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適応障害を原因に様々な症状が現れた38歳女性

[精神科医が使って知った漢方薬の魅力「意外と効くもんだ」] 2012/06/12

適応障害を原因に様々な症状が現れた38歳女性

 38歳適応障害の女性。頭痛・眩暈・呂律不良が職場で頻回に出現し、脳神経外科を受診。しかし特に異常は見られず精神的なものと診断され、私が勤務するメンタルクリニックを初診。次第に肩こり・立ちくらみも顕著となり、本人曰く「仕事で頑張りすぎた」とのことであった。当初の担当医からは、不眠に対してデパス、頭痛に対して鎮痛剤が処方され、また、休職したことで、若干楽になったという。
 休職後より、頻用していた鎮痛剤を少しでも減量出来るようにと、当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう) が処方された。頭痛は軽減したものの、食欲が落ちて便秘傾向となったため、当帰四逆加呉茱萸生姜湯を中止しメイラックスに変更。またレンドルミンやアモバンが開始され、2年程度、経過観察となっていた。
 初診から2年後の10月、過食・拒食・下痢・嘔吐・腹痛・呼吸困難が見られるようになり、メイラックスからワイパックスに変更。翌年の7月より腹部症状に対し、セレキノンが追加投与されるも、殆ど改善が見られず、8月より、私が担当となった。
 セレキノンでは改善が見られないので、桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう) に変更。2週間で「この漢方は良い。セレキノンより下痢の回数が減った。外出も怖くなくなった」と笑顔が見られた。しばらく継続していたが、本人も次第に細かく症状を語ってくれるようになり、「下痢・吐き気・痛み・冷え・低体温」などをターゲットに、11月より人参湯(にんじんとう) に変更してみた。2週間後に、「これは凄い。下痢が軽い、痛みが減った」と桂枝加芍薬湯より効果を実感出来たようで、翌月には「だるさが全く違う。特に朝分かる。眠れるし、スッキリ起きられる。仕事もそろそろ出来そう」と、初診から3年後の12月、長い休職期間にピリオドをうった。「良いタイミングで漢方に巡り合えて本当に良かった」と、現在は人参湯と屯用のワイパックスを処方するのみとなった。
 漢方薬の効果を実感出来ると、何だか嬉しくなる。それも数年来の症状が、漢方開始後、数週間で改善がみられたなんて素晴らしいと思う。桂枝加芍薬湯でも下痢が減り、そのおかげで外出への恐怖が減ったため、ある程度の効果は見られた。しかしその後の人参湯で、意欲が出て動けるようになり、不眠も解消。就職面接もこなせるほど元気になれた。“自分に合う漢方”とは、前回書いたように「一つの箇所だけを治してくれるのでなく、森全体を改善してくれるもの」と実感出来た症例である。
 漢方は患者さんが長期にわたってしっかりと内服してくれる。加えて、漢方を勉強して処方してみると数週間で効果が出てくれるものもきちんとあり、患者さんに「早くに効き目が出ることもあります」と言えるようになった。きちんと合う漢方薬が見つかるまで、患者さんと相談しながら試す、それでも見つからなければ自分の力量不足なのだから、他の医者へお願いする、というスタンスになった。私が漢方を教えていただいている新見先生も、「治らない患者に対し『今の医学では治らない』というのではなく、『私が治せない』ということを医者が言わなければ、患者さんの苦しい時間が増えるだけ」と言っている。本当にそう思う。勿論、そういうことを言わないよう、私自身も精進する必要があるが、もし難しければ他医に渡す勇気も必要だと思う。
 この話に関連して、精神科をしていていつも思うのは、他科から紹介される多くの患者は、「特に今辛いこともないのに、何故精神科に来なければいけないのでしょう」と首をかしげながら受診するケースが多いように見受けられる。これまでは、「また精神的なものと言われてしまった患者さんか・・。どうやって治そう・・」と気が重くなり、対症療法で抗不安薬を出すしか手立てがなかった。不安を取り、少しリラックスはさせるが、実際は、気持ちと感覚を鈍らせてぼーっとさせているだけなので、「だるいし眠い・・・でも治りません」ということが多かった。それが今では、漢方薬という武器が出来て、精神科の薬を使わずに対応できることも増えてきて、眠くもならずに症状を緩和できるようになった。喜ばしい限りである。色々な医師が漢方アレルギーを持たずに少しでも患者の苦しみに寄り添って治そうという気持ちを持って漢方薬を処方してくれたら、嫌々精神科を受診する患者が減っていくのになぁとも思う。
 漢方薬がもっともっと広がっていってほしいと切に願う次第である。

小松桜(こまつ さくら) 愛世会愛誠病院・漢方外来

2000年順天堂大学卒業。順天堂医院メンタルクリニック科で2009年まで勤務。
不定愁訴や過量服薬、副作用出現の患者さんに対し、向精神薬のみでの対応では加療困難なケースもあり、漢方に興味を持った。
現在の施設で本格的に学ぶようになり、2010年より漢方外来勤務。精神科専門医。
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