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抗精神病薬の服薬をもう続けたくないと打ち明けてきた女性

[精神科医が使って知った漢方薬の魅力「意外と効くもんだ」] 2011/04/26

抗精神病薬の服薬をもう続けたくないと打ち明けてきた女性

 35歳、スラリと背の高い女性。うつ病の診断にてトレドミンやルボックスなどの抗うつ薬を長年飲み続けている。前医転勤のため、担当医変更となった。初めての診察時に「こんなに沢山の薬を飲んでいても全く元気が出ません。でも、うつって感じではないんです。飲むと、却って眠いしだるいし、不便です。私は本当にうつ病なんでしょうか。」とハキハキと自己紹介をしてくれた。確かに抑うつ的な表情ではないが、全身エネルギー不足の印象で、また、眠気や倦怠感が強いことも考慮し、これまでの抗うつ薬を減量し補中益気湯(ほちゅうえっきとう)を加えた。
 二週間して「何だか力が出てきました。微熱も取れました。」と明るい表情で語ってくれたので、更に抗うつ薬を減量した。その後は2~3週間に一度の割合で診察を行い、その度に抗うつ薬を減量し、4回目の診察時にはこれまでの精神科薬を全て中止し、補中益気湯のみとした。その後、2ヶ月程度経って、久しぶりに受診した際には「もう大丈夫。時々漢方を飲んでいる程度です。」と、抗うつ薬を内服していた患者さんとは思えない程の晴れ晴れとした顔で語り、更に「これまでの数年間は何だったんでしょう。漢方って効くんですね。」と言っていたため、最終受診とした。
 これまで私は、精神科やメンタルクリニック科で、患者さんが「元気が出ない。やる気が出ない。」と訴えると、抗うつ薬や少量のドグマチールなどの抗精神病薬で対応してきた。しかし、抗うつ薬では嘔気(おうけ)や倦怠感、離脱症状(急な減薬による、不眠などの症状)、また便秘や口渇(こうかつ)などの副作用が見られ、ドグマチールでは、月経不順や乳汁分泌、体重増加、錐体外路症状(すいたいがいろしょうじょう:体の動きをコントロールできなくなるなど)などが出現しやすい。様々な副作用が患者さんの苦痛となっているにもかかわらず、患者さんは必死に無理をしてでも医師の指示通りに内服し、医師の前では思っていることの半分も訴えることが出来ずにその日の診察が終わるか、もしくは自己中断してしまう、というケースも多いのではないだろうか。
 今回のケースでは、担当医変更のため、自分の症状を再認識し思い切って語ってくれたため、長年内服していた抗うつ薬を中止することが出来た。この女性は未婚で、妊娠は考えていなかったが、妊娠適齢期の女性達は、精神科薬を内服していることに対して、催奇形性(さいきけいせい:胎児に奇形が起きること)の問題をはじめ不安が強く、妊娠したくても踏み切れないことが多い。また、担当医に「妊娠よりも、まず治療優先」と言われてしまうのでは、と先読みし、デリケートな問題を相談出来ずに困っているケースもある。
 患者とよく相談しながら、病状の程度をみて、納得の上で漢方薬に切り替えていくのも一つの方法ではないだろうか。

小松桜(こまつ さくら) 愛世会愛誠病院・漢方外来

2000年順天堂大学卒業。順天堂医院メンタルクリニック科で2009年まで勤務。
不定愁訴や過量服薬、副作用出現の患者さんに対し、向精神薬のみでの対応では加療困難なケースもあり、漢方に興味を持った。
現在の施設で本格的に学ぶようになり、2010年より漢方外来勤務。精神科専門医。
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