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軽症の下肢静脈瘤に加え、便通など他の悩みも解決した40代女性

公開日:2013.10.02

軽症の下肢静脈瘤に加え、便通など他の悩みも解決した40代女性

 40代の女性が「脚の血管が目立つのが気になる。少し脚がだるい」と言って来院し、軽症の下肢静脈瘤と診断した。軽症の下肢静脈瘤は手術の適応はなく、無症状であれば放置してもよい。しかし血管の部分に痒みを感じたり、チクチクするような痛みや脚のだるさを感じる方もたまにおり、そういう方の中には硬化療法で症状が改善する方もいる。硬化療法とは患者さんが気になる血管に直接注射をしてわざと血栓を作り、その血管を閉塞させる治療である。しかし、血栓が出来やすくなる薬を使用中の方や、血液をサラサラにする薬を使用中の方は硬化療法が受けられない。今回の患者さんは婦人科で血栓が出来やすくなる薬を使用中であったため、硬化療法の適応がなかった。
 下肢静脈瘤は漢方的には“血”の異常と考えられる。そこで“血”の異常を治療する薬の中で、下肢静脈瘤の患者さんの症状を改善するのに良く用いられる桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん) のエキス剤を、1回2.5グラム1日3回毎食前に処方した。「便秘でお腹が張りやすい」という話もしていたが、桂枝茯苓丸で便通が良くなることもあるのでまずは様子を見ることにした。1ヶ月後、「何が調子良いと言う訳ではないが、何となく全身の調子が良い」と言う。しかし便通には効果がなかったので、下剤の生薬である大黄を含む大柴胡湯(だいさいことう) を1回2.5グラム1日3回毎食前に処方し、桂枝茯苓丸と一緒に飲むように指導した。次の再診時、「桂枝茯苓丸を飲んでいると経血の量が少ない」とのことであった。また「大柴胡湯の影響かガスがよく出てお腹の張りは良いが、大柴胡湯を1日3回飲むとトイレが近くて大変で、1日2回にすると効きが悪いみたい」と言う。漢方では効果が強すぎる場合、食後の内服にして効果をマイルドにする方法がある。そこで大柴胡湯だけを食後に飲むようにするか、または量を減らすなど自分に合った飲み方を見つけるように指導した。しかし、しばらく試行錯誤してもらったが、なかなか上手く調整がつかなかった。数ヶ月後の再診時、「先日風邪をひいて近くの病院へ行ったら、柴胡桂枝湯(さいこけいしとう) という薬をもらった。桂枝茯苓丸は飲んでいたかったので大柴胡湯を止めて柴胡桂枝湯を飲んでみたらとても調子が良い」とのことであった。
 漢方的な話になるが、大柴胡湯や柴胡桂枝湯は“柴胡剤”と呼ばれ、“血”の薬と相性が良いと言われている。桂枝茯苓丸は“血”の薬である。初めに桂枝茯苓丸と大柴胡湯を併用した理由は、“血”の薬と“柴胡剤”の相性が良いためだ。生薬の柴胡は心を落ち着かせたり、多少便通をよくする効果がある。また大柴胡湯に入っていて柴胡桂枝湯に入っていない生薬の大黄は、先に記した通り下剤としてよく用いられる。大柴胡湯だと上手に便通のコントロールが出来なかったが柴胡桂枝湯だと上手くいったということは、この患者さんの便秘には大黄が不要だったのであろう。何にしても調子の良い漢方薬が見つかったことは非常に喜ばしいことで、今のところその漢方薬を継続している。患者さんも「漢方薬を飲むようになってから風邪をひきにくくなったし、風邪をひいても直ぐに治るようになった。飲んでいると何となく調子が良い」と喜んでくれている。また桂枝茯苓丸が効いたせいなのかどうかは分からないが婦人科の方も調子が良いらしく、薬が中止になったそうである。体に合った漢方薬がみつかりそれを気長に内服していると、何となく調子良いことが色々でてくるようである。

堀口定昭(ほりぐち・さだあき)先生
愛世会愛誠病院・下肢静脈瘤センター
2002年帝京大学医学部卒業、2008年より愛誠病院にて血管外科医として勤務しながら整形外科と漢方を学ぶ。
血管外科の外来で漢方薬を使うようになってから、本格的に漢方を学ぶようになり、2010年より血管外科と漢方内科を兼務。
日本外科学会専門医、日本脈管学会専門医。

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