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松瀬医院 松瀬観翁院長

[外来訪問] 2016/02/24

~漢方薬の新時代診療風景~
 漢方薬は、一般に知られる処方薬(西洋医学)では対処が難しい症状や疾患に対して、西洋医学を補完する使われ方も多く、今後の医療でもますます重要な役割を果たすと考えられます。
 近年、漢方薬の特性については科学的な解明が進んだこともあって、エビデンス重視の治療方針を取る医師の間でも漢方薬が使用されることが増えています。
 漢方薬を正しく理解して正しく使うことで、治療に、患者さんに役立てたい。日々勉強を重ねる、身近な病院の身近なドクターに、漢方活用の様子を直接伺いました。ドクターの人となりも見えてきます。

病原を俯瞰的に探る「内科医」だからこそ

 「未病」の段階から治療できる、心身ともに総合的に良好な状態へと整えることができるなど、漢方の良さは多岐に渡ります。そのなかでも私が漢方最大の魅力であると感じるのは、西洋医学のように診療科目によって病を分類する必要がない点です。特に分化が進む近年の西洋医学では、症状が発生した際に「どの科目を受診すれば良いのか?」と患者さんが悩むケースが増えています。本来であれば内科医が症状ごとの受診先の交通整理をする役割を担うべきなのですが、内科においても専門内科という考え方が浸透しつつあり、症状の原因を俯瞰して探ることができる内科医が少なくなっているのではと感じています。専門的な検査をして数値に異常がなければ、症状があっても「問題ありません」と帰されてしまうこともあると聞きます。それでは困ってしまいますよね。
 当院では、科目を問わないトータルな診療を実践しています。例えば、めまいという症状があらわれた場合、耳鼻科や脳外科を受診することが一般的です。しかし、実は循環器疾患が要因だったり、整形外科、心療内科の分野に原因があったりと、めまいの原因は驚くほど幅広いのです。それぞれの専門科目について深い知識を持つ必要はありませんが、めまいひとつをとっても原因にこれだけ幅広い可能性があることを把握した医師にかかる必要があります。それこそ、「町医者」としての内科医の本来の役割だと思います。
 こうした当院の総合的な内科診療において、漢方は大きな役割を果たしています。漢方治療では診療科目の枠に縛られることなく、症状とそれが発生した身体そのものに目を向けます。きちんと問診をして心と体の状態を表す「証」さえとることができれば、科目に関わらず症状に対応することができるのです。

「異病同治」「同病異治」に基づき、正しい漢方医を受診すべき

 漢方とひと口に言っても、その実践はさまざまです。五行説を基礎に持つ中医学に基づくものから、日本生まれのいわゆる「和漢」まで。風邪に葛根湯、インフルエンザに麻黄湯など、診断名によって処方する漢方薬を決定する「病名漢方」で望む効果が得られる場合もありますが、実はそれは本来の漢方治療の考え方とは違います。診断名ではなく「証」によって処方する薬を決定するのが本来の漢方治療であり、異なる症状を同じ薬で治療する「異病同治」や、一見同じ症状でもまったく違う薬を処方する「同病異治」が本来の姿です。
 漢方治療を希望して医療機関を受診する際に、ひとつの参考となるのはその医師が診療科目にこだわらず、幅広い症状に対して漢方治療を実践する覚悟を持っているかという点でしょう。正しい知識を持つ漢方医であれば、標榜科目が胃腸科でも更年期症状への漢方治療が提供できますし、婦人科を標榜していても、アトピー性皮膚炎の相談を受けることができるのです。
 当院では内科、小児科を標榜していますが、西洋医学的分類では他科の範疇となる症状への漢方治療も積極的に提供しています。漢方治療では、個々の病気の専門的な医療知識よりも、「証」をしっかり診ることが重要です。ただ、「証」については奥深く、その診断を常に正しくできるかと言えば、なかなか難しい。当院は東洋医学の専門家である鍼灸師とのネットワーク「病鍼連携神奈川」に参加しており、私の見立てを鍼灸のプロの目線で再確認してもらうこともあります。医師の見立ては絶対というのは思い上がりだと思いますし、専門知識を持つプロとして、鍼灸師とも対等の立場でアドバイスしあっています。こうした努力で、漢方治療のレベルの底上げにつながればと考えています。

必要最低限の薬で健康維持を

 当院では院内調剤にこだわっています。そして、極力薬を減らす方針での処方を実践しています。近年、貧困の広がりから、医療費負担に耐えられず「患者になれない病人」が増えているといわれます。無駄な医療費を節約して良い治療を長く続けることこそ重要だと思うのです。
 また、最近では高齢者や精神疾患における多剤処方が問題視されています。必要でない薬の飲み過ぎは副作用を生み、その治療にまた新たな薬を必要とするという悪循環を生むことも。実際、当院では患者さんから他科処方の薬について相談を受けることも多々あります。「異病同治」を利用した漢方治療では、他科診療で処方された薬をひとつの漢方薬にまとめることも可能です。必要最低限の薬を適切に取り入れて、医療費を節約しながら賢く健康を維持していただきたいと思います。

松瀬医院

医院ホームページ:http://www.matsuse-iin.com/index.html

京急本線「能見台」、「京急富岡」の各駅より徒歩20分。横浜市金沢区富岡西に広がる住宅街のなか、「富岡第5公園」近く。先代から続く、地域に愛される医院です。
詳しい道案内は医院ホームページから。

診療科目

内科、小児科

松瀬観翁(まつせ・かんおう)院長略歴
1985年 金沢医科大学卒業
1999年 松瀬医院院長


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