストル便性状スケール 2.8±1.6、平均CTT45.9±16.3時間だったのに比べて、大建中湯投与後はそれぞれ1.2±1.2回 、3.4±1.1、38.9±20.0時間といずれも大きく改善しました。

 このうちCTTの改善については、投与前のCTTが52.2時間を超えている症例では奏効率が37.5%だったのに対し、投与前CTTが52.2時間以内の症例では57.6%に効果が認められました。

日本人特有の便秘に漢方薬の効果は?試験を実施中

 ここで疑問となるのが日本人の場合とメイヨークリニックで投与を受けた白人とで、有効性に差があったことです。この点について眞部医師は(1)効果の評価に使用した医療用画像診断機器の違い、(2)対象患者の投与前のCTTのばらつきの違い、(3)食習慣などによる人種差、の3つが影響したのではないかとの推測を示しています。

 また、眞部医師は「アジア人の下部消化管機能障害患者では腹部膨満感を訴えるケースが多い」と話し、川崎医科大学での慢性便秘を中心とする下部消化管機能障害患者206例の検討では、26.2%が腹部膨満感を訴えていたことを紹介しました。

 腹部膨満感の原因については様々な要因が指摘されていますが、その中の1つの知覚過敏には、動物実験の結果から大建中湯が有効であることが報告されています。この点について眞部医師は、「大建中湯の知覚過敏改善効果と消化管運動促進作用が相まって働いているのではないか」との見方をしています。

 現在、眞部医師らは慢性便秘に対する大建中湯の効果を明らかにするため、川崎医科大学を含む6施設でプラセボとの比較試験を実施しています。試験では20歳以上の慢性便秘患者80例を目標登録例数とし、大建中湯、プラセボを各4週間投与し、主な評価項目として自発排便回数と腹部膨満感の変化量としています。現在、登録症例は60例で、2018年5月末までに目標症例数の達成を目指しています。(村上和巳)

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