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漢方がCOPDの症状緩和&合併症の予防に

公開日:2013.12.04
カテゴリー:症状別得意分野

死亡原因10位にもなっているCOPD(慢性閉塞性肺疾患)

 慢性閉塞性肺疾患(COPD)とは、せきやたん、息切れなどが続く疾患です。もともと慢性気管支炎、肺気腫と呼ばれていて、タバコや大気汚染などによって気道や肺胞に炎症が起き、肺の機能が低下する病気です。「風邪が長引いているだけ」などと見逃してしまいがちな疾患ですが、進行性のため死亡に至る人も少なくなく、現在、患者数は530万人とも言われており、日本人の死亡原因の第10位ともなっています。COPDによる死亡者数は世界的にも増え続けており、WHO(世界保健機構)は、2030年に死亡原因の第3位になると予想しています。COPDの最大の原因はたばこ。COPDの患者数の90%が喫煙者だという報告もあります。進行がゆっくりのため、たばこを吸い出してすぐではなく、40代以上の人がかかりやすいとされています。

漢方は、健康状態を改善、合併症の予防にも

 COPDの症状は、せきやたんが続いたり、少し歩いただけで息切れしてしまうなどですが、ゆっくり進行し、次第に重症化していきます。呼吸機能の低下が進んで通常の呼吸では十分な酸素を得られなくなると、呼吸チューブや酸素吸入療法なしには日常生活が送れなくなってしまいます。また、COPDは肺だけでなく、全身性の炎症や筋力低下、骨粗しょう症、体重減少、虚血性心疾患などの全身症状も合併することがあります。
 このような全身症状を漢方では肺の失調状態と考えます。COPDにおいて漢方は、せきやたん、呼吸困難や食欲不振などの症状緩和と、体重増加の促進、下肢の冷え、筋肉のけいれんの防止などの健康状態そのものの改善を目指すもの、そして胃腸障害や気管支炎、肺炎などの合併症の予防と治療に対して用いられます。

初期~中期
(炎症をおさえる)
麦門冬湯(ばくもんどうとう):
 かわいた咳、喉の乾燥感、いがいが、胃の不快感
清肺湯(せいはいとう):
 喉の熱感や痛み、からむ咳、胃の抵抗感
中期~後期
(全身症状の緩和)
補中益気湯(ほちゅうえっきとう):
 食欲不振、体重低下、全身倦怠感、微熱、うつ傾向
六君子湯(りっくんしとう):
 体力低下、食欲不振、胃もたれ、全身倦怠感
十全大補湯(じゅうぜんたいほとう):
 脱水傾向、皮膚の乾燥、手足の冷え、貧血
人参養栄湯(にんじんようえいとう):
 体力低下、疲労倦怠、手足の冷え、貧血など

プロフェッショナルの【眼】

COPDは洋・漢(西洋医学と漢方医学)の統合医療が最も適応になる慢性疾患。初期の段階から積極的に行うことで、進行を遅らせ、症状を緩和し全身状態の改善に

筑波大学付属病院臨床教授
加藤士郎 先生

 COPDは、レントゲンでは発見しづらく、症状も出にくいため、気がついたときにはかなり進行しており、診断が遅れた場合は全身症状が出て死に至るケースも少なくない疾患です。40代以上の男性に多く、高齢者になるほど増加します。一度壊れた肺は元には戻りませんが、漢方を服用することで、せきやたん、呼吸困難などの症状の緩和、体重増加促進や下肢の冷えなど健康状態の改善、そして胃腸障害などの合併症の予防と治療を行うことができます。COPDは、慢性肺疾患の中で、西洋医学的な治療法と漢方医学的な治療法ともにエビデンス的に最も確立されている疾患です。そのため、西洋医学的な治療と、漢方薬の治療とを合わせた洋・漢統合治療が最も適応になります。初期の段階から積極的に行うことで、進行を遅らせ、症状を緩和していくことができます。
 注意していただきたいのが、COPDは発見しにくい病気だということ。早期発見のためにはCTスキャンなどでの検査が欠かせません。そのためにも、喫煙者などで「COPDかな?」と思ったらまず専門医を受診し、適切な診療を受けるようにしてください。

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