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吸入薬で吐いてしまう気管支喘息患者の30代女性

[外科医が使って知った漢方薬の魅力「意外と効くもんだ」] 2012/09/21

吸入薬で吐いてしまう気管支喘息患者の30代女性

 30代女性が気管支喘息のために来院した。東京に引っ越して数年後に気管支喘息と診断されたと言う。風邪をひいたりすると咳が酷くて苦しむ。気管支喘息の発作が起こったときはβ刺激薬の吸入をして発作を押さえているとのことであった。本来、気管支喘息であれば、内服治療のほかにステロイドの吸入薬や長時間作用するβ刺激薬の吸入、もしくはその両者の併用をして発作の予防をすることが多いのだが、この患者さんは吸入薬を使うと吐き気がして吐いてしまうため、発作時以外の吸入はしていなかった。咳と鼻水が出ると言うことでエキス剤の小青竜湯が処方されていたが、これは十分な効果を感じることは出来なかったそうである。
 1週間前に風邪をひいてから咳と痰が続いていると言うので、エキス剤の麻杏甘石湯(まきょうかんせきとう) を1回2.5グラム1日3回毎食前に処方した。また、喉のあたりがつまる感じもあると言うので、エキス剤の柴朴湯(さいぼくとう) も1回2.5グラムを1日3回毎食前処方した。その後、麻杏甘石湯で咳と痰が改善し、柴朴湯を飲んでいると喘息が落ち着いている気がするとのこと。これら2種類の漢方薬は有効であった。
 麻杏甘石湯は一般的に風邪をひいて咳が出て、痰が絡んでいるが上手に出せない人に処方すると感謝されることがしばしばある。もう一つの柴朴湯は、慢性的な病気などに用いる小柴胡湯(しょうさいことう) と、胸のつかえる感じのある人に用いる半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう) が合体した薬である。柴朴湯は気管支喘息の発作予防としてもしばしば用いられる。また、もう一つの選択肢として柴朴湯の代わりに大柴胡湯(だいさいことう) と半夏厚朴湯を合わせる方法もあると師から教わった。小柴胡湯と大柴胡湯の差は、おおざっぱに言えば生薬の大黄が入っているかいないかである。大黄は下剤の代表格なので、便秘のある気管支喘息の方には大柴胡湯と半夏厚朴湯の併用も選択肢の一つだと思う。
 今回の患者さんは柴朴湯で発作の頻度を下げることが出来た。しかし、気管支喘息の治療は、あくまでも吸入薬などの西洋薬が第一選択である。そのことを念頭に置いた上で、今回のようなケースで、漢方をうまく活用して行きたいものである。

堀口定昭(ほりぐち さだあき) 愛世会愛誠病院・下肢静脈瘤センター

2002年帝京大学医学部卒業、2008年より愛誠病院にて血管外科医として勤務しながら整形外科と漢方を学ぶ。
血管外科の外来で漢方薬を使うようになってから、本格的に漢方を学ぶようになり、2010年より血管外科と漢方内科を兼務。
日本外科学会専門医、日本脈管学会専門医。
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