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がん治療中の食欲不振、体重減少、筋肉の減少症状改善に六君子湯が有効

[漢方ニュース] 2016/07/13

がん治療に伴う副作用や後遺症を予防・緩和する支持療法が注目を集める

 現在、日本での死因第1位であるがんに関しては、「がん対策基本法」とそれに基づく「第II期がん対策推進基本計画(2012~2016年)」により医療体制の充実などが進められていますが、さらに2015年6月のがんサミットを受けて、同年12月にはがん対策加速化プランが打ち出されています。

 同プランでは、とりわけがんと一般社会との共生に関する施策推進に関して、昨今のがん治療薬の進歩で、患者さんの寿命が延長しているなか、がん治療に伴う副作用や後遺症を予防・緩和する支持療法の開発の重要性に着目しています。この支持療法の1つとして注目されているのが漢方薬による治療です。漢方薬については、長い経験の中で培われてきた処方が行われていますが、その作用をミクロな面から解明する取り組みも行われています。

 こうしたなか6月に高松市で開催された第68回日本東洋医学会学術集会で国立がん研究センター研究所の上園保仁先生らが、がん悪液質の症状改善に漢方薬・六君子湯(りっくんしとう) が有効であり、その作用が六君子湯に含まれている複数の生薬が相乗的に働いて、体内にある摂食促進ホルモンのグレリンの分泌や活性を促進するためだと解説しました。

生薬・蒼朮の主成分が摂食促進ホルモンの分泌や活性を促進

 がん悪液質とは、がんの進行により食欲不振、体重減少、筋肉の減少などを引き起こす進行性の消耗状態です。この状態になると、日常生活での活動が大幅に低下し、そのことにより心理的にも苦痛を感じるようになります。また、実際の治療でも抗がん剤への反応も悪くなるということが指摘されています。現時点でのがん性悪液質に対する治療はステロイドの内服が行われていますが、副作用も少なくないため、それに代わる治療法が求められているのが現状です。

 六君子湯は「蒼朮(ソウジュツ)」、「茯苓(ブクリョウ)」、「人参(ニンジン)」、「半夏(ハンゲ)」、「陳皮(チンピ)」、「大棗(タイソウ)」、「生姜(ショウキョウ)」、「甘草(カンゾウ)」という8種類の生薬で構成され、従来から胃炎、消化不良、食欲不振などの改善に用いられてきました。

 上園先生は細胞レベルの実験や動物実験から、六君子湯の生薬・蒼朮の主成分であるアトラクチロジンが、グレリンと結合する受容体の活性と感受性を高める作用があると説明。また、陳皮に含まれるフラボノイド類が、抗がん剤により体内で増加し、グレリンの分泌を抑制するセロトニンの受容体の働きを抑制することでグレリン分泌量を増加させると紹介しました。

 一方、グレリンは体内でアシルグレリンという活性化体として作用し、時間の経過とともにグレリン脱アシル化酵素という酵素でデスアシルグレリンという不活性化体に変化し、その効果が消失します。これに関連して上園先生は、六君子湯に含まれる生姜のジンゲロールという成分が、グレリン脱アシル化酵素を抑制し、結果としてアシルグレリンの効果が長続きするとの働きがあることもわかったと解説しました。

 がんの支持療法では、補剤と呼ばれる漢方薬の1つで、10種類の生薬から成る補中益気湯(ほちゅうえっきとう)がよく用いられていますが、補中益気湯と六君子湯は含まれる生薬のうち6種類が同じものです。ところが同様の実験を行っても補中益気湯ではグレリン受容体の活性や感受性は認められなかったと上園先生は説明しました。

 そのうえで上園先生は、今後、六君子湯と似た生薬構成を持つ他の漢方薬でも同様の実験を行っていく予定で、「グレリンに対する作用に関しては、生薬の組み合わせが重要だという方向になると予想している」との見通しを語りました。

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