麦門冬湯(ばくもんどうとう)
構成生薬
- 麦門冬(ばくもんどう)
- 粳米(こうべい)
- 半夏(はんげ)
- 大棗(たいそう)
- 甘草(かんぞう)
- 人参(にんじん)
作用の特徴
気管内皮細胞内に水を導き入れ、細胞の脱水を解消する
薬効が切れるまでの時間が短い
対象となる症状
- 乾いた激しい咳
解説
麦門冬湯(ばくもんどうとう)は、中国後漢末期の官僚で医師である張仲景(ちょう ちゅうけい)によって書かれた中国の古典医学書『金匱要略(きんきようりゃく)』を出典とした薬で、咳を鎮め、痰を切り、体内を潤す効果のある漢方薬です。
細胞内の水の取り込み口であるアクアポリン5が閉じている状態を開放して、細胞内に水を導き入れ、細胞の脱水を解消することで、乾いた激しい咳や口の中の乾燥、かすれ声などを改善します。
学校の先生や歌手、カラオケ好きな人などで声が枯れやすくなり、喉頭(のど)がいがらっぽくなって咳が出てしまうというような人であれば、症状が出たときにすぐに1包服用するとよいでしょう。
ただし、薬効が切れるまでの時間が短いため、症状がぶり返してきたらすぐに次の分を服用するという形を取ります。飲み始めは、1回1包を1日4〜5回、服用します。
主に、日中に激しく咳が出て、顔が赤くなり、乾燥して気道にへばりついている痰を剥がすために咳をしているような人に向いています。
長期投与では、間質性肺炎、偽アルドステロン症、肝機能障害、黄疸等の副作用が現れることがあるため注意しましょう。異常が出た場合は、すぐに服用を中止し、医師の指示に従ってください。
※用法・用量は症状により異なります。医師・薬剤師の指示を守って服用してください
エビデンス情報
かぜの後の長引く咳
かぜをひいた後、3週間以上咳が続いている成人患者19例を対象に、β2刺激薬を単独投与した場合と麦門冬湯を併用投与した場合の鎮咳効果をランダム化比較試験で比較したところ、投与4〜5日後に麦門冬湯併用投与群で有意な鎮咳効果を示したという報告があります1)。
かぜの後の咳
かぜをひいた後、2週間以上咳が続いている患者25例を対象に、麦門冬湯と臭化水素酸デキストロメトルファンの単独投与での効果を比較したところ、どちらも有意に咳を抑制する効果が認められましたが、麦門冬湯群では2日目でより強い鎮咳効果を示しました2)。