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3年前からパニック障害を患い西洋薬の副作用にも悩んでいた女性

公開日:2011.09.20

3年前からパニック障害を患い西洋薬の副作用にも悩んでいた女性

 42歳の若干ポッチャリしている女性。数年前に勤め先の会社が経営難に陥ったことや、人間関係のストレスが原因で、電車内で息苦しさや不安感が出現するようになってしまった。近所の精神科を受診してパキシルが処方されるも、副作用による体重増加や離脱症状が顕著で、薬を敬遠しがちだった。症状が出てから3年間だましだまし内服していたものの好転がみられず、薬物療法だけでなく認知行動療法(不安に慣れる練習をする治療法)も試そうということで、私が勤務している別のメンタルクリニックへ転医してきた。
 お話を伺うと、上記症状の他にも、右足の付け根のあたりに疼痛があり、整形外科や婦人科など複数のクリニックを転々とするも、検査では特に異常が見られず、全て「ストレス性」と片付けられてしまい困っているようであった。痛みの訴えが一番強かったため、まず疎経活血湯(そけいかっけつとう)と、電車内での不安発作に対して頓服でワイパックス(抗不安薬)を処方し、パキシルは中止とした。西洋薬を内服することに不安感がとても強かったからだ。
 さらに本人の希望通り、認知行動療法も開始した。初診時の様子は、眉間にシワを寄せながら、小さな症状まで細々と話し、内容にまとまりが無かった。二週間後に再診した時も状態は「ほとんど変わらない」とのことで、初診時と同様、長々とまとまり無く要領を得ない話しぶりであった。時間をかけてようやく現在の一番困ることを聞き出すと、「イライラ・気分のムラ・電車が不安」ということだったので、疎経活血湯を中止して半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)に変更した。
 ここからの変化は劇的であった。次に来院した際には「足の痛みが少し増えたけれど、イライラが何となく取れた」と気分の面で改善傾向が見られた。さらに翌週再診した際には、「少し良いかも。頓服のワイパックスを飲まないですんだ」と、西洋薬を飲まなかった自信からか、笑顔が見られた。さらに3週間後には、「大分具合が良いな。認知行動療法はやめてみよう」と意欲を見せ、話しぶりもすっきりまとまるようになってきた。ただ足の痛みは朝にまだ感じるとのことで、就寝前のみ疎経活血湯1包を追加投与した。
 初診から3か月で「混んでいる電車にも何とか乗れる」ようになり、4か月後には「2時間かかる実家にも行っている」「そういえば頭痛も取れた」と気さくな笑顔で嬉しい副産物を教えてくれるまでになった。結局、この患者さんは半夏厚朴湯と疎経活血湯を規則的に内服し、本当に辛い時だけワイパックスを頓服し、パキシルも認知療法も中止して過ごすことが出来ている。
 パニック障害に効果あり、と言われている半夏厚朴湯だが、パキシルを止めても大丈夫な程の威力が現れたというのは驚きであった。しかも3年以上続いていた症状が4か月で改善するという劇的さだ。私は桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)が著効して性格まで穏やかになった男性症例を経験しているが、今回は半夏厚朴湯で女性が同じような変化を遂げた。女性の患者さんが、穏やかな素敵な笑顔を見せるようになるのは、診ていて嬉しいものである。
 パニック障害は予期不安(パニック発作がまた起きるのではないかと恐れること)も強く、一度罹患すると外出したり電車など乗り物に乗ることが困難となるケースも多い。パキシルを処方することが多いが、この患者さんのように体重増加や離脱症状、さらに胃部不快や焦燥感など副作用がおきやすく、これらの副作用を我慢して内服しても、すっきり改善するケースは多くはない。漢方薬で内服に抵抗を感じず患者さんが治療に前向きになってくれるのであれば、試してみるべきである。

小松桜(こまつ・さくら)先生
愛世会愛誠病院・漢方外来
2000年順天堂大学卒業。順天堂医院メンタルクリニック科で2009年まで勤務。
不定愁訴や過量服薬、副作用出現の患者さんに対し、向精神薬のみでの対応では加療困難なケースもあり、漢方に興味を持った。
現在の施設で本格的に学ぶようになり、2010年より漢方外来勤務。精神科専門医。

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