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陰部静脈瘤の痛みに苦しんでいた50代女性

[外科医が使って知った漢方薬の魅力「意外と効くもんだ」] 2011/07/05

陰部静脈瘤の痛みに苦しんでいた50代女性

 「右下肢の静脈の膨らみ」「膨らんだ静脈の痛み」「右下肢の重だるい感じ」を訴えて来院した54歳の女性である。今まで4回の出産経験があり、出産後から下肢の症状が出現したとのことであった。閉経するまでは生理中に特に症状が強く、閉経してからは少し楽になったものの、今でも台所仕事をしていると重たく苦しい痛みが辛いと言う。
 下肢静脈瘤(足の付け根や膝の裏にある下肢表面の静脈が壊れて血液が逆流することによって、下肢表面の静脈が拡張・蛇行する疾患)を疑い超音波検査をしたところ、陰部静脈瘤(足の付け根や膝の裏の静脈は正常であり、お腹の中の静脈が壊れて血液が陰部を通って下肢の方へ逆流する疾患)であると診断した。
 下肢静脈瘤であれば根治的な手術をすることが出来るが、陰部静脈瘤の場合は根治的な処置が困難である。そこで漢方薬を飲んでもらうことにした。下肢静脈瘤も陰部静脈瘤も血液の逆流によって悪さする疾患であり、弾性ストッキングなどで圧迫をすることで症状が楽になることが多いため、この患者さんにも漢方薬と弾性ストッキングの着用を併用するように指導した。漢方薬はエキス剤の桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん) を1回1パック、1日3パック(7.5 g)食事の前に100ccほどのお湯に溶かして内服してもらった。
 1か月間内服してもらったところ、静脈瘤の痛みはかなり良くなった。しかもこの患者さんは肩こりもあったのだが、桂枝茯苓丸を内服するようになってから軽くなったとのことであった。よくよく話を聞くと実は痔も患っていて、これも軽くなったと喜ばれた。
 桂枝茯苓丸は、大昔合戦で打ち身や“あざ”ができた兵士に飲ませていたという歴史があるようである。漢方的には“あざ”は“於血(おけつ)”という血液のよどみのようなものと考えられている。静脈瘤も血液の逆流に伴うよどみができる疾患である。そのため静脈瘤の治療にしばしば桂枝茯苓丸が使用されるのである。
 3か月ほど継続して内服したころ別の症状が出てきたため、桂枝茯苓丸を中止したところ静脈瘤の痛みと痔が悪化した。そのため桂枝茯苓丸の内服を再開し経過観察中である。

堀口定昭(ほりぐち さだあき) 愛世会愛誠病院・下肢静脈瘤センター

2002年帝京大学医学部卒業、2008年より愛誠病院にて血管外科医として勤務しながら整形外科と漢方を学ぶ。
血管外科の外来で漢方薬を使うようになってから、本格的に漢方を学ぶようになり、2010年より血管外科と漢方内科を兼務。
日本外科学会専門医、日本脈管学会専門医。
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