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芝大門いまづクリニック 今津嘉宏院長

[外来訪問] 2015/03/25

~漢方薬の新時代診療風景~
 漢方薬は、一般に知られる処方薬(西洋医学)では対処が難しい症状や疾患に対して、西洋医学を補完する使われ方も多く、今後の医療でもますます重要な役割を果たすと考えられます。
 近年、漢方薬の特性については科学的な解明が進んだこともあって、エビデンス重視の治療方針を取る医師の間でも漢方薬が使用されることが増えています。
 漢方薬を正しく理解して正しく使うことで、治療に、患者さんに役立てたい。日々勉強を重ねる、身近な病院の身近なドクターに、漢方活用の様子を直接伺いました。ドクターの人となりも見えてきます。

手塚治虫の「ブラックジャック」に憧れて医学部へ

 子どものころ、手塚治虫が大好きで美術に興味を持ち、高校時代はマンガ研究部と美術部に所属。将来は美術やデザインに関わる仕事がしたいと思っていました。ところが進路決定のとき、母の「手塚治虫は医師免許も持ってるでしょ?」という一言に、素直(単純?)だった自分は「ああ、そうか!」と方向転換。そんな、自分の憧れに近づきたい気持ちから医学部に入りました。実は、父も兄も外科医で、私も外科医への道を目指したのですが、思い返すと「漢方」と出会うための伏線はこの頃から張られていたように思います。
 というのも昔、父の診察室の机の上には、たくさんの漢方の本が並んでいました。医師になって思い返したとき、「あれは漢方の本だったよな」と。もう1つ、大学病院で研修しているときたまたま、術後合併症に漢方を使ったという論文を読んだんです。「すごいな、漢方でよくなるんだ」と思ったら、それは兄の書いた論文で(笑)、兄も漢方を使っているのかと強く印象に残ったのを覚えています。
 その後、外科医として主に消化器がんの患者さんの治療をしていましたが、実際の医療現場では「治せない患者さん」が多くいることを実感しました。当時は腹腔鏡手術を含め、新しい治療法が次々と出てきた時代でしたが、大学病院の最先端の医学を持ってしても治らない人がいる。薬の副作用でつらい思いをする人がいる。そんな状況をなんとかしたいと考えた時に、父や兄が学んでいた漢方を思い出したのです。
 しかし、「葛根湯」の読み方にも悩むような初心者だったので、漢方外来で診療を担当されていた産婦人科の先生に教えを乞い、7年間、漢方医学をみっちり学ばせていただきました。そこで、「病気だけでなくその人全体をみることが必要」ということを教わったのです。もともとは、がんの治療に役立てたいと学び始めた漢方でしたが、さまざまな尺度で体や病気を観察し、治療による体や心の変化を診るなど、漢方以外のこともたくさん、学ばせていただきました。
 その後、2011年の東日本大震災を機に世の中がいろいろな意味で変わり、改めて自分の人生を考え直してみた時に、大学で研究したり、新しいことを発見するより、現場で患者さんと直接かかわる仕事がしたいと考えました。そして、患者さんのそばにいられる町医者を目指し、芝大門いまづクリニックを開業しました。

がん患者さんのQOL(生活の質)をよくしたい

 クリニックは、内科、外科、がん漢方、漢方内科、漢方産婦人科などを標榜していますが、受診される患者さんのうち約半数はがんの方です。がん患者さんには2通りの方がいて、1つは、大学病院やがんセンターなどで治療をしているけど、今の治療法で良いのか迷っていたり、医療者とコミュニケーションがうまくできていないなどの理由で治療に不安を抱いている方。先日も、九州の大学病院で治療をしている患者さんがセカンドオピニオンにいらっしゃいました。また、患者さんのご家族が「このままでいいのか」と不安を抱えて来院されることもあります。そういう場合は現在の治療法についてもう一度詳しく説明し、アドバイスをしたり、主治医に手紙(診療情報提供書)を書いたりもします。
 もう1つは、現在ほかの病院でがん治療をされていて、副作用がつらい、術後の体調が思わしくない、放射線治療の後の皮膚の状態が悪いなど、一般的な治療ではなかなかよくならないことに、漢方的なアプローチで何かできないかというご相談です。
 この場合は、患者さんのつらい症状や体の状態を改善するための治療や、生活の質をよくするためのアドバイスをします。例えば、食欲がないという人なら、それを改善するような漢方薬を処方します。消化管粘膜の炎症性疾患に使う半夏瀉心湯にするか、消化器の機能低下に効く六君子湯にするか、あるいは他の薬にするか、と原因や患者さんの体質などによって選択していきます。また、抗がん剤の副作用がつらいと訴えている方で、よく話を聞いてみたら家族間のコミュニケーションがうまくいっていないことや、仕事が忙しくて治療との両立ができていないことなど、問題として背景に隠れていることがあります。そんな時は副作用だけを診るのではなく、患者さんを取り巻く問題を解決することで症状が改善していきます。ですから、診療のときは、患者さんの話をじっくり聞いて、患者さんをよく見ることが重要です。廊下を歩いてくる足音、診察室に入ってくるときの歩き方、顔色、口調、姿勢など、患者さんの全体を見てそこから判断し、治療やアドバイスを考えます。

