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風邪におすすめの漢方は?症状別の使い分けを紹介

公開日:2019.12.24 更新日:2024.12.23
カテゴリー:病気と漢方 監修:加藤 士郎先生(筑波大学附属病院総合診療科 臨床教授)

寒さや乾燥が気になる季節になったら、マスクやうがい・手洗いなど、風邪(かぜ)の予防を始めたいものです。風邪は身近な病気ですが、こじらせると長引くことがあります。風邪を引いてしまったかなと思ったら、養生(安静、睡眠、栄養)に加えて、漢方薬の力を借りて回復を図ることもできます。ここでは、風邪と漢方薬の種類や使い方、よくある質問などについて解説します。

風邪の経過

風邪とは、主にウイルスに感染することによって、鼻や喉などに急性の炎症を起こす病気の総称です。症状は、くしゃみ、のどの痛み、鼻水・鼻詰まり、発熱、寒気……と多岐にわたります。多くの場合は安静にして睡眠と栄養を摂り、体を温めて養生していれば、免疫力が働いて自然に治ります。しかし「風邪は万病のもと」と言われるように、無理をすると持病が悪化したり、別の病気を引き起こしたりすることもあります。

風邪には大きく、急性期と遷延(せんえん)期という2つの段階があります。

急性期は、発症して間もない時期(発症から3日程度)のことで、鼻水やのどの痛み、咳などの症状が強く現れます。普段元気で体力がある人であれば、ほとんどがこの期間で回復します。

急性期で回復しない場合は、遷延期に入ったと考えられます。いわゆる「風邪が長引いている」状態です。ウイルスの活動がなかなか弱まらず体も疲弊してくるため、微熱や全身の倦怠感、食欲不振、長引く咳などの症状も出てきます。

2週間経過しても効果が得られない場合は、風邪をきっかけに別の病気(気管支炎や肺炎、副鼻腔炎、中耳炎など)を発症することがあります。また、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、心臓病などの持病が悪化して呼吸器の症状を引き起こしている可能性もあり、持病がある人では詳しい検査が必要になることもあります。

風邪の急性期におすすめの漢方薬

風邪を治すには、ウイルスと戦ってくれる免疫力を高めることが大切です。風邪を引いたら無理をせず安静にして、十分な睡眠と栄養をとり、しっかり養生しましょう。

室内の乾燥を防ぎ、厚着などで体温を逃がさないようにし、食欲があれば温かいうどんにネギやショウガを加えたものを取りましょう。体を温めることで血流がよくなり、回復が早まります。

そのうえで、漢方薬は体全体のバランスを整え、本来、体がもっている病気に対抗する力を高めることで、風邪の改善へと導いてくれます。

「風邪の漢方薬と言えば葛根湯」というイメージを持つ方も多いと思いますが、漢方薬は患者さんごとに合う薬が異なります。体質によっては葛根湯ではなく別の薬の方が合うこともあります。自分に合った漢方薬を見つけて、風邪対策に活用しましょう。

葛根湯(かっこんとう)

葛根湯が合うのはもともと体力がある人で、かつ、寒気、38℃程度の熱、頭痛や肩こりがある場合です。

葛根湯は、体を温めて、発汗を促す働きがあります。また、葛根湯は免疫細胞が放出する特定の情報伝達物質に働きかけることでウイルスの増殖を抑制し、炎症や過剰な発熱を抑えることが確認されています。

小青竜湯(しょうせいりゅうとう)

小青竜湯は体力が中程度もしくはやや虚弱な人が、鼻水の出る風邪にかかったときに効果的な漢方薬です。

麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)

麻黄附子細辛湯は、お年寄りや持病のある人など、体力が低下している人で、日頃から足や腰の冷えが強く、風邪をひいてもそれほど熱が出ない人に向いています。

風邪の遷延期におすすめの漢方薬

長引いた風邪によく使われる漢方薬には、補中益気湯と麦門冬湯があります。

補中益気湯(ほちゅうえっきとう)

補中益気湯は、胃腸の働きを高めて体力を回復させる漢方薬で、体力が低下している人の体質改善によく用いられます。長引く風邪による微熱や全身の倦怠感、食欲不振の症状を改善します。

風邪が長引きやすい人は、もともと体力がない場合が多く、補中益気湯を服用していると風邪を引きにくくなる効果があることもわかってきています。

麦門冬湯(ばくもんどうとう)

麦門冬湯は、コホコホと続く乾いた咳やたんが少し絡む咳などの症状によく用いられる漢方薬です。長引く風邪の咳で特にたんの切れがよくないときや、声がれがあるときにも効果があります。気管支炎の治療薬として使われることもあります。

漢方薬の正しい服用方法

基本的には水か白湯で飲むようにします。漢方薬を白湯に溶かして飲むよう、医師や薬剤師から指示がある場合もあります。漢方薬が苦手、お茶やコーヒーと一緒なら飲める、という場合は一緒に飲んでもかまいません。お茶やコーヒー、牛乳などで飲むと互いの成分と反応して、漢方薬の効き目が弱まってしまうことがありますが、飲めないよりはよいのです。

漢方薬は生薬が合わさっていますので、薬効成分が吸収されやすい空腹時(食前または食間)に飲むことが基本です。西洋薬のように1日3回などと定期的に内服する場合ばかりではなく、1日2回、あるいは3回など、患者さんによって異なる服用回数が指示されるときもあります。

また、漢方薬だからといって副作用が起こらないわけではありません。例えばむくみや筋肉痛、動悸などが起こる場合もあります。不調を感じたらすぐに医師や薬剤師に相談しましょう。

よくある質問

漢方薬を飲んでからどれくらいで効果が出ますか?

その人の体質などによって差はありますが、葛根湯のように風邪の急性期で用いられる漢方薬は、服用後数時間で発汗などの効果を実感できることが多いです。一方、風邪の遷延期で用いられる漢方薬は飲み続けることで効いていくので、1~2週間程度で効果が認められることが一般的です。

麻黄湯を飲むと熱は上がりますか?

麻黄湯には体を温めることで、ウイルスを攻撃する体の防御反応を手助けする作用があります。そのため、服用後はいったん熱が上がりますが、その後に汗をかくことによって熱は下がります。

麻黄湯はかぜの初期で寒気や発熱、頭痛、ふしぶしの痛みを伴い、汗をかいていない方に用いられます。体力があり、胃腸が丈夫な方に向いた漢方薬です。

加藤士郎(かとう・しろう)先生
筑波大学附属病院総合診療科 臨床教授

1982年獨協医科大学卒業。2009年野木病院副院長、筑波大学非常勤講師。同年、筑波大学付属病院総合診療科に漢方外来開設。2010年から筑波大学付属病院総合診療科 臨床教授。

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