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三叉神経痛の治療に漢方薬。副作用の軽減と鎮痛効果の増強に期待

公開日:2020.03.11
カテゴリー:漢方ニュース

慢性頭痛の診療ガイドラインでも推奨される漢方薬

2019年11月15~16日、ロイヤルパインズホテル浦和にて第47回日本頭痛学会総会が行われました。同学会学術総会で毎年人気となっているのが東洋医学セミナーです。セミナーのなかから、「脳神経の有痛性病変およびその他の顔面痛に対する漢方処方」というテーマで行われた、済生会横浜市南部病院神経内科の中江啓晴先生による講演の内容をご紹介します。

日本神経学会と日本頭痛学会が監修した『慢性頭痛の診療ガイドライン2013』では、「漢方薬は伝統医学をもとに、経験的に使用されてきた治療薬である。頭痛に対しても各種の漢方薬が経験的に使用され、効果を示している。近年では徐々に科学的エビデンスも集積されつつあり、頭痛治療に対する有効性を裏付けている」として、グレードB「行うよう勧められる」で推奨されています。ガイドラインで取り上げられている漢方薬は、呉茱萸湯(ごしゅゆとう) 桂枝人参湯(けいしにんじんとう) 釣藤散(ちょうとうさん) 葛根湯(かっこんとう) 五苓散(ごれいさん) の5つです。呉茱萸湯、桂枝人参湯、釣藤散は片頭痛と緊張型頭痛、葛根湯は緊張型頭痛、五苓散は血液透析に伴う頭痛に有効であるとされています。このように、頭痛に対する漢方薬は片頭痛や緊張型頭痛に対して使われることが多いのですが、ここでは、脳神経が刺激を受けて生じる痛みに対する漢方についてご紹介します。

副作用のリスクを軽減し、鎮痛効果を増強

三叉神経痛では、顔に痛みを感じます。非常に強い痛みが、雷のように短く、突発的に起こります。三叉神経痛の第一選択薬は、抗けいれん薬のカルバマゼピンですが、副作用によって、継続が困難になることが少なくないといいます。三叉神経痛の症状が悪化した場合に、カルバマゼピンの増量で対応すると副作用が起こる確率が高くなることから、カルバマゼピンの投与量を抑える工夫が必要となります。そこで中江先生は、少量のカルバマゼピンと漢方薬を併用した報告を2つ紹介しました。

1つ目の報告では、カルバマゼピンを服用していた患者19名に小柴胡湯(しょうさいことう) 桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう) を服用させたところ、15名(79%)で痛みの消失・軽減がみられました。カルバマゼピンを服用していなかった患者では15名中11名(73%)に痛みの消失・軽減がみられました1)

2つ目の報告では、原因のわからない三叉神経痛の患者に柴苓湯(さいれいとう) と五苓散を投与したところ、柴苓湯を投与した患者の54%、五苓散を投与した患者の44%で痛みが改善し、多くの例でカルバマゼピンの服用量を減らすことができました2)

中江先生は「漢方薬を併用することで、カルバマゼピンを減量でき、また鎮痛効果の増強が期待できる」としています。

さらに中江先生は、帯状疱疹に関連する神経痛に関する漢方薬についても言及しました。帯状疱疹後神経痛については、日本ペインクリニック学会編『神経障害性疼痛薬物療法ガイドライン改訂第2版』によると、有効な漢方薬はないとされています。治療薬には抗けいれん薬や三環系抗うつ薬が挙げられるものの、転倒などの副作用のリスクがあるため、高齢の患者さんに対しては慎重な投与が求められます。中江先生は、桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう) 、五苓散、柴苓湯を使用した報告を紹介し、漢方薬処方の可能性を提示しました。

中江先生は、三叉神経痛や帯状疱疹後神経痛に対して漢方薬が有効である可能性を示しつつ、「漢方処方は、現在広く行われている治療法と対立するものではありません。漢方薬が少しでも頭痛治療の助けになれば」と締めくくりました。

参考
  1. 大野健次ほか:日本東洋医学雑誌. 1995:46(1):55-61
  2. 森本昌宏ほか:東洋医学とペインクリニック 1994:24(1):7-10

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