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冷え症は治らないとあきらめてしまう前に

公開日:2014.07.29
カテゴリー:症状別得意分野

疾患だけでなく、幅広い症状を誘発する「冷え症」

 今や女性の2人に1人が悩んでいるといわれている「冷え症」。冷えはただ辛いだけでなく、他の疾患の病態を悪化させるという危険もあります。たとえば、関節リウマチは、冷えることで痛みが増強しますし、気管支喘息やアレルギー性鼻炎なども冷えで症状が悪化します。 また、貧血、心臓疾患、甲状腺機能障害、自己免疫性疾患が原因で冷えが現れていることもあります。このような疾患以外にも、腰痛・腹痛・月経痛・頭痛といった痛み、下痢・便秘などの消化機能の異常、疲労感・脱力感などの全身状態、不安感や抑うつなどの精神状態、果てはのぼせ・ほてりといった、冷えとは対極にあるような幅広い症状が現れやすくなります。

冷えと関連する疾患 関節リウマチ、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、過敏性腸症候群、膀胱炎、痔核、月経前緊張症、月経困難症、不妊症
冷えと相関する症状 頭重感、めまい、立ちくらみ、頸肩部のこり、鼻汁、手足のしびれ、多汗・寝汗、ほてり、イライラ感、腰痛、易疲労感、口渇、腹痛、のぼせ、頭痛

「冷え」のタイプを知って適切な治療を

 冷え症は大きく分けると、「新陳代謝低下型」「血流障害型」「水分貯留型」の3つに分けることができます。新陳代謝低下型は、疲れやすく、温かい飲食物を好み、とても寒がりで風邪をひきやすい、といった特徴があります。血流障害型は、指先やかかとが荒れやすく、顔色が悪く便秘気味で、痔核や月経痛があり、肩こりがひどい、などの症状が出やすいタイプです。水分貯留型は、むくみやすく、頭痛、頭重感があり、尿が近く、めまいや耳鳴り、吐き気があるといった症状を伴います。以上3つのタイプを基本に、症例ごとにいろいろな要素が加わって、実際の治療はもっといろいろなことを考慮しながら行います。 たとえば、眠れない、落ち込んでいる、イライラして怒りっぽい、といった精神的ストレスの影響が強いと判断される場合、気剤と呼ばれる種類の漢方薬を処方することもあります。

 冷え症治療は漢方の得意技といえます。ある調査では、西洋医学の医師の約8割以上が漢方薬を使用していることが明らかになっています。「冷え症は治らない」とあきらめてしまう前にぜひ一度、専門医を受診することをおすすめします。

新陳代謝低下型 真武湯(しんぶとう)
人参湯(にんじんとう)
十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)
人参養栄湯(にんじんようえいよう)
八味地黄丸(はちみじおうがん)
牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)
血流障害型 当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)
桃核承気湯(とうかくじょうきとう)
桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
温経湯(うんけいとう)
加味逍遥散(かみしょうようさん)
当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
水分貯留型 苓姜朮甘湯(りょうきょうじゅつかんとう)
防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)
半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)
真武湯(しんぶとう)
当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)

プロフェッショナルの【眼】

たかが冷え症とあなどっていると、実は病気のサインかも…

帯山中央病院理事長/麻布ミューズクリニック名誉院長
渡邉賀子 先生

 ある調査によると女性の半数、男性の約1割が冷えを苦痛に感じており、さらに詳しい聞き取りをすると女性は7、8割まで増加します。自分では気づいていない「かくれ冷え症」が、実は多いんです。疲れやすい、冷房が苦手である、風邪をひきやすい、冬になると便秘になる、眠れない、のぼせる――これらの症状が当てはまったら冷え症かも。
 また、冷えが病気の一症状として出ている場合もあります。甲状腺機能低下症、膠原病、低血圧や貧血。女性に多い疾患なので、ただの冷えだと思って放っておいたら病気のサインだった…なんてことも。
 冷え症はプレ更年期に多いのですが、女性ホルモンを整える意味でも漢方はおすすめですね。冷えは体質+生活習慣によることが多く、なかなか変えられない体質部分に漢方薬がうまく関与して、随伴する他の症状――頭痛やめまい、ひどい便秘、むくみなどが改善されるケースも。「もっと早く来ればもっと早くさよならできたのに!」とよく言われます。体力がない、疲れやすいといった症状なども、漢方で改善できる「未病」のひとつなので、加齢によるものだなんて諦めないで。長い歴史の中で、たくさんの経験を通して発達してきた漢方には、本当にびっくりするぐらい効くものがたくさんあります。また、冷えを改善すると新陳代謝がアップするので、実はお肌の調子が良くなるといううれしい副効果も。「化粧のノリがよくなった」「シミが薄くなった」という効果から実感される方も多いですね。

渡邉賀子 (わたなべ・かこ)先生

■医学博士 ■日本東洋医学会専門医・指導医
久留米大学医学部卒業。熊本大学第三内科に入局、内科を修める。1997年、北里研究所にて日本初の「冷え症外来」を開設。2003年、慶應義塾大学病院漢方クリニックにて、女性専門外来「漢方女性抗加齢外来」を開設。2004年、麻布ミューズクリニックを開院し、2011年より現職。慶應義塾大学医学部漢方医学センター非常勤講師。
麻布ミューズクリニック帯山中央病院

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