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<漢方にまつわる気になる本を紹介> 病院にも薬にも頼らないカラダをつくる『未病』図鑑[著]渡辺賢治

公開日:2021.02.04
カテゴリー:漢方ニュース

「未病」の意味とは?

 2020年は、新型コロナウイルス感染拡大の影響によって自分自身や家族の健康にいつも以上に気を配ることが増えた1年でした。手洗いや手指消毒、うがいやマスクなど、いつも以上に気をつけたことで、新型コロナウイルスの感染も防ぐことができ、健康を維持できたという人も多いと思います。
 そんなみなさんに質問です。

 「今、あなたは健康ですか?」

 自信を持って「健康です」と答えられる方は意外と少ないのではないでしょうか。
 「健康診断で要注意の項目がいくつかあった」「病院へ行くほどではないけれど、いくつか不調がある」「疲れやすくなって体力の衰えを感じている」など、多かれ少なかれ、健康に対する何らかの不安を持っている人が大半なのではないかと思います。

 では「健康」とはいったいどんな状態のことをいうのでしょうか。
 WHO(世界保健機構)は、「健康」をこう定義しています1)
 「健康とは、肉体的、精神的及び社会的に完全に良好な状態であり、単に疾病又は病弱の存在しないことではない」

 つまり、病気ではないからといってそれがイコール健康だ、というわけではないのです。

 2020年7月に発売された「病院にも薬にも頼らないカラダをつくる『未病』図鑑」(横浜薬科大学特別招聘教授・慶應義塾大学医学部漢方医学センター客員教授 渡辺賢治先生著)では、こうした「『病気でない、体が弱っているわけではない』としても、『必ずしも健康とはいえない』状態=未病」を改善するための10の行動指針が紹介されています。

「未病」の症状は体からのSOS

 未病は、漢方医学ではよく用いられる、病気と健康の間の状態を指す言葉です。
 病気と健康は、境目がはっきりしているわけではありません。
 天気が悪い日は具合が悪くなる、疲れやすい、月経時やその前後に不調が起きる、イライラしやすい、目が疲れやすい、爪が割れやすいなど、医療機関へ行くほどではないけれども「なんとなく不調」があるという状態が未病ですが、こうした状態を放っておくと、いずれは病気になる可能性が高くなると本著では紹介されています。

 渡辺先生は本書の中で、「現代社会には“未病のタネ”が、あちこちにまかれている、(中略)放っておけば、その種から『なんとなく不調』の芽が出て、いつしか『明らかな不調』の幹ができ、その幹から伸ばした枝の先で『病気』の実をつけてしまいかねません」と述べています。

「未病」にフォーカスする漢方医学の考え

 私たちは「病気になってから医療機関で治療をする」のがふつうだと思いがちですし、実際それが一般的です。一方、「病気にならない対策を講じる」「未病の段階で病気にならないよう改善する」のが漢方医学の考え方です。中国最古の医学書「黄帝内経(こうていだいけい)」にも「上工は未病を治し、已病(いびょう)を治さず」という一節があります。
 これは、腕利きの医者は、すでに発症している病気を治すのではなく、病気になる前の未病の段階で治すという意味で、未病を治すことが最高の医療であるといっているのです。

日常生活の改善が未病の改善につながる

 では、未病を改善するにはどうしたらいいのでしょうか。
 「病院にも薬にも頼らないカラダをつくる『未病』図鑑」には、「未病を治す名医は自分自身」であるとして、日常生活改善のポイントが記されています。食べること、運動すること、睡眠、呼吸の仕方、休息のとり方など、すぐに実践できることが書かれています。
 また、現在悩んでいる症状別未病の対策法もあり、冷え症やむくみ、肌のトラブル、肩こり、腰痛、めまいなど、お薬や病院に頼らずともできる改善法が紹介されています。

未病対策はできるところからでOK

 渡辺先生は、「明らかな病気の症状が出たときが病気のはじまりではなく、体は未病の段階で何らかのサインを出しています。ちょっとした不調は、ある程度我慢もできるため、なかなか今の生活習慣を見直そうと思えない人もいるかもしれません。また『生活を見直しましょう』と言われても、どのように改善すればいいのかわからないという人もいるでしょう。本著でも述べていますが、書かれてあることをすべて実践するのではなく、『これならできそう』と思うことを、まずはできる範囲で取り入れてみてほしいのです。ほんのちょっとの意識、ほんのちょっとの変化、その積み重ねが心や体の健康につながります」と話しています。

未病の改善と健康の先にあるものとは

 ウィズコロナの時代を迎え、心と体の健康への意識は、より高まることでしょう。しかし、渡辺先生はこうも述べています。「未病を改善する、元気になる、健康になるということは実は『ゴール』でも『目的』でもありません。それは『自己実現』のための『ツール』『経路』であり、『武器』であるということです」。
 やりたいことをやるときに、最高のパフォーマンスを発揮すること、そのことが本当のゴールです。心と体を健康に保ち、よりよい心身の状態をつくるために、ぜひ「病院にも薬にも頼らないカラダをつくる『未病』図鑑」を役立ててください。

病院にも薬にも頼らないカラダをつくる『未病』図鑑
著者:渡辺賢治
出版社:ディスカヴァー・トゥエンティワン
https://d21.co.jp/book/detail/978-4-7993-2617-6

参考
  1. 平成26年版厚生労働白書 健康長寿社会の実現に向けて~健康・予防元年~│厚生労働省<2021年1月19日閲覧>

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