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中澤医院 中澤深雪院長

[外来訪問] 2016/11/18

~漢方薬の新時代診療風景~
 漢方薬は、一般に知られる処方薬(西洋医学)では対処が難しい症状や疾患に対して、西洋医学を補完する使われ方も多く、今後の医療でもますます重要な役割を果たすと考えられます。
 近年、漢方薬の特性については科学的な解明が進んだこともあって、エビデンス重視の治療方針を取る医師の間でも漢方薬が使用されることが増えています。
 漢方薬を正しく理解して正しく使うことで、治療に、患者さんに役立てたい。日々勉強を重ねる、身近な病院の身近なドクターに、漢方活用の様子を直接伺いました。ドクターの人となりも見えてきます。

きっかけは30代後半、自身の体調不良から

 医学部卒業後、大学病院や保健所などに勤務しました。結婚・出産を経て「子どもの近くで働き続けたい」との思いから、自宅の応接間を改装して「中澤医院」を開いたのが、1987年、長女が10歳になったころでした。思えば無医村で自宅開業していた父の背中を見ながら育ったことが、多少なりとも影響していたのかもしれません。頼られれば断れず、少しでも地域の役に立ちたいとの思いから、家事・育児と並行して夜間や休日の急患にも対応しました。
 そんな忙しい生活を続けながら30代後半を迎えたころでしょうか、疲れやすく、疲労感がとれない状態が続くようになりました。夜中にちょっとトイレに立って体を冷やしただけで、風邪をひいてしまったり、ひいた風邪がなかなか治らなかったり。そんなとき、薬剤師をしていた友人になんとなく相談したところ漢方薬をすすめられたのが、私と漢方の本格的な出会いです。
 それまで西洋医学を中心に学び、実践してきたものですから、漢方薬の存在は知りつつも、その効果については懐疑的でした。ところが、すすめられた漢方薬をしばらく飲んでみたところ、慢性的に感じていた体の不調がすっとよくなったのです。
 以来、漢方の力を信じるようになり、30年近く漢方薬とともに生きてきました。本を読んだりセミナーに参加したりして漢方の知識を身につけ、診療に生かすことはもちろん、自分自身も漢方薬を飲み続けています。女性特有のトラブルなどに効果があるといわれる当帰芍薬散を服用し続けることで、妊娠中にできた顔のシミも気づかないうちに消えていたり、さまざまな効果を自分自身の体で体感してきました。

「漢方だけ」での治療が万能であるとは限らない

 当院では近くにお住いの方を中心に診療していますが、漢方診療については鎌倉市、茅ヶ崎市など藤沢市外から来院する方もいらっしゃいます。女性の患者さんで不定愁訴をなんとかしたいという方や、がん末期の患者さんで抵抗力をあげたいと望まれる方が中心です。診療では、脈診、腹診、舌診で「証」をとり、それぞれの体質に合わせた漢方薬を処方しています。当帰芍薬散や補中益気湯、十全大補湯や大建中湯などを処方することが多いでしょうか。
 漢方診療を希望される方に多いのが、漢方に過度の期待を持たれて、漢方にすがるような思いで来院されるケースです。私自身、漢方の力は体感していますが、漢方薬は万能薬ではありません。病態や症状により、漢方薬だけで治療できる方、漢方薬はあくまでQOL向上のための補助的な使用にとどまる方、さまざまな方がいらっしゃいます。そのため、過剰な期待を抱かせないよう、しっかりとお話をするようにしています。
 抗がん剤の副作用軽減や精神安定、体力増強のために漢方薬を使いたいという方にまずお話するのは、「現代医学の先生が主治医であり、漢方を処方する私はあくまで補佐的な役割に徹する」ということ。漢方薬を飲んでいることを隠さず、主治医にきちんと伝えてくださいとお伝えします。なかには、がんの治療中に漢方薬を飲むことを良しとしない先生もいらっしゃいますが、最終的に飲む、飲まないを決断するのは患者さんであるべきだと考えています。私は患者さんの選択材料となる情報を残さず提供し、患者さんご自身に判断を委ねるスタンスです。

漢方を軽視しがちな若い医師にこそその力を伝えたい

 西洋医学のみを実践していらっしゃる医師のなかには、漢方薬の併用をよく思わない方も多いようです。特に大学病院、総合病院の第一線で忙しく活躍している20代、30代の若いドクターに、漢方薬を軽視する傾向が強いように感じます。
 私が医学部で医学を学んだ時代には、履修科目に漢方はありませんでした。現在では医学部のカリキュラムに漢方も含まれているはずなのに、なぜか毛嫌いなさる方が多いのです。漢方診療は経験によるところも大きく、「よく分からないから嫌」と敬遠されているのでしたら、それは大変もったいないことだと思います。
 漢方の力を信じていなかった若いころの私が、実体験によってその力を信じるようになったように、いずれは漢方の素晴らしさを知る時が来るのかもしれません。若い先生がたに少しでも漢方の力を信じていただけるよう、漢方に対する認識を変えていただくために、できることはないかと模索しているのが現状です。

「患者に養生させる医師」こそが漢方の名医

 漢方専門医として国内で初めて薬科大学の学長に就任された丁宗鐵(てい・むねてつ)先生のお言葉に、「漢方の名医とは漢方薬の使い方が上手な医師ではなく、患者に養生をさせるのが上手な医師だ」という内容のものがあります。「養生」は漢方診療において、とても大切なキーワードなのです。
 どんなに体にあった漢方薬を服用していても、季節に合わない薄着で体を冷やしてしまったのでは意味がありません。現代は夏でもクーラーにより体を冷やしてしまう時代です。首元の開いた洋服を着て肩こりや頭痛を訴える方には、「まずは襟つきの服に着替えて、首元を温めてみて」とおすすめします。「三陰交」という陰経の交わったツボを温めるのも効果的です。
 着るもの、食べるもの、眠る時間、生活のすべてを改善することが、漢方診療上の治療になります。日ごろから生活の細かい部分にまで気を配ることで、疾患に発展する前の体の不調、すなわち「未病」に気づくこともできます。薬に頼り切らず、自分で自分の体をケアする気持ちこそが重要なのです。

中澤医院

江ノ島電鉄「柳小路駅」、湘南モノレール「片瀬山駅」よりそれぞれ徒歩 10分ほど。片瀬山の閑静な住宅街にある自宅の一室を改装した、女医・中澤深雪医師によるクリニック。通院の難しい患者には24時間訪問診療にも応じるなど、きめ細かい対応で地域に長く貢献している。無料駐車場も1台完備。

診療科目

内科

中澤深雪(なかざわ・みゆき)院長略歴
1975年 北里大学卒業。同大学病院入局。
1987年 中澤医院院長


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