六君子湯(りっくんしとう)

[外来でよく使われる漢方薬] 2021/03/30
監修:井齋偉矢先生(日高徳洲会病院院長/サイエンス漢方処方研究会理事長)

構成生薬

  • 蒼朮(そうじゅつ)
  • 人参(にんじん)
  • 半夏(はんげ)
  • 茯苓(ぶくりょう)
  • 大棗(たいそう)
  • 陳皮(ちんぴ)
  • 甘草(かんぞう)
  • 生姜(しょうきょう)

作用の特徴

胃の機能の異常を、正常に戻す働きを引き出す。なお、漫然と服用しないように注意する

対象となる症状

  • 食欲不振
  • 胃アトニー
  • 胃下垂
  • 胃痛

解説

 六君子湯(りっくんしとう) は、漢方薬の代表的な胃薬のひとつです。胃粘膜を保護する作用や、胃の内容物の排出を促進させる作用、抗ストレス作用など、ひとつで多くの作用を持ちます。
 通常、胃の中へ食べ物が入ると、胃の上部(胃底部)が弛緩し拡張して1回分の食べ物をすべて受け入れます。しかし、この機能が低下すると、うまく食べ物が受け入れられずすぐ満腹になってしまったり、胃もたれを起こしたりすることがあります。六君子湯は、これらの機能を回復させ、正常な胃の働きに導く作用を持っています。
 また、六君子湯は、空腹時に胃の中で分泌される「グレリン」という食欲を増進させるペプチドを増やし、消化管の運動を促進させる効果があることもわかっています。そのため、近年は抗がん剤を使用した際の副作用として起こる食欲不振や嘔吐などに対しても用いられます。
 なお、長期間服用するのではなく、さしあたり1週間程度服用して、胃の機能が正常化したら服用を中止します。

エビデンス情報

健常人における血漿グレリン濃度増加作用

 健康成人21例を対象に六君子湯を1日7.5g、2週間投与したところ、投与開始後から2週後ならびに6週後の血漿アシルグレリン濃度が増加したという報告があります1)

胃の運動機能低下による上腹部の不快な症状

 胃の運動機能低下による上腹部の不快な症状がある患者296例を対象に、プラセボとしてごく低用量の六君子湯を投与した群を対照とした二重盲検比較試験を行ったところ、六君子湯2.5gを1日3回、食前または食間に2週間服用した群で有意に高い改善率を示しました。特に、ほかの消化管運動改善薬で効果が低かった例においても、約半数で効果が得られました2)

S-1+シスプラチン化学療法に伴う食欲不振に対する作用

 切除不能または再発胃がん患者10例を対象に、六君子湯の食欲不振に対する効果を無作為クロスオーバー群間試験で評価しました。A群では化学療法の1サイクル目は六君子湯を1日3回、2.5gを服用、2サイクル目は六君子湯の服用なし、B群では逆順で同様に服用し比較したところ、六君子湯を服用している期間の平均食事量は服用していない期間と比較し有意に多かったという結果になりました。また、食欲不振のグレードについても、六君子湯の投与期間の方が非投与期間に比べ有意に低いという結果になりました3)

参考

  • 1) Matsumura T, et al. J Gastroenterol 2010; 45(3): 300-307
  • 2) 原澤茂ほか. 医学のあゆみ 1998; 187(3): 207-229
  • 3) Ohno T, et al. Clin Exp Gastroenterol 2011; 4: 291-296
記事下_漢方処方を相談できる病院検索
記事の見出し、記事内容、およびリンク先の記事内容は株式会社QLifeの法人としての意見・見解を示すものではありません。掲載されている記事や写真などの無断転載を禁じます。

外部サイトへ移動します。

リンク先のウェブサイトは株式会社QLifeが運営するものではないこと、医療関係者専用であることをご了承ください。