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首から肩にかけてのこりや痛みに悩む50代女性

[外科医が使って知った漢方薬の魅力「意外と効くもんだ」] 2012/02/21

首から肩にかけてのこりや痛みに悩む50代女性

 「首から肩にかけての痛み」を訴えて56歳の女性が受診してきた。1年以上前から整形外科に通院し、痛み止めや筋弛緩薬(筋肉のコリをほぐす薬)を処方されていたという。レントゲンでは頚椎に軽い変形はあるものの、大きな問題はない。整形外科の医師からは、肩こりの体操や、筋肉をつける運動も指導されてはいたが、十分にはやっていないようであった。以前、更年期障害のときに漢方薬を飲んで有効であったために、今回も漢方薬を試してみたいと思って来院したそうだ。
 この患者さんの「肩こり」を丁寧に診ると、実は「“くびすじ”のこり」であった。そこでエキス剤の葛根湯(かっこんとう) を飲んでもらうことにした。葛根湯と合わせて、エキス剤の桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう) も処方した。この2剤を合わせることで、葛根加朮附湯(かっこんかじゅつぶとう) という別の漢方薬になる。
 葛根湯と桂枝加朮附湯を1日3回(各1日7.5g)お湯に溶かして食前に内服してもらった。1か月すると、「これを飲んでいると肩が軽くなります」と、喜んで再来してきた。効いているのであれば、処方は継続である。また1か月分処方した。ところが次回の診察では「このところ胃のあたりが少し気持ち悪くなる」と言われた。最近は整形外科にかかっていないので、痛み止めなどは飲んでいない。
 葛根湯には生薬の麻黄(まおう)が含まれている。また、桂枝加朮附湯には生薬の附子(ぶし)が含まれている。麻黄も附子も、人によっては「ドキドキ」したり「胃がムカムカ」したりする。薬の効果を高めるために、食前に飲んでもらっているが、そうすると効果も期待できる代わりに副作用も強くなることがある。そこでこの患者さんには、薬を食後に内服するよう指導した。また「食後に飲んでも胃の調子が悪いようなら、お薬を中止して胃の検査を受けてね」と伝えた。
 1か月して再び調子を聞いたところ、「桂枝加朮附湯の内服を中止してみた」と言う。また葛根湯については、「肩が辛いと感じるときだけ飲むようにしている」とのことであった。
 葛根湯は確かに「“くびすじ”のこり」には有効であり、私自分も体験している。この女性に対しても以前、「僕も、首が張って痛くなると、葛根湯をそのときだけ飲むんですよ」と言ったことがあった。それを患者さんは覚えていて、葛根湯を頓用で飲んでいた。葛根湯だけの内服を頓用で行うようになってからは、胃の調子も良くなり、肩も楽な状態でいられると言う。「自分なりの自分に合った飲み方」を、自然と見つけてくれたのであろう。今でも葛根湯単独の内服は続けている。

堀口定昭(ほりぐち さだあき) 愛世会愛誠病院・下肢静脈瘤センター

2002年帝京大学医学部卒業、2008年より愛誠病院にて血管外科医として勤務しながら整形外科と漢方を学ぶ。
血管外科の外来で漢方薬を使うようになってから、本格的に漢方を学ぶようになり、2010年より血管外科と漢方内科を兼務。
日本外科学会専門医、日本脈管学会専門医。
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