病気だけを見るのではなく人を診て治す

 クリニックには、がん患者さん以外にも、怪我やお子さんの風邪、婦人科系の悩みや病気、生活習慣病など、さまざまな患者さんがいらっしゃいますが、「頭のてっぺんから足の先まで」を合言葉に、外からだけではなく体の内側から診ることを心がけています。
 例えば、転んで怪我をした人が来たとき、普通は傷を診て、止血や消毒をして絆創膏を貼る。でも、整形外科の専門医は、「なぜ転んだか」から考え、転ぶ原因として筋力の低下がないか、神経のマヒがないかも考えます。それと同じで、傷だけ、病気だけと「外側」を見るのではなく、口内炎でも下痢でも湿疹でも、それがなぜ起こるのか、体や心の状態はどうかなどを含め、「内側」から見て考えることが大事だと思います。
 治療には、薬だけでなく、患者さんご本人の考えかた、食事や運動、睡眠などを含めた生活のしかたも大切です。クリニックでは専属の栄養士による栄養相談もおこなっていて、運動や生活上のアドバイスをすることも多いですね。
 最近は、よく勉強されている患者さんもいらっしゃいますし、皆さん治療に一生懸命取り組んでいますが、ほんの少しやり方がずれていることに気づかないために、うまくいっていないケースが多々あります。そんなときに、もう一度情報を整理して方向修正したり、ご自分で気づくためのお手伝いをします。病気を治す人というよりは、道先案内人として、膨大な漢方理論や難解な専門用語をうまく「翻訳」して、わかりやすく患者さんにお伝えするのが私の仕事だと思っています。

患者さんと医療にふれる「日常」が楽しい

 外科医として生活していた25年間は、1日の平均睡眠時間は2時間、1年に1日休めたらいいという状態でした。その時と比べると、今はすごく時間があるので、患者さんと向き合うにも、何かに取り組むにも、ゆとりを持ってできるようになりました。言い方はよくないかもしれませんが、日々に変な緊張感がなく、ストレスもありません。
 実家が病院で、いつも患者さんが入院していて、父は外来で診療しているという環境で育ってきたので、私にとっては病院にいる時間が日常生活で、もともと医療は空気みたいなものと感じています。仕事以外に趣味はないというか、仕事をしているときがいちばん楽しいし、落ち着くのです。調べものや論文を読んだりするのも楽しく、最近は、「これ以上に何が必要なの?」という感じで毎日過ごしています。
 クリニックのある芝大門はとてもいいところで、近くに増上寺や芝大神宮など由緒ある場所も多いですし、住んでいる方もこの土地を愛し、誇りをもって生活しています。そんな土地で、地域の方々の元気と健康の一助になれたらと考えています。病気になってからの治療はもちろん、病気になる前にできることはないか、予防医学も含め、私の知識と経験がお役に立てれば幸いです。例えば、クリニックに来たおばあさんが私の話を聞いて、家に帰って実践してくれたら、お子さんとお孫さんの病気を予防できるかもしれない。1人の治療で家族みんなを健康にできますよね。そうやって家族みんなが元気になったら、誰もクリニックに来なくなって私はヒマになってしまいますけど(笑)。でも、それが理想ですね。そのためにも、これからもこの場所で、漢方医学の力で地域に貢献していきたいと考えています。

芝大門いまづクリニック

医院ホームページ:http://imazu.org/

都営大江戸線・浅草線「大門」駅から徒歩5分、都営三田線「御成門」駅から徒歩3分、JR「浜松町」駅より徒歩10分。
院内はバリアフリー設計で、トイレにも車いすで入ることができます。
受付の方の明るくあたたかい笑顔が印象的なクリニックです。詳しくは医院ホームページから。

診療科目

内科、消化器内科、外科、肛門外科、放射線科、がん漢方、漢方内科、漢方産婦人科

今津嘉宏(いまづ・よしひろ)院長略歴
1988年 藤田保健衛生大学医学部卒業、慶應義塾大学医学部外科学教室助手
1989年 国保南多摩病院外科
1990年 国立霞ヶ浦病院外科
1991年 慶應義塾大学医学部外科学教室
2009年 慶應義塾大学医学部漢方医学センター助教、WHO intern
2011年 麻布ミューズクリニック院長、北里大学薬学部非常勤講師
2013年 芝大門いまづクリニック開設、慶應義塾大学薬学部非常勤講師、北里大学薬学部非常勤講師


■所属・資格他

日本胸部外科学会認定医、日本外科学会認定医、日本外科学会専門医、日本消化器内視鏡学会専門医、日本消化器内視鏡学会指導医、日本消化器病学会専門医、日本東洋医学会専門医、日本東洋医学会代議員、日本がん治療認定医機構認定医、日本がん治療認定医機構暫定教育医、日本医師会産業医、他、所属学会多数

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