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【当帰芍薬散、加味逍遙散、桂枝茯苓丸】更年期女性の不眠症状改善効果/論文の意義

[久保田俊郎先生]

西洋医学では対処法に乏しく困っている領域

更年期女性に対して最も多く処方される3つの漢方薬は、不眠症状を改善する
-当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、加味逍遙散(かみしょうようさん)、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)

 中高年の女性における不眠症状の訴えは多く、特に更年期女性が抱える問題としてこれまで注目されてきました。更年期症状には、従来からホルモン補充療法が有効とされていますが、それでも症状のすべてを改善できるわけではありません。そこで今回、久保田俊郎先生(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科生殖機能協関学教授)らは、更年期症状に対して処方される代表的な3つの漢方薬、当帰芍薬散、加味逍遙散、桂枝茯苓丸について、主に不眠症状に対する効果を患者さんのデータベースと診療録を用いて検討しました。この研究論文は2010年12月に、産婦人科領域の国際的な学術誌『Archives of Gynecology and Obstetrics』のオンライン版に掲載されました。

背景:更年期女性の多くが訴える不眠症状は、ホルモン補充療法だけでは十分には改善できない

更年期症状における不眠症状 更年期症状は、多くの中高年女性が経験するものです。冷えやのぼせ、発汗や動悸など、症状もさまざまなら、その程度もさまざまです。軽ければ、なんとかやり過ごすこともできますが、ひどくなれば日常生活に支障を来し、きちんとした治療が必要な場合も少なくありません。
 更年期女性が特に悩む症状の1つに、不眠症状があります。これは、睡眠のための時間や環境が整っていても、なかなか寝付けない(入眠困難)、途中で何度も起きてしまう(中途覚醒)、熟睡できない(熟眠障害)といったもので、睡眠障害とも言われます。その結果、日中に眠くなったり、仕事や家事がはかどらなかったりして、生活の質が低下するだけでなく、結果的に、肥満、糖尿病、高血圧、メタボリックシンドロームなどを生じる場合もあると考えられています。
 現在の更年期症状に対する中心的な治療法は、減少してしまった女性ホルモンを外から補う”ホルモン補充療法”というものですが、必ずしも症状を十分に抑えることはできません。そこで、ホルモン補充療法以外あるいは、それに加えることでより効果的に治療できる方法はないかということが、更年期診療に携わる世界中の専門家の大きな関心事なのです。海外ではホルモン補充療法に併せて、鍼灸や気功、免疫療法やアロマセラピーなどのさまざまな補完代替療法が行われていますが、日本では漢方薬がよく使われています。その中でも『当帰芍薬散』、『加味逍遙散』、『桂枝茯苓丸』は”女性3大処方”といわれ、更年期女性に対して最も多く処方される漢方薬です。
 『当帰芍薬散』は、「芍薬(しゃくやく)」、「蒼朮(そうじゅつ)」、「沢瀉(たくしゃ)」、「茯苓(ぶくりょう)」、「川きゅう(せんきゅう)」、「当帰(とうき)」の6つの生薬、『加味逍遙散』は、「柴胡(さいこ)」、「芍薬(しゃくやく)」、「蒼朮(そうじゅつ)」、「当帰(とうき)」、「茯苓(ぶくりょう)」、「山梔子(さんしし)」、「牡丹皮(ぼたんぴ)」、「甘草(かんぞう)」、「生姜(しょうきょう)」、「薄荷(はっか)」の10の生薬、『桂枝茯苓丸』は、「桂皮(けいひ)」、「芍薬(しゃくやく)」、「桃仁(とうにん)」、「茯苓(ぶくりょう)」、「牡丹皮(ぼたんぴ)」の5つの生薬で構成されています。いずれも更年期症状に効果があるとされ、患者さんのタイプや中心的な症状などによって使い分けられています。
 これまでの研究から、日本人の更年期女性には不眠症状を抱えている患者さんが多いことを明らかにした久保田先生は、これらの3つの漢方薬にその改善効果があるのではないかと考えました。そこで、今回の検討を行ったところ、不眠症状の改善だけでなく、他の更年期症状や生活の質の改善、血圧低下などの効果も期待できる可能性が示されました。

2011/07/12

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