後編:月経痛の強さ・経血量が目安に 月経に潜む「未病」には漢方薬と養生を

[病気と漢方] 2022/01/07

月経の量や痛みは個人差が大きく、「これくらいは自分にとって普通だろう」と思ってしまいがちです。また、年齢を重ねるごとに、月経に限らず多少不調があるのが当たり前の状態になってしまっている方も多いのではないでしょうか。
前編では、高円寺にある窪田クリニックの副院長・下村貴子先生に月経に現れる未病のサインと漢方での治療について伺いました。後編では、自分の月経について客観的に判断する指標と日々の「養生」について伺います。

その症状、月経困難症・過多月経かも?「正常な月経」の目安とは

ここ数十年で女性のライフスタイルは多様化し、晩婚・晩産化も進んでいます。生涯月経回数も変化し、100年前の女性が約50回だったのに対し、出産回数が減った現代の女性は約450回と、9倍以上に増加しました1)。月経のたびに放出されるエストロゲンが、子宮や卵巣などに過剰に作用することで女性特有の疾患を引き起こすと考えられています。

「子宮や卵巣に疾患を持つ人が増えてきました。多忙などを理由に、自分の体のサインに気がつかない、あるいは見て見ぬふりをしてしまうケースが多いためではないでしょうか。月経の痛みや経血量は個人差が大きいこと、月経について他人と話す機会がないことから『何が正解か』を知っている人も少ないのです。
正常な月経は、12歳ごろに初潮を迎え、25〜38日周期で、月経期間が3〜7日以内、経血量は1回あたり20〜140gが目安です2)。閉経するまでの約40年間、月経は続きます。鎮痛剤を必ず飲む方もいますが、本来月経の痛みはないもの、もしくはあっても不快を感じるほどではない、と覚えておきましょう。月経の痛みがなくとも血の塊が出る、日中でも夜用ナプキンをつけているほうが安心する、いつもタンポンとナプキンを併用している、夜はおむつタイプのナプキンを使用しているといった場合は未病のサインだといえます」
特に症状が年々ひどくなってくる場合は注意が必要です。
「月経の痛みや経血量が多いなどの症状で婦人科を受診しても、西洋医学では検査で異常がなければ経過観察となることもあります。しかし、漢方医学で診た場合、痛みがある、経血量が多いということも『未病』として治療対象になります。月経困難症がある女性は、将来的な子宮内膜症のリスクが高いことが報告されています3)。ご自身の月経が目安と大きく違うようであれば、注意が必要です。早めにご相談いただきたいです」

<正常な月経の目安>2)
月経開始 12歳ごろ
月経血量 1回あたり20〜140g
(日中、昼用ナプキンで過ごすことができるのが目安)
血の塊 なし
月経周期 25〜38日
月経期間 3〜7日以内
月経障害 なし~軽度

まずは自分の状態を「自覚すること」

近年、月経痛や月経不順などの治療手段としてピルが知られるようになり、患者さんの中にもピルを希望される方が多いといいます。

「実のところピルはとても快適で、私自身も使っていたことがあります。痛みも軽くなり、経血量も少なくなります。しかし、それでは本治(病気の根本的な治療。前編参照)とはいえません。ピルをやめた途端に、ひどい月経痛が再燃したり、経血量が増えたりということも多くあります。ですからピルは根本的な解決にはならないのです。
根本的な解決のために必要なのは、まず自分自身の月経の状態と月経周期、気候による自分自身の体調の変化、体質や特性を知ることです。例えば、月経前はイライラしやすい、胃腸が弱くて冷たいものを食べるとお腹を壊しやすい、ストレス発散が苦手、など。逆にどんなときに自分が元気になるかを知っておくことも大切です。人と話す、笑う、体を動かす、筋肉を伸ばす、趣味に没頭する、睡眠をとる、お風呂につかる、スキンシップをとるなど。神経を使うときと、緩めるときのバランスが大切です。自分の特性を見極めましょう。女性は、初潮を迎えてから妊娠・出産・産後、更年期、老年期にそれぞれのステージで自分の体と向き合わざるを得ない時期が何度も訪れます。どんなときに自分は体調が悪くなるのか、イライラしやすいのはどんなときか、ふだんから記録(ログ)をつけておくと、自分自身の取扱説明書ができ、いざというときでも落ち着いて自分の体と向き合うことができます」
また、患者さんにつけてもらった記録は、漢方を処方するうえでも参考になる情報です。
「しばらく記録をつけていくと、どんなときに調子が悪くなるのかだいたいわかってくるので、対処の仕方もわかってきます。私自身も、毎日体調と気分の変化を記録しています。以前はイライラが強くなる時期があったのですが、夜明けとともに始めるゴルフ練習、軽いストレッチ、朝日を浴びること、散歩などでイライラが減り、日常生活が楽しくなりました。また、調子がよくなったことで気持ちに余裕ができ、人との付き合い方も対峙するだけでなくときにはうまくかわすことを覚え、ストレスが減りました」

心身ともに健康であることがよい循環を呼ぶ

下村先生は「不調の状態に慣れないでほしい」と訴えます。
「『心身ともに健康である』状態であれば、自分に合っていない環境にすぐに気づき、調整することができます。また、人の言葉に素直に耳を傾け、力を借りることもできます。しかし、不調の状態はそれを難しくしてしまうのです。人は自分ひとりの力では生きていくことはできません。特に女性は、ライフスタイルがいつ急激に変化するかわかりません。いつでもどこでも、周囲の人の助けを借りて、うまく暮らしていく必要があります。そのためにも自分自身が『心身ともに健康である』ことが重要です」
その第一歩が“自分自身を知ること”、つまり月経を知ることだといいます。
「自分自身を知ることによって、大きく失調することは少なくなり、自分に見合った生活環境を選択していくことができるからです。仮に多忙で病院を受診することができなくなった場合でも、焦る必要はありません。例えば朝の30分を工夫して、その時期に合った生活習慣を常に創造し、自分で気血を作って、巡らせていけばよいのです」
基本的に月経は現在の自分自身の状態を反映するものと考えられるため、月経の症状は毎回同じではありません。ただ、3回くらい月経が同じように失調する場合は受診した方がよいと下村先生は話します。

「朝の呼吸と食事、これらを大切にするだけでも気血が補われます」
それは、まさに漢方医学でいう「養生」の考え方に通じるものです。
「そしてそれだけでは難しいときは、ぜひ漢方薬の力を借りてみてください。月経の深みを知ると向き合うことが面白くなり、毎月の月経期間を楽しく過ごすことができるようになります。日々の生活に活気が満ち溢れ、希望ある未来へとつながっていくことでしょう」

参考

プロフィール
下村 貴子 先生

2003年東京医科大学医学部卒業後、東京医科大学病院、東京医科大学八王子医療センター、国立病院機構 横浜医療センターを経て、2008年東京医科大学病院、うすだレディースクリニック非常勤。2012年亀田総合病院勤務ののち、2015年医療法人社団窪田クリニック勤務開始。現在に至る。
日本産科婦人科学会認定 産婦人科専門医、母体保護法指定医、日本東洋医学会認定漢方専門医。
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