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シリーズ:季節の漢方「季節の変わり目に体調が悪くなるのはなぜ?」

[病気と漢方] 2019/11/20
 1972年に日本初の漢方医学の総合的な研究機関として設立された北里大学東洋医学総合研究所。長い歴史を通じて、日本人の体質や気質にあった形に発展してきた漢方には、季節ごとに生じる悩みを乗り切る知恵が詰まっています。北里大学東洋医学総合研究所の広報・医療相談室室長で薬剤師である緒方千秋先生に、季節にあった漢方の知恵を教えていただきます。第2回目は季節の変わり目に起こりやすい体調の変化について解説していただきます。

乾燥と臓器の働きを理解するのが秋の養生法

 秋になると食欲が旺盛になる方が多くなるため「食欲の秋」とも言われます。夏には食欲がなくなる方が多くいます。これはどういうことなのでしょうか。

 漢方では、人間の内臓全般を「五臓(肝・心・脾・肺・腎)」「六腑(胆・小腸・胃・大腸・膀胱・三焦)」と言い表します。「五臓」はお互いに影響を及ぼしあっており、「五臓」と「六腑」は表裏一体の関係にあるとされています。「五臓」で消化機能を表すのは「脾」です。「脾」は湿度(水分)を嫌い、乾燥を好む性質があります。そのため、湿度が高い夏には消化機能が低下してしまうと漢方では考えます。秋になると外部環境だけでなく臓器も乾燥して、消化機能が活動しやすい状態になります。だから食欲が増すのです。

 とはいえ、乾燥が全ての臓器において良いわけではありません。「大腸」は乾燥を嫌い、湿度(潤い)を好みます。乾燥によって便秘になりやすいと言われ、腸内が乾燥するとウサギの便のようなコロコロ便になってしまうのです。秋には食欲は旺盛になるものの、便秘傾向になる方も多くいると思います。規則正しい便通のために「大腸」の潤い(水分)が必要です。しかし、水分が多すぎると水様性の下痢になってしまうことがあるので注意しましょう。

 秋の乾燥によって一番打撃を受ける臓器は「肺」です。五臓で言う「肺」は、呼吸と気の生成を主り、肺や気管、のど、鼻、皮膚(肌)と関係する臓器です。五臓の「肺」と六腑の「大腸」は表裏の関係であり、それぞれ乾燥を嫌う性質があります。その影響が、のどや肌に出やすくなると言われています。のどが乾燥して咳が出たり、肌が乾燥してカサカサになったりしたら水分を補給する(潤す)必要があります。

秋には潤すことと風から身体を守ることが大事

 乾燥した身体を潤すためには内外からのアプローチが必要です。五行説では秋は白色であり、白色の食材には潤いを与えるものが多く存在します。また実りの秋でもあるので新米だけでなく、イモ類や豆類、キノコ類、根菜などが旬を迎えます。自分に合った食材を取り入れ、のどや肌、大腸を潤すことを心がけましょう。

 また秋は特に気温差が大きく、朝と夜は気温が下がりますが、天気により昼間は気温がぐっと高くなる日もしばしばあります。そんなときにはすぐに自分で温度を調節できるストールや羽織り物を持ち歩く習慣をつけて下さい。首や項に秋風が当たると、風邪を引いてしまうことが考えられます。特に秋には肺やのどが痛みやすい季節です。皆さんが下着を着けて、洋服を着て、布団をかけて寝ることは「風の邪」から身を守るためで、身体を温かく保つだけではないのです。夏場は薄着で過ごしていましたが、秋には肌を見せないように心がけて下さい。

 秋は夜が長いですから、自宅で体力消耗しないようじっと読書でも楽しまれるのが良いでしょう。またお天気の良い日は紅葉を楽しむためにハイキングも良いでしょう。落ち葉には水分も含まれており、日常の乾燥から身を守ってくれます。また深呼吸をすることで体内にも潤いを与えることが出来ます。

秋の夜長に菊花茶を楽しむ

キクの話

 キクはキク科の多年草で日本の代表的な花の一つです。花の色や形、大きさなどにより多くの品種があります。中国から日本に伝わり江戸時代には品種改良が進み、観賞用に広く栽培されてきました。菊まつりや菊人形などといった伝統的文化としても根付いています。また旧暦の9月9日は重陽(ちょうよう)の節句として、平安時代には天皇が家臣へ無病息災を願って菊酒を振る舞ったと言われています。
 漢方ではキクの花を「菊花(きくか・きっか)」と呼び、キクまたはシマカンギクの頭花を生薬として用います。解熱、鎮痛、抗炎症作用があり、めまい、頭痛、目の症状にクコの実と一緒に用います。秋の読書のお伴にキク茶をおすすめします。

身体を潤す食材と漢方薬

食材(五行の秋は白色で身体を潤す食材が多い)

新米、イモ類(長芋・里芋・サツマイモなど)、栗、白キクラゲ、キノコ類、レンコン、カブ、大根、白菜、銀杏、落花生、百合根、豆腐、白ごま、梨、柿、ブドウ、カリフラワー、鱈、蜂蜜、葛など
※大根や梨を使った「のど飴」も多く存在します。

漢方薬(麦門冬や地黄など身体を潤す生薬を配合)

麦門冬湯(ばくもんどうとう)
乾いた咳、空咳などに用います。
滋陰至宝湯(じいんしほうとう)
慢性的にのどに潤いがなく、痰が出なく、咳き込む場合に用います。
滋陰降火湯(じいんこうかとう)
のどを潤し、咳を鎮め、痰が切れにくい場合に用います。
※「滋(じ)」は潤すという意味があり、「陰(いん)」は体液と考えます。
潤腸湯(じゅんちょうとう)
腸に潤いがなく、コロコロ便になる場合に用います。
緒方千秋(おがた・ちあき)先生
北里大学東洋医学総合研究所 広報・医療相談室室長、薬剤師。

北里大学薬学部を卒業、1年半医療機器メーカーに勤務後、現・北里大学東洋医学総合研究所薬剤部にて30年間、生薬を用いた漢方薬の調剤に携わり、様々な生薬に触れ、また多くの患者様と接してきました。その経験を活かし、現在広報・医療相談室を立ち上げ、これまで以上に患者様に向き合う漢方医療を目指しています。
子供の頃から伝統的なことが大好きで、周りからは少し変わり者扱いをされてきました。小学生で生け花をはじめ、中学生の時に師範を取得し、社会人になったのを機に茶道をはじめこちらも師範を取得しました。今も気づくと伝統医学を専門に扱う薬剤師になっています。一貫して伝統医学を重んじた生活スタイルを保っています。

北里大学東洋医学総合研究所

【監修】

